税金・税務

営業外損益の求め方とは?損益計算書における営業外損益の読み方!

営業外損益の求め方とは?損益計算書における営業外損益の読み方!

損益計算書の中には、段階的に5つの利益がでてきます。売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、そして当期純利益です。3番目に「経常利益」があり、この経常利益を求めるために営業利益に営業外損益を加減して計算します。

経常とは一般に、「いつもと変わらない」という意味ですが、いつもと変わらない利益を求めるにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、営業外損益の意義とその基本的な求め方について解説します。

営業外損益とは?その意義とは?

営業外損益の求め方とは?損益計算書における営業外損益の読み方!の画像1

営業外損益とは、企業の主たる営業活動以外の活動によって得られる収益と費用のことです。

企業会計原則とは、わが国の企業会計の指針として先導的役割を果たしてきたルールであり、法律ではありませんが企業が会計処理をする際の基礎と言えます。この企業会計原則では損益計算書を営業損益、経常損益、純損益の3つの区分に分けることとされています。

図:損益計算書のしくみ

区 分 計算方法 求める利益
営業損益 営業収益及び費用 営業利益
経常損益 営業利益+営業外損益 経常利益
純損益 経常利益+特別損益 (税引前)当期純利益

損益計算書では、順に営業利益、経常利益、当期純利益と利益を求めていきます。

経常損益とは、営業利益に営業外損益を加え、経常利益を求めることを意味しています。このように、損益計算書を3つの区分に分けるには、収益や費用が3セット必要となりますが、そのうち経常損益を計算するために営業外収益と営業外費用、すなわち営業外損益は存在しているといえます。

営業外損益は企業の主たる営業活動以外から生じるものですが、では、主たる営業活動とはなんでしょうか?営業損益と営業外損益の違い、営業外損益と特別損益の違いをそれぞれ見ていきましょう。

営業外損益と営業損益の違いとは?

営業外損益の求め方とは?損益計算書における営業外損益の読み方!の画像2

営業外損益と営業損益の違いとは、その損益の取引の発生源が主たる事業活動かそうでないかということです。そして、主たる事業活動かどうかはその会社の定款に示されている事業目的かどうかということです。

会社を運営するための基本的な規則である定款には、絶対的記載事項というものがあります。絶対的記載事項とは、それを記載しなければ定款そのものが無効となる事項であり、その絶対的記載事項の1つが会社の事業目的なのです。基本的には、会社は定款に定める事業目的の範囲で営業することができます。したがって、定款に定める事業目的は、会社は主にどのような事業をして収益を得るのか対外的に明らかにするものと言えます。

会社は、決算期ごとに株主に対して事業報告を行いますが、その中で主たる事業の内容として報告されるのは営業損益に係るものです。営業損益とは具体的には主たる事業からの売上高と売上高に直接的、間接的に結びつく原価のことです。そして営業外損益とは、売上高には直結しないが、経常的に発生する主に金融に関連する収益と費用(受取利息、受取配当金、支払利息、社債利息、為替差損など)です。 そこで、例えば損益計算書において営業外費用を営業損益の中に入れてしまうと、株主への報告に主たる事業とそれ以外が混じって、正しい報告がなされない結果となってしまいます。

よって、正しい損益計算書であるためには、まず、営業損益と営業外損益は分ける必要があります。

営業外損益と特別損益との違い

次に、営業外損益と特別損益との違いですが、経常的に発生する収益や費用であるかどうかで区別します。経常的かどうかは「当期のみの収益、費用か否か」ということになります。すなわち、当期のみの取引は営業損益ではなく、特別損益になります。

損益計算書をはじめとする財務報告の情報は、将来の予測に役立つものでなければなりません。株主だけでなく、ステイクホルダーと呼ばれる株主をはじめとする顧客、従業員、取引先などに開示する財務情報を翌期の見通しに役立たせるためには、当期だけの一過性の利益や損失は必要ないからです。

例えば、特別利益の項目には、「保険差益」や「固定資産売却益」など、また、特別損失の項目には「固定資産売却損」や「投資有価証券売却損」、「災害損失」などがあります。これらは当期の損益全体を見るのには必要な情報であっても、翌期の予想には直接関係ないと言えます。

したがって、適正な損益計算書として翌期の予想を可能とするために、営業外損益と特別利益も明確に区別すべきなのです。

営業外損益の求め方

営業外損益の求め方とは?損益計算書における営業外損益の読み方!の画像3

営業外損益とは、営業外収益と営業外費用をまとめたものですが、損益計算書では、先に営業外収益、続けて営業外費用、その直後に経常利益を表示します。

営業外損益について、営業外収益と営業外費用に分けて具体的に見ていきましょう。

営業外収益の求め方

営業外収益とは、企業の主たる事業活動以外の活動によって得られる収益で、経常的に発生するものを指します。営業外収益の例としては、受取利息や不動産賃貸料収入があげられます。

具体的には、「主たる事業活動以外」かつ「経常的」な収益でその会計期間に属する収益が営業外収益となります。したがって、営業外収益には次のようなものが挙げられます。

  • 預貯金や貸付金、保有社債に係る受取利息、有価証券利息
  • 保有有価証券の配当金などとしての受取配当金
  • 保有不動産などに係る賃貸収入ほか

具体的な営業外収益の求め方として、決算において受取利息の仕訳例を見てみましょう。 例1)定期預金(半年満期、年利率0.1%)800万円を10月1日に銀行に預け入れ、決算をむかえた。会社の決算は1月から12月までである。 例2)翌期3月1日に満期を迎えた定期預金の受取利息は、源泉所得税(20%)が控除されて、普通預金に入金された。

例1計算)【決算仕訳】受取利息は「預金額×利率×期間」で求めます。この場合は決算時にまだ満期を迎えていないため、受取利息は認識しますが相手勘定は未収利息となります。

借 方 貸 方 摘 要
未収利息 2000円 受取利息 2000円 800万円×0.1%×3/12

例2計算)【翌期仕訳】手取額は税金が引かれていますが、利息は満額で計上します。

借 方 貸 方 摘 要
普通預金 3200円 未収利息 2000円 800万円×0.1%×6/12
法人税等 800円 受取利息 2000円 (税金)4000円×20%

金融関連の取引が多い営業外損益を求める際には、「主たる事業活動以外」、「経常的」、「会計期間」を常に意識しましょう。

営業外費用の求め方

営業外費用とは、企業の主たる事業活動以外の活動によって得られる費用で、経常的に発生するものを指します。一般に営業外費用は、営業外収益より表示される項目が多く、支払利息や社債利息、繰延資産の償却、寄付金や雑損失などの計上例があります。営業外費用の項目には、売上を上げるために貢献しない費用である「損失」も含まれます。

営業外費用は、具体的には「主たる事業活動以外」かつ「経常的」な収益でその会計期間に属する費用のことです。したがって、営業外費用には次のようなものが挙げられます。

  • 金融機関への支払利息や、発行した社債に関する利息
  • 創立費や開業費など資産計上した繰延資産の償却費
  • 事業とは無関係な支出として寄付金(一般管理費とすることもある)
  • 為替相場の変動により発生した為替差損  その他多数あります。

具体的な営業外費用の求め方として、決算における為替差損の仕訳例を見てみましょう。 例1) 自社発行の額面100万円、利率2%(6月末、12月末の年2回利息払)の社債につき利払い日をむかえ、社債利息が当座預金より支払われた。 例2) 保有する1000ドル(取得時105円/ドル)を銀行で円に換えたところ、決算日の為替相場では1ドル103円であった。手数料は度外視します。

例1計算)【利払日仕訳】 社債利息の計算も社債額×利率×期間となります。

借 方 貸 方 摘 要
社債利息 2000円 当座預金 2000円 100万円×2%×2/12

例2計算)【決算仕訳】
1ドルにつき105円で取得したものが103円となったので、1ドルあたりの損失は2円(=105円-103円)となります。このように決算における評価替えにより計算され、経常的に発生する損失は営業外費用となります。一般的には為替差損は売上高に関係なく発生します。

借 方 貸 方 摘 要
為替差損 2000円 現金 2000円 (105円-103円)×1000

営業外費用を求める際に注意することとしては、「主たる事業活動以外」、「経常的」、「会計期間」に加えて、「売上に貢献するか否か」、「評価替えの可否」を考慮します。

営業外損益を理解しよう!

営業外損益を取り上げるだけでも、損益計算書について多くを理解することができます。取引の形態は年々複雑になりますが、常に原点に戻って「主たる事業との関連性」や「経常性」、「会計期間」など丁寧に見ていけば、損益計算書のどの区分に表示するものかが見えてくるでしょう。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

タイトルとURLをコピーしました