定款を作成していくときに、会社法について知っておかないと失敗します。せっかく時間をかけて定款を作っても、認証の際にやり直しになる可能性があります。スムーズに認証される定款を作るには、ある程度会社法や会社設立についての知識が必要です。
初めて定款を作る人が失敗しないために必要な情報をまとめてみました。簡単に定款を作る方法や覚えておいた方が良い注意点を説明します。電子定款や定款自動作成システムについても解説していきます。
自分の会社のパターンを決めて定款作成する方法
簡単で失敗しない定款の作り方は、公証役場が用意しているひな形を使って用意していく方法です。ひな形の中に自分の会社の商号やそのほかの情報を記入していくと完成させられます。このひな形には三つの種類があります。
- 小規模会社(取締役1名、監査役・会計参与非設置)
- 小規模会社(取締役1名以上、取締役会非設置、監査役非設置会社)
- 中規模会社(取締役3名以上、取締役会設置会社、監査役設置会社)
これから設立する会社がどのパターンに属するかどうかを検討する際に、自社を公開会社にするか非公開会社にするかを決めてください。株式に譲渡権限があるかどうかで、公開会社か非公開会社か決められます。
最初のうちは株式の譲渡に限度を付けておいた方が良いでしょう。非公開会社にしておかないと、いつの間にか会社の株式が知らない人に譲渡されていて、会社が他人のものになっていたということが起きかねません。
取締役を何人にするかも決めておく必要があります。もし取締役が3名以上なら中規模会社となります。それ以下なら小規模会社として設立できます。社員がいないなら自分が取締役になりますし、3人で共同で経営していくなら中規模会社として登録しなければなりません。
取締役会を設けたい場合、3人以上の取締役が必要となります。なぜ取締役会が必要になるケースがあるのでしょうか。
取締役会を設けない株式会社は、意思決定の際に株主総会を開かなければならないからです。会社に取締役会があるなら、自分たちだけで色々な決定をしていけます。取締役会を設けるときには監査役を任命しておいてください。監査役は取締役会のない会社には必要ありませんが、任命しておくことも出来ます。
これらの点を考えて、上記のどのパターンに当てはまるか検討し、定款のひな形を公証役場で手に入れてください。
取締役会非設置会社の定款の作り方とは?
具体的な定款の作り方について説明していきます。まずは取締役会非設置会社の定款の作り方です。定款のタイトルとして社名を書きますが、その際に株式会社を略号で表さないようにしてください。
日付は定款の作成日を入れます。定款認証の日付と会社設立の日付は、法務局での手続きが完了したときに記入します。
事業目的を書く際には、前各号に附帯または関連する一切の業務、というフレーズを最後に入れてください。 このフレーズがあることによって、将来記入した事業に関連する新しい事業を始めやすくなります。何らかの関連性があれば新しい事業を始めるために、わざわざ定款を修正しなくても良くなるのです。
本社の所在地の丁目は漢数字で書きますが、丁目以降は数字で書いてください。もしくは、東京都千代田区大手町といったように、細かな住所を入れなくても良いです。ざっくりとした住所にしておくことで、本社を近所へ移動したとしても定款を変更しなくて良くなります。
公告の項目には官報で決算報告をするか、電子公告にするかを書き入れます。もし電子公告を選ぶなら、前もって自分の会社の公式ホームページを作っておきましょう。ひな形を受け取る段階で取締役の人数を決めているはずです。書き方にはいくつかの方法があります。
- 1名以上
- 1名以上3名以下
- 3名以下
取締役会設置会社の定款の作り方解説
続いて取締役会設置会社の定款の作り方を解説します。取締役会を設置する会社は、株主総会以外の機関についての項目を記入していかなければなりません。
株主総会以外の機関の項目の作成方法
株主総会以外の機関に書くべき情報は、取締役会の人数です。この人数は3人以上でなければなりません。
続いて監査役の人数も決めておく必要があります。2名と決めてしまうと、1人がやめた後にすぐにもう1人を探さなくてはなりません。この人数は1名以上としておいた方が無難です。
取締役と監査役の任期についても明記しておきましょう。原則的に取締役の任期は2年で、監査役の任期は4年です。ただし、株式譲渡を制限している会社であれば、取締役と監査役の任期は最大10年まで延長できます。
代表取締役の名前と住所も書いておいてください。普通は1名ですが、共同経営者などがいるときには複数となります。
定款の作成時に気をつけるべき注意点
定款を作るときに気をつけるべき注意点をまとめてみました。
資本金で注意すべきこと
資本金は1円から書き込めますが、社員のパソコン購入費や事務所の賃貸料が必要となります。1円と書かずに、ある程度の金額を書くようにしてください。数百万円から1千万円ほどの金額が妥当です。
このときに資本金1千万円以上を書くと、消費税が課税されてしまいます。本来であれば会社設立から2年は消費税が免除されるのですが、資本金が1千万円以上になるとこの免除が適用されません。
国から創業融資を得たいと考えている人は、資本金の額を低く書き過ぎると損をしてしまいます。なぜなら創業融資の限度額は、資本金額を基に計算されるためです。金額が低いほど融資限度額も低くなってしまいます。
商号で気をつけるべきポイント
商号を書く際に、株式会社を略称では書かないようにしましょう。定款タイトルのところでも略してはいけませんが、定款の本文でも同じです。選んだ事業目的によっては、社名の中に入れなければいけない単語があります。
金融関係の業者なら、銀行や信託と入れる必要があります。保険を扱う業者なら保険という単語を入れなければなりません。
定款はPDFでは作れないのか?
定款の作成はPDFでも良いと認められています。PDFで作るものは電子定款と呼ばれます。 作成した電子定款はデータで法務局へ提出することが可能です。
電子定款作成に必要なものとは?
電子定款を作るときに必要なのは下記の三つです。
- マイナンバーカード
- 電子証明書
- ICカードリーダライタ
最後に必要なのが、マイナンバーカードをスキャンするICカードリーダライタです。ICカードリーダライタには色々な種類がありますが、マイナンバーカードの読み取りに対応している機種を選んでください。
電子定款の作り方
必要なものが揃ったら、早速電子定款を作っていきましょう。基本的な作り方はこれまで解説してきた紙の定款と同じです。会社についての基本情報や取締役会の情報などを記載していきます。
定款の記入が終わったら、電子署名を入れなければなりません。PDF文書に電子署名が入れられるソフトを使ってください。無料のソフトがあるので気軽にダウンロードできます。
法務省ウェブページで、電子署名の詳しい情報を得られます。電子定款は紙の定款と違って収入印紙代がかからないため、低コストで手続きが出来ます。
定款自動作成システムって本当に便利なの?
定款自動作成システムを提供しているサービスがあります。自分で定款を上手に作る自信が無いときには頼もしいソフトです。一般的な定款自動作成システムは、株式会社と合同会社の二つの定款のフォーマットがあります。そこに会社名や事業目的、本店所在地などを入力していきます。
事業年度や会社設立時の株式の情報を書き入れます。株式の発行株数がどれくらいなのか、1株あたりの価格設定はどうするのかを決めます。資本金の額もきちんと書き込めるようになっています。設立時の代表取締役や取締役の名前を書く欄もあります。発起人の名前や住所、株式数や出資金額を書く欄もあります。
それぞれの欄に書き入れていくだけで、簡単に定款の作成ができてしまいます。合同会社の定款のフォーマットもあるので便利です。定款作成後に専門家がチェックしてくれるサービスもあります。
まとめ
定款の作り方を少しでも間違ってしまうと認証されません。もう一度作り直しとなり、手間と時間がかかってしまいます。一回で成功させるためにも、これらの情報を活用してください。ひな形が公証役場に用意されているため、自社の会社パターンを考えて該当する定款を受け取ることが出来ます。定款自動作成システムを使うことも出来るでしょう。
取締役会非設置会社の定款を作成するときには、事業目的や住所の書き方に気をつけてください。一旦作成したら修正をする必要が無いような表現を使っていくことが大切です。
取締役会設置会社の定款は、株主総会以外の機関の項目に気をつけてください。 一回定款を作った後は専門家や法務局の担当者にチェックしてもらいましょう。