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会計参与とは?会計監査人との違いや選任のメリットをわかりやすく解説!

会計参与とは?会計監査人との違いや選任のメリットをわかりやすく解説!

会社役員のひとつには「会計参与」という役職があります。これまで会計参与について知らずに経営をしてきた方、もしくは会計参与が何をしてくれるのかよく理解しておらず選任をしてこなかった方などは一度ここで会計参与について情報整理してみましょう。またこれから会社を立ち上げようと考える方にも関係のある話です。ここでは会計参与の職務内容や選任のメリット、そして会計監査人との違いについても解説していきます。

会計参与とは?

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会社法における役員とは「取締役」「監査役」、そして「会計参与」のことを指します。起業をしてこれから会社経営をしていくという方はこのうちの取締役に就任することになるでしょう。取締役とはまさに経営者のことであり会社の意思決定機関として機能します。一方監査役はそのような取締役が悪さをしないように見張る役割を持つ機関です。悪さというのは例えば会社の財産を取締役個人が奪うようなケースです。取締役は社内での権限が大きいため会社財産を横流しにするのもそれほど難しくありません。1人で立ち上げ、自分1人が株主となれば株主との関係では問題となりませんが、基本的に株式会社は株主のものであり取締役は会社から委任を受けて経営を行うという立場です。会社の財産は自分個人の財産とは別物として考えなくてはなりません。規模が大きくなってくるとこのように監査役を選任して見張り役を付けることがあるのです。

取締役は株式会社にとって唯一絶対に必要な機関です。つまり役員の一種であるといっても監査役や会計参与が存在しない会社は多くあります。ただし監査役については取締役会を置くなど、取締役の権限がさらに大きくなってくるような会社では必ず置かなければならないというルールが定められています。

取締役・監査役に並んで役員とされるのが会計参与です。ただし会計参与はこのどちらとも性質が異なります。やや監査役に近い側面も持っていますが具体的な職務や会社に具備する際のルールなどには大きな違いがあります。

会計参与の仕事

会計参与の一番の仕事は計算書類を作成することです。企業活動において様々なお金の流れが生じますが、その記録を帳簿に残し、決算などを行います。 法律上、会計参与の職務は「取締役と共同して計算書類を作成すること」と定められていますが、実務においては日常的に計算書類や附属明細書の作成を行っている経理担当などと連携して作成していくようになるでしょう。経理部が作成した計算書類等をチェックする役割を担うだけでなく、定時株主総会への参加をすることもあります。この株主総会に参加するのは、作成した計算書類等を株主に見せるためであり、事業年度の終了のときにおいて会社の状況を提示・説明することになります。ちなみに計算書類とは貸借対照表や損益計算書などのことであり、その他法務省令で定める会社の財産および損益状態を示すために必要な書類も含まれています。会社にとって重要な書類となるため、監査役や会計監査人を選任している場合には彼らが行う監査の対象にもなります。

会計参与の最も重要な職務は計算書類を作成することですが、これに付随して計算書類の保管義務が発生します。計算書類や附属明細書、会計参与報告は備え置かなければならず、その場所についても明確に定めておかなければなりません。そして株主および債権者から請求を受ければいつでも計算書類等の閲覧謄写等に応えなければならないのです。これは会計参与設置会社としての義務です。営業時間内には限られますが、その時間内だといつでもこの請求に応えなければなりません。

株主や債権者が計算書類について閲覧の請求ができるよう、保管場所については登記しなければなりません。登記をすることで誰でもその保管場所がどこなのか知ることができるようになります。 そして計算書類等の備え置く場所というのはどこでも良いわけではありません。ルールとしては、まず会社の本支店の所在地であってはならないということ、そして公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人の事務所であるということが定められています。

このことから分かるように、会計参与には税理士などの有資格者だけがなることができます。法人格が公認会計士、もしくは税理士の資格を取得することはできませんが、監査法人や税理士法人を構成している者は公認会計士・税理士であるため、実質これらの有資格者だけが会計参与になれるということになります。わざわざ会計参与として選任するほどですので高い専門性を持ったプロにだけ認められているのです。ただし公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人であれば無条件に会計参与になれるわけでもなく、いくつかの要件を満たす必要があります。会計参与の選任を考えているのであれば、選任ができないケースについても把握しておきましょう。選任できないケースの1つ目はすでに取締役となっている場合です。選任しようとする会社の取締役は税理士等の資格を持っていたとしても会計参与になることは許されません。これは後述する会計参与の職務が関係しているためです。また、選任しようとしている会社の子会社で取締役をしている者についても認められません。もっと言えば、会社の監査役や執行役、支配人やその他使用人(従業員)もなることはできません。

選任できない2つ目のケースは、資格を持っているものの業務停止処分を受けている場合などです。ただしその停止期間を経過していれば問題ありません。

会計参与は経営者の不正を見張る役割も

ここまでで、会計参与の仕事として計算書類の作成とその保管をしなければならないことを説明してきました。会計参与は取締役と共同して計算書類を作成する、などと定められているように基本的には内部の人間として活動します。しかし監査役のように、一部取締役の職務執行について不正がないかチェックする機能も持ちます。そして不正行為を発見した場合には株主に報告しなければなりません。ただし監査役設置会社や監査役会設置会社であればそれぞれ監査役、監査役会に報告することになります。監査役会とは、取締役が集まって構成される取締役会と同様、複数の監査役で構成される監査機関のことです。 各種委員会を設置する会社は指名委員会等設置会社と呼ばれ監査委員会が報告先となりますが、この場合には取締役の不正行為だけでなく、執行役という業務執行を行う役職の行為についても報告を行うことになります。

取締役会が設けられている場合でも、取締役と取締役会は身内であるためこちらに報告を行うわけではありません。そのため役員ではありますが取締役会を招集する権限は与えられていません。報告も株主に行い、取締役会を特に招集する必要がないからです。この点、同じ役員でありながら監査役には招集権限があることと相違します。このように会計参与は取締役会との接点が薄いですが、取締役会において計算書類等の承認を行う場合のみ会計参与に出席義務が生じるとされています。そこで招集をかける権限を与えられている者は、その場合会計参与にも通知を出すこととなります。

会計参与を選任するメリット

会計参与の制度は比較的新しく、2006年に法律が施行されるまでは存在していませんでした。そのため会計参与の役割や効果が周知されていないということもあり就任率も高いわけではありません。下の図を見てみましょう。これは会計参与制度の導入状況を表したものです。

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出典:中小企業庁

このアンケートによれば、既に導入している割合はアンケートに回答した会社のうち3.5%であることが分かっています。ただし今後導入予定の会社もいること、そして周囲の状況を見て導入をする可能性を持っている会社も一定数存在しています。また着目したいのは会計参与制度について知らなかったという割合が3割近くも存在しているということです。そこで、導入を検討中、もしくは知らないという方のためにも導入することのメリットを把握することが重要だと思われます。以下で会計参与選任による具体的なメリットについて説明していきます。

会計参与のメリット①正確に計算書類が作成できる

会計参与のメインとなる職務は計算書類の作成です。やはり企業活動に伴って生じる複雑な計算や書類の作成業務は専門家がいることで効率的に進められるようになります。そして正確性も向上することでしょう。

会計参与のメリット②信用性を上げる

正確な計算書類が作成できることは、決算書の信頼性が高くなることを意味します。他の会社との取引においても自社の信用性は非常に重要です。企業活動の幅を広げ、契約を取りやすくすることなどの効果も期待できるでしょう。

会計参与のメリット③融資を受けやすくする

さらに対外的な信用が高まれば融資の受けやすさにも効いてきます。金融機関から融資を受けるためには信頼できる財務諸表の提出が大前提です。専門性が高く、そして会計参与という立場の者が作成したという事実は有利にはたらくでしょう。とても高い信頼を得られた場合など、状況によっては金利を優遇してくれるなどの好条件を提示してくれる可能性があります。つまり会計参与の選任で融資のハードルが下がる可能性があるのです。こうしたメリットが得ることで事業を拡大するきっかけにもなるでしょう。

会計参与選任の注意点

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会計参与を選任するには、まず信頼できる税理士等に依頼をすることから始めます。その相手方とは任期や報酬について話し合い、承諾を得られれば契約書を交わします。そして登記等の手続きを済ませて実際に業務に携わってもらう、というのが基本的な流れです。ただしいくつか注意点があります。

会計参与を選ぶポイント①任期

一度選任をすれば解任するまでいつまでも会計参与として継続されるわけではありません。任期は法定されているため、これに従って一定期間ののち終了となります。基本的には取締役の任期と同様に考え、2年が任期となります。 厳密には「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまで」とされています。 自分が担当した年度に関する株主総会までは責任を持たす、という意味合いが含まれています。ただし会社のルールを定めた「定款」や、株主総会で株主の意見を取り入れることでその期間を短縮をすることは許されます。一方で任期を伸長する場合には非公開会社(株式の全部につき譲渡制限を設けている会社)でなければならないという条件が課されています。非公開会社であれば最大10年まで伸長が認められます。また、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社であれば原則1年の任期とされている点にも注意しましょう。

会計参与を選任するということは「会計参与設置会社」になるということにもなり、定款の規定にそのことを記載しなければなりません。逆に、その旨の規定を定款から廃止すればそのことによっても任期が満了したという扱いになります。そのため、定款を変更した場合だと株主総会を待つことなく会計参与の職務は終結することとなります。

会計参与を選ぶポイント②報酬

税理士等に仕事を委任するため、会社からは対価として報酬を支払わなければなりません。報酬額については当然相手方の同意も必要ですが、内部の意思決定においても、代表者など一部の取締役が勝手に決めていいことではありません。会社財産にとってはリスクにもなる決定事項ですので慎重に決めるべきなのです。任期については取締役と同じ規定が準用されていましたが、報酬については監査役とほぼ同じになっています。つまり、原則は定款または株主総会でこれを定めるとされています。どちらにしても株主の意見を取り入れることになります。

会計参与と会計監査人との違い

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会社法上の役員ではありませんが「会計監査人」を選任することもできます。会計参与との違いが分からず混乱されている場合もありますので簡単に両者を比較しながらその特徴を見ていきましょう。

まず、どちらも会計に関する専門家であることは共通していますが、会計監査人になるには公認会計士もしくは監査法人でなければなりません。さらに会計参与は計算書類等を作成する内部的な立場でしたが、会計監査人は外部から計算書類等の監査を行う立場にある点も異なります。そのため会計参与よりもさらに監査役に近い性質を持ち、取締役の不正行為を発見した場合には監査役等に報告することとされています。監査役とは性質が近いだけでなくこのように職務を連携して行うこともあり、監査役から求められれば計算書類等に関する監査の報告をしなければならないとの規定も設けられています。

まとめ

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会計参与について紹介してきました。会計参与の主な仕事は会社の計算書類等について作成を行うことであり、選任することのメリットは信用力を得られるということにあります。計算書類等について監査を行う会計監査人とは完全にその職務内容が異なります。会社の信用を高め、取引や融資を受けやすくするためにも会計参与の選任を考えてみてはいかがでしょうか。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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