信用保証協会とは、起業直後の事業や中小企業、その他小さな会社などが金融機関からお金を借りる際に、スムーズな資金調達のサポートを行う公的組織です。信用保証協会法に則って活動しています。
「銀行からまだ融資を受けられない」と悩む法人・個人でも、信用保証協会の保証付融資なら受けられるかもしれません。
当記事では信用保証協会の仕組みや制度の種類、利用するメリット・デメリット、融資審査に通るために必要なことを解説します。
【中・小規模事業者の味方】信用保証協会とは?
信用保証協会の役割を簡単にいえば、「事業者からの融資返済が止まったときは、信用保証協会が代位弁済(肩代わり)します」と金融機関に保証することです。
融資するリスクが下がることから、まだ経営実績が安定しない中小企業や小規模事業者でもお金が借りやすくなります。
一般社団法人「全国信用保証協会連合会」によると、信用保証を利用している事業者は全国約357.8万社のうち118.1万社と、約33%を占めます。1/3の事業者が利用する制度です。
以下では信用保証協会の仕組みや制度の種類をみていきましょう。
信用保証協会の仕組み
信用保証制度は、「融資をする金融機関」、「融資を受けて返済する事業者」、「返済を保証する信用保証協会」の3者の関係で成り立ちます。大まかな流れは次のとおりです。
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- 融資を受けたい事業者が信用保証協会へ申込みを行う
- 信用保証協会が金融機関へ保証承諾を行う
- 金融機関が事業者へ融資を実行する
- 事業者が金融機関へ返済を開始する
- もし事業者の返済が滞ったときは信用保証協会が金融機関へ代行弁済を行う
- 信用保証協会が代行弁済した金額を事業者から支払ってもらう(回収業務)
回収業務の一部は「保証協会債権回収株式会社(保証協会サービサー)」が行います。
なお保証を受ける事業者は、信用保証協会へ「信用保証料」を支払わなければなりません。信用保証料は信用保証料率(利用制度や決算内容で決定)や貸付金額、保証期間などに基づいて決まります。
信用保証協会の保証制度の種類
信用保証協会の保証制度は数種類存在します。保証金額(いくらまで弁済してくれるか)や保証期間などに違いがあるため、申込み事業者の状況・希望と合わせつつ、ニーズに合う制度を利用することになるでしょう。
全国の信用保証協会ごとにさまざまな保証制度がありますが、今回は主な保証制度について解説します。
流動資産担保融資保証制度(ABL保証)
流動資産担保融資保証制度(ABL保証)とは、売掛債権や棚卸資産を担保にした融資を保証する制度です。
制度の内容 | 概要 |
保証限度額 |
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保証期間 |
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担保 | 売掛債権や棚卸資産などの流動資産 |
保証人 | 法人の代表者のみ |
保証料率 | 借入極度額・借入金額の0.68% |
※将来発生する(現在は発生していない)債務についても保証すること
小口零細企業保証制度
小口零細企業保証制度とは、金融環境の変化を受けやすい小規模事業者のために、責任共有制度(責任の80%を信用保証協会、20%を金融機関が共有する制度)の対象外となる制度です。金融機関の責任がゼロになるため、金融機関の審査が通りやすくなるメリットがあります。
制度の内容 | 概要 |
保証限度額 | 2,000万円(既存の保証付融資残高と合算) |
保証期間 | 各信用保証協会の規定による |
担保 | 原則不要 |
保証人 | 原則法人代表者以外は不要 |
保証料率 | 各信用保証協会の規定による |
経営力強化保証制度
経営力強化保証制度とは、金融機関と認定経営革新等支援機関(税務や金融などの専門知識・実務経験が一定以上だと認められた個人や法人、機関)が連携して行う制度です。融資以外にも経営に関するさまざまなサポートが受けられます。
制度の内容 | 概要 |
保証限度額 | 2億8,000万円(一般の普通・無担保保証) |
保証期間 |
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担保 | 必要に応じる |
保証人 | 原則法人代表者以外は不要 |
保証料率 |
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特定社債保証制度
特定社債保証制度とは、社債(一般の事業者が発行する債券)の発行について保証し、資金調達の円滑化を行う制度です。受けるには純資産額や自己資本率などが一定以上と、ある程度の実績と安定した経営実態が必要になります。
制度の内容 | 概要 |
保証限度額 | 4億5,000万円 |
保証期間 | 7年以内 |
保証人 | 不要 |
担保 | 信用保証協会所定 |
保証料率 | 発行した社債総額の0.45~1.90% |
借換保証制度
借換保証制度とは、複数利用している保証付融資の一本化を促進し、制度を利用している事業者の月々返済額を軽減するなどを行う制度です。資金繰りの改善に効果があります。
制度の内容 | 概要 |
保証限度額 | 2億8,000万円 |
保証期間 | 10年以内 |
連帯保証人 | 法人代表者以外は不要 |
担保 | 必要に応じて求める |
保証料率 | 0.68%または0.8% |
(千葉県信用保証協会の場合)
【業種別】信用保証協会の保証を受ける条件
信用保証制度は中小企業や小規模事業者の支援を目的にしていることから、一定以上の規模の企業は利用できません。以下3つの要素を基準に利用できるかを決定します。
- 企業規模
- 業種
- 区域・業歴
1つ目の条件は企業規模です。以下の表に記載した業種別に定められた「資本金」と「従業員数」のうち、どちらかの条件を満たさなければなりません。
業種 | 資本金 | 従業員数 (小規模企業者) |
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建設・運送・不動産を含む、製造業など | 3億円以下 | 300人以下 (20人以下) |
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ゴム製品製造業(一部を除く) | 3億円以下 | 900人以下 (20人以下) |
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卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 (5人以下) |
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小売業/飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 (5人以下) |
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サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 (5人以下) |
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・ソフトウェア業 ・情報処理サービス業 |
3億円以下 | 300人以下 (20人以下) |
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旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 (20人以下) |
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主たる事業を医業とする法人 | ― | 300人以下 (20人以下) |
(参考:信用保証協会|初めての融資と信用保証)
2つ目の条件は業種です。信用保証制度は農林漁業や金融業などの一部の業種が利用できません。また許認可・届出が必要な事業の場合は、当該事業について許認可等を受けている必要があります。
3つ目の条件のうち区域は「申込み先になる各信用保証協会が管轄する都道府県(市)の中で事業を営んでいること」です。一方、業歴は受ける保証制度によって要件が変わります。
なお条件は信用保証協会や地域ごとに変わるため、詳細な情報はお近くの信用保証協会へ問い合わせましょう。
金融機関からの直接融資は「プロパー融資」
信用保証協会からの保証なしで、金融機関から直接融資を受けることを「プロパー融資」といいます。特徴は次のとおりです。
- 信用保証料がかからない
- 保証限度額がない
- 保証がない分だけ審査が厳しくなる
いきなりプロパー融資を受けるのはハードルが高いです。
まずは保証付融資の返済実績を作ったり、融資を利用した事業を軌道に乗せたりなどの実績を積む必要があります。
信用保証協会のメリット|開業直後の事業者でも使いやすい
信用保証協会の保証がある融資には、以下の4つメリットがあります。
- 実績が少ない事業者でも融資を受けやすい
- 担保や保証人の準備の心配があまりない
- 長期借入を利用できる
- 融資枠の拡大を図れる
メリット1.実績が少ない事業者でも融資を受けやすい
保証がある分だけ銀行も融資しやすいことから、保証付融資は融資や事業について実績が少ない事業者でも受けやすい点がメリットです。
また信用保証協会は経営に関する相談も受け付けています。前述した経営力強化保証制度もその一環です。開業して間もない事業者には利用しやすい制度といえるでしょう。
メリット2.担保や保証人の準備の心配があまりない
信用保証協会の融資は、他の融資制度と比べて担保や保証人を準備する心配があまりありません。とくに個人事業主の場合は原則として保証人が不要です。
法人の場合も、基本的には法人代表者以外の連帯保証人を立てる必要もありません。返済が滞らない限りはトラブルが少ない点も、信用保証協会を利用するメリットといえます。
メリット3.長期借入を利用できる
保証付融資長は、長期の借入であっても審査が通りやすいです。コツコツ返済しつつ、長期的な目線で経営を行えます。
たとえば東京の信用保証協会には、返済期限が設備資金20年・運転資金15年以内である長期経営資金保証制度や、創業融資制度があります。
メリット4.融資枠の拡大を図れる
保証付融資はプロパー融資と併用できます。そのため融資額をより大きくすることが可能です。より多くの融資を受け、積極的な事業拡大を狙えます。
信用保証協会利用のデメリットや注意点
中小企業や小規模事業者の強い味方である信用保証協会ですが、事前に知っておくべきデメリットと注意点もあります。「融資の返済自体は行う必要があること」と、「審査が100%通るわけではない」という2点を押さえておきましょう。
代位弁済でも債務が消えるわけではない
信用保証協会の保証は、あくまで「金融機関に支払うべき融資の返済を代位弁済すること」です。肩代わりしているだけなので、事業者の金融機関への債務は消えても、弁済してもらった分だけ債務が信用保証協会に対して発生します。
信用保証協会が事業者へ債務返済を要求する権利のことを、求償権(きゅうしょうけん)といいます。
信用保証協会と金融機関の2つの審査がある
保証付融資を受けるには信用保証協会と金融機関の両方の審査をクリアしなければなりません。「信用保証協会がオッケーでも金融機関はダメだった」というパターンもありえます。
また2回の審査がある分だけ、融資を受けるまでに最低でも1~2ヶ月の時間を有するのもデメリットといえます。
信用保証協会の申込の流れと必要書類
事業者が信用保証協会への申込みする際のおおまかな流れをまとめました。
申込みの流れ | 概要 |
1.信用保証協会へ保証の申込み |
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2.保証審査・保証承諾 |
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3.融資の実行 |
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4・融資の返済開始 | あらかじめ決めた返済条件をもとに債務者(事業者)が返済 |
「保証審査・保証承諾」の訪問・面談は、初回の保証付融資を受けるときのみ行われます。
申込み時の必要書類は次のとおりです。
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- 信用保証委託申込書(保証人等明細)
- 信用保証依頼書
- 申込人(企業・事業者)概要
- 個人情報の取扱いに関する同意書
- 確定申告書や決算書
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明書
上記の他に必要なものがある場合は、信用保証制度に申込んだときに案内があります。
信用保証協会の審査に通るには|面談時の注意点
信用保証協会の審査を通過するには、最低限の資金繰りや経営の状態をクリアする必要があります。以下の状況だと審査を通過するのは難しいでしょう。
- 税金を滞納している
- 銀行から取引停止処分を受けている
- 長年経営状態が赤字続きで上向く傾向が見られない
- 他の融資やクレジットカードなどの返済が止まった経験があり、信用情報にキズがある
- 債務超過(貸借対照表の負債の総額が資産の総額を上回る危険な経営状態)に陥っている
最低限の条件を満たした上で、以下の準備を進めておきましょう。もし初回の審査で面談がある場合、面接官へしっかりとアピールしてください。
- 融資の使い道が明確にする
- 無理のない返済計画を立てる
- 会社の業績がしっかりと黒字である点をアピールする(赤字の場合は要因や対応策を話すこと)
- 事業主が信用たる人物であると伝える
- 事業計画書を作り込む
保証付融資を受けたいなら税理士への相談がおすすめ!
保証付融資は実績が少ない中小企業や小規模事業者にとって心強い味方です。銀行やそのほかの金融機関からの融資が断られている状況でも、信用保証協会の保証がある融資を使える可能性があります。
とはいえ危険な経営状態だったり、曖昧な事業計画や返済予定しか決まっていなかったりすると、審査が通らないことも多いです。事前に経営実態や決算状態の整理、事業計画書の作り込みを進めておきましょう。
もし事業計画書や決算の数値、そのほか保証付融資について相談がある場合は、資金調達に強い税理士への相談をおすすめします。お金の専門家かつ、数々の経営相談を受けた税理士であれば、保証付融資の審査に通るための書類や面談のアドバイスを的確に授けてくれるはずです。