保証付融資がどのような仕組みで運営されているかご存知でしょうか。保証付融資は、信用保証協会が保証をすることで小規模事業者が融資を受けやすくなるなどの制度です。本記事では、さまざまな保証制度の種類やメリット・デメリットなどを解説します。
「保証付融資って普通の融資と何が違うの?」
「保証付融資ってどのようなものなの?」
ひと口に「保証付融資」と言っても、保証制度にはいくつかの種類があります。保証が付いていることにより、金融機関から融資を受けられやすくなります。
本記事では、保証付融資を活用できないかと検討している人に向けて、以下のポイントを解説します。
- 保証付融資とは何か
- 保証付融資を利用するメリット・デメリット
- 信用保証制度の仕組み・流れ
- 保証の種類
- 保証の条件
- 新型コロナウイルスにおける保証付融資の利用状況・現状
ぜひ自分にあった保証制度を選ぶ参考としてください。
保証付融資とは
画像引用元:信用保証協会と信用保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
保証付融資とは、信用保証協会が保証をしている融資のことを言います。
信用保証協会が保証をしている融資は「保証付融資」と呼ばれています。
信用保証協会の保証が付いていない融資を「プロパー融資」と呼びますが、このプロパー融資は借主が事業主であり、貸主は金融機関です。
これに対し、保証付融資は借主と貸主の間に「保証人」として信用保証協会が存在します。この保証制度があることにより、借主と貸主双方にメリットがあります。
例えば、貸主である金融機関は事業者に対しお金を貸しますが、全額返済してくれない「貸し倒れリスク」を持っています。そこで、保証付融資においては返済が滞った時に保証人が融資額の80~100%を保証してくれるため、貸し倒れになってしまうリスクを防げます。
対して借主である事業者としては金融機関から融資を受けるためには、金融機関の融資審査に通らなければなりません。そもそも融資における金融機関の審査は貸し倒れリスクを抑えるためにあります。
そこで第三者である信用保証協会が、もし貸し倒れになりそうな場合に立て替えて支払ってくれるため、保証がない事業者と保証のある事業者では金融機関としても融資のしやすさに違いがあることは明白です。
このように、保証制度があることによって金融機関に通りにくい設立したばかりの事業者や財政基盤が盤石でない事業者が融資を得られやすくなっています。
しかし、信用保証協会はタダで保証をしてくれるわけではありません。保証を得る見返りとして「信用保証料」を支払う必要があります。信用保証料がいくらくらいなのかについては後述します。
保証付融資を利用するメリット・デメリット
保証付融資の概要を知ってもらったうえで、ここでは保証付融資を利用するメリット・デメリットを解説します。
保証付融資は、プロパー融資と比較し次のようなメリット・デメリットがあります。
- 融資を受けやすくなる
- 長期借入に対応している
- 原則担保・保証人は不要
- 信用保証料を支払う必要がある
それぞれ順に解説します。
【信用保証協会のメリット】融資を受けやすくなる
融資を受けようとする際に、信用保証協会の保証を受けておけば、融資を受けやすくなります。その理由は単純で、保証があれば、お金を貸す側である銀行のリスクが少ないからです。
例えば、株式会社を設立したてで、銀行からの融資歴がない(返済実績がない)、取引実績がない場合などは、銀行としても「この事業者(人)は本当にお金を返してくれる信用ある人なのか?」といった判断がしにくくなります。
そこで、第三者である信用保証協会が融資額の80~100%を保証するため、お金を貸しやすくなります。
【信用保証協会のメリット】長期借入に対応している
保証付融資は、長期借入に対応しています。そのため事業者は、事業を行ううえで、より長期的な資金の活用が可能になります。
保証のすべてが長期借入に対応しているわけではありませんが、例えば「経営力強化保証制度」の場合、運転資金は5年以内、設備資金については7年以内が保証期間として定められています。
保証期間は、それぞれの保証制度で大きく変わる部分のため、信用保証協会などに確認しておきましょう。
【信用保証協会のメリット】原則担保・保証人は不要
信用保証協会の保証制度の多くは、「原則として法人の代表者のみ」と記載があります。そのため、実質的に融資を申し込む本人が保証人となります。
つまり、融資を受けるのは会社(事業者)であり、その保証人として、その法人の代表者がつくことになります。
担保に関しても、原則不要と記載されています。しかし、細かい条件によっては「必要におうじて」担保を求められることもあるため、詳細は信用保証協会に保証を申し込んだ際に確認が必要です。
【信用保証協会のデメリット】信用保証料を支払う必要がある
すでに述べたとおり、信用保証協会は「タダ」で保証をしてくれません。そこで、融資を受ける事業者は信用保証協会に対して一定の「信用保証料」を支払います。
この仕組みは、部屋を借りる賃貸契約で利用される家賃保証と、ほぼ同じです。家賃保証の場合は、保証契約時に初回保証料として家賃の50~100%程度が保証料として請求されます。また、1年もしくは2年間の保証契約であるため、保証契約の更新月には更新料として1万円ほど支払います。
これに対し、信用保証協会の保証料は、おおまかに「借入限度額もしくは借入額に対して約2%以下」の利率で算出されます。具体的には、以下の要素などから、リスク評価システム「CRD」に基づき決定されます。
- 決算内容
- 保証制度利用残高
- 保証期間
- 担保提供有無
- 会計処理による割引の適用有無
- 貸借対照表の作成有無
- 監査報告書の有無
- 会計参与を設置している旨の登記を行ったことを示す書類の有無
- その他、信用保証協会に応じて
また「CRD」とは、中小企業信用リスク情報データベースのことを指します。
それでは、東京信用保証協会を利用する場合を例に、保証料決定の具体例を挙げてみます。
<条件>
- 責任共有制度の対象
- 保証区分は一般保証
- 保証期間は5年
- 保証付融資の合計額は1,000万円超え
- 担保なし
- 利率区分は「3」
この条件の場合、下表から年率「1.55%」となります。
画像引用元:責 任 共 有 保 証 料 率 表(案)|東京信用保証協会
例えば、融資額が1,500万円の場合、年率1.55%であるため、1年あたりの保証料は23.25万円です。保証期間は5年と仮定しているため、満期一括返済の場合は保証料が116.25万円です。
一括返済や分割返済などにより保証料は違ってくるため、詳細は以下を参考にしてみましょう。
参考:信用保証料の計算例
2020年7月現在では、新型コロナウイルス感染症による経済への影響を踏まえ、各自治体より保証料の補助が実施されている場合があります。名古屋市の場合、「概ね3年間分の保証料を名古屋市が補助」します。
信用保証制度の仕組み・流れ
画像引用元:信用保証のお申込の流れ|一般社団法人
そもそも信用保証制度は、信用保証協会によって成り立っており、信用保証協会は以下のような目的で設立されています。
信用保証協会は、信用保証協会法(昭和28年8月10日法律第196号)に基づき、中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関です。
つまり、中小企業・小規模事業者の資金調達をサポートするため、法律に基づいて設置されている公的期間です。
以降では、この信用保証協会が行う「信用保証」の仕組み・流れを解説します。おおまかな流れは以下のとおりです。
- 保証申し込み
- 保証審査
- 融資
- 返済
- (場合によって)代位弁済
それぞれ順に解説します。
【信用保証の流れ】保証申し込み
融資申し込みの前に、保証の申し込みを行います。これを行わずに融資を申し込んだ場合、先ほど紹介したとおり「プロパー融資」となってしまいます。
保証の申し込みは、以下のいずれかの窓口で行います。
- 金融機関
- 信用保証協会
- 地方自治体
- 商工団体
上記のうち、最も代表的な申し込み方法は、金融機関もしくは信用保証協会です。金融機関で保証を申し込む場合は、金融機関の判断の後、信用保証の申し込み手続きが行われます。
【信用保証の流れ】保証審査
申し込み手続きを行うと、信用保証協会で保証審査が行われます。この審査の途中で、訪問や面談がある場合があります。留意しておきましょう。
信用保証協会での審査に通ると、信用保証協会は金融機関に対して「信用保証書」を発行します。
【信用保証の流れ】融資
信用保証書が発行されたことを金融機関が確認したら、融資が実行されます。また、原則このタイミングで保証料を支払います。
【信用保証の流れ】返済
金融機関との融資契約に基づき、返済します。
【信用保証の流れ】代位返済
もし返済が滞った場合、保証人である信用保証協会が立て替えて返済します。
注意すべき点は、債務がなくなるわけではない点です。信用保証協会が立て替えて返済しているため、その金額については信用保証協会に返済することになります。
場合によっては遅延損害金が発生する、信用情報が傷つくなど多数のデメリットが生じるため、気をつけましょう。
保証の種類
保証の仕組みはシンプルですが、保証にもいくつかの種類があります。各地域の信用保証協会によって保証内容は異なることがあるため、詳細は各信用保証協会へ問い合わせください。
ここでは、代表的な保証制度である以下の7つを紹介します。
- 危機関連保証(セーフティネット保証)
- 経営安定関連保証(セーフティネット保証)
- 流動資産担保融資保証制度(ABL保証)
- 小口零細企業保証制度
- 経営力強化保証制度
- 借換保証制度
- 特定社債保証制度
危機関連保証(セーフティネット保証)
危機関連保証とは、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症などの危機下に、全国・全業種を対象に一般保証の保証限度額である2.8億円と別枠で2.8億円を100%保証する制度です。
つまり、一般保証で2.8億円の保証を受けていたとしても、危機下においてはさらに2.8億円の保証が受けられるというものです。平成30年4月1日に施行された、比較的新しい保証制度です。
次に紹介する経営安定関連保証とも別枠で保証を受けられます。
対象となる事業者は以下のとおりです。
- 危機に起因して最近1ヶ月間の売上高などが前年同月比15%以上減少
- 上記に加え、その後2ヶ月間を含む3ヶ月間の売上高などが前年同期比で15%以上減少することが見込まれる
また、売上高などの減少については、市区村長の認定が必要です。
保証限度額 | 2.8億円 |
保証期間 | 10年以内据置期間は2年以内 |
保証人 | 原則として法人の代表者のみ |
担保 | 必要に応じて |
信用保証料率 | 0.8%以内で、各信用保証協会が定める |
参考:危機関連保証|中小企業庁
経営安定関連保証(セーフティネット保証)
経営安定関連保証は、いわゆるセーフティネット保証と呼ばれている保証制度で、取引先の倒産や景気低迷時などに利用できる保証制度です。
市区村長の認定を受け、通常の保証枠とは別枠で最大2.8億円の保証を利用できます。認定要件として、下記のように1~8号まであります。
画像引用元:経営に支障が生じている方 新型コロナウイルス感染症対策を含む|目的別保証制度|一般社団法人
認定要件の詳細は、以下リンクを参考にしてください。
保証限度額 | 2.8億円 |
保証期間 | 各信用保証協会が定める |
保証人 | 原則として法人の代表者のみ |
担保 | 必要に応じて |
信用保証料率 | 年0.7~0.9% |
流動資産担保融資保証制度(ABL保証)
画像引用元:さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
流動資産担保融資保証制度は、その名のとおり、流動資産を担保として譲渡することで融資を受ける保証制度です。
流動資産とは、具体的に以下のようなものを言います。
- 売掛債権
- 棚卸資産
担保といえば不動産のようなイメージがありましたが、このような流動資産を担保できる制度です。
保証限度額 | 2億円80%部分保証 |
保証期間 | 根保証:1年間個別保証:1年以内 |
保証人 | 法人の代表者のみ |
担保 | 流動資産のみただし、個別保証の場合は、売掛債権のみ |
信用保証料率 | 借入限度額・借入金額に対し年0.68% |
参考:さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
「保証期間」において、「根保証:1年間」という記載があります。「根保証」とは、当事者間で生じる債務をすべて保証するというものです。1つの融資契約だけでなく、当事者が同じであれば1つの融資契約に関わらずその他の契約に関しても根本的に保証をするというイメージです。
そのため、とても大きな保証責任を伴います。根保証でなければ、1つの契約において返済が滞った場合、その金額のみの保証責任を問われます。
小口零細企業保証制度
小口零細企業保証制度は、小規模企業者を対象とし、責任共有制度の対象外となる保証制度です。
保証限度額 | 2億円80%部分保証 |
保証期間 | 根保証:1年間個別保証:1年以内 |
保証人 | 法人の代表者のみ |
担保 | 流動資産のみただし、個別保証の場合は、売掛債権のみ |
信用保証料率 | 借入限度額・借入金額に対し年0.68% |
責任共有制度においては、返済が滞った場合に金融機関が20%の負担をする形となっていますが、小口零細企業保証制度はこの制度の対象外です。これにより、金融機関の負担が実質0になるため、より融資を受けやすくなることが見込めます。
「責任共有制度」とは信用保証協会と金融機関が適切な責任共有を図り、事業者の事業意欲を継続的に把握しながら経営支援や再生支援などといった支援を行うことを目的としたものです。
「部分保証方式」と「負担金方式」の2つがあり、このどちらかについては金融機関が選択します。
部分保証方式は、個別貸付金の80%を信用保証協会が保証します。対して負担金方式では、保証時点で100%保証し、代位弁済状況などに応じて、金融機関は信用保証協会に対し負担金を支払うことにより部分保証と同等の負担を負うこととしています。
平成19年までは保証協会による100%保証でしたが、この責任共有制度の導入により金融機関が20%の責任を共有することになった点がポイントです。
これにより、「経営・再生支援を行う責任を金融機関も負う」という形が明確になりました。
原則として、ほぼすべての保証制度はこの責任共有制度のうえに成り立っています。
参考:信用保証制度を支えるしくみ|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
経営力強化保証制度
経営力強化保証制度は、金融機関が認定経営革新等支援機関と連携し、事業計画の策定支援や継続的な経営支援を行い、経営力強化を図ることを目的として創設された制度です。
ポイントは、支援機関のサポートを得ながら経営改善に取り組めば、他の制度よりも低い信用保証率(約0.2%)が適用される点です。
保証限度額 | 2億8,000万円 |
保証期間 | 運転資金:5年以内設備資金:7年以内据置期間はそれぞれ1年以内 |
保証人 | 原則として法人の代表者のみ |
担保 | 必要に応じて |
信用保証料率 | 責任共有制度の対象:0.45~1.75%責任共有制度の対象外:0.5~2% |
参考:さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
事業計画について、四半期に1回、金融機関に対して計画の実行と進捗報告の義務がある点には注意してください。
借換保証制度
借換保証制度は、複数の保証付融資の債務を一本化することにより事業者の負担軽減を図る保証制度です。
保証限度額 | 2億8,000万円 |
保証期間 | 原則として10年以内据置期間は1年以内 |
保証人 | 原則として法人の代表者のみ |
担保 | 必要に応じて |
信用保証料率 | 経営安定関連保証による借換え:(1~4・6号)0.80% (5・7・8号)0.68%一般保証による借換え:弾力化による保証料率(9段階)を適用 |
一般保証による借換え保証料率に「弾力化」という表現がありますが、具体的には年0.5%から2.2%の範囲で経営状況に応じて判断されるものです。
特定社債保証制度
特定社債保証制度は、社債の発行を行う事業者向けの保証制度です。
保証限度額 | 4億5,000万円 |
保証期間 | 7年以内 |
保証人 | 不要 |
担保 | 各信用保証協会が定める |
信用保証料率 | 社債総額に対し0.45~1.90% |
参考:さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
利用条件はやや複雑ですが、以下のとおりとなっています。(a)は絶対条件であり、(b)または(c)を満たしながら(d)または(e)を満たす必要があります。
画像引用元:さまざまな保証制度|もっと知りたい信用保証|一般社団法人
保証の条件
これまでに紹介してきた保証制度を利用するには、前提として以下の条件に合致していなければなりません。
- 企業規模
- 業種
- 区歴・業歴
それぞれ解説します。
企業規模(資本金・従業員数)
下表のように、業種ごとに資本金・従業員数による規模の制限があります。資本金と従業員数どちらも条件が設定されていますが、いずれかを満たしていれば保証制度の利用は可能です。
画像引用元:初めての融資と信用保証|一般社団法人 全国信用保証協会連合会
業種
規模の制限だけでなく、業種によっては保証制度の対象外とされているものもあります。具体的には、以下の業種が対象外です。
- 農林漁業
- 金融業
さらに、許認可・届出が必要な事業においては、許認可と届出を受けていなければなりません。
区域・業歴
原則、各信用保証協会の管轄区域で事業を営んでいる必要があります。例えば、東京の保証制度を受けたくても、千葉で事業を営んでいなければ利用できません。
本記事では代表的な保証制度を紹介しましたが、各都道府県にある信用保証協会は、自治体の制度を活用しながら保証制度を利用している場合もあります。そのため、各信用保証協会によって保証の内容が異なり、管轄区域が分けられています。
保証付融資まとめ
保証付融資について解説してきました。簡単に保証が付いている融資と理解していた人も、本記事を見て保証の仕組みや種類、要件について理解いただけたでしょうか。
ぜひ本記事を参考に、事業に合った保証制度を選び、活用しましょう。