2021年12月20日に経済産業省関係の補正予算が確定したことで、「事業復活支援金」の公募も決まりました。事業復活支援金とは、コロナ禍で売上が減少した小規模事業者から中堅企業の幅広い範囲に対し、金銭的支援を行う制度です。
当記事では2022年1月時点で判明している事業復活支援金の概要や支給金額、経営の立て直しに利用できるその他の資金繰り制度などについて解説します。
【2022年1月時点】事業復活支援金とは?対象事業者や支給金額
事業復活支援金とは、新型コロナウイルスによって大きな影響を受けた事業者に対し、固定費負担の支援として、「5ヶ月分の売上高減少額を基準に算定した額」を一括給付する制度です。
事務局は持続化給付金や一時支援金などの事務事業を担当した、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社で決定しています。
以下では事業復活支援金の概要や支給金額の算定方法などを解説します。
対象となる事業者
2022年1月時点で判明している対象事業者は次のとおりです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で2021年11~2022年3月のいずれかの月の売上が30%以上に落ち込んだ事業者
中堅企業・中小企業・小規模事業者・個人事業主(フリーランス含む)
地域・業種を問わない幅広い事業者
支給額の算定式と上限額
事業復活支援金の支給額は、以下の算定式で算出します。
※1 2018年11月~2019年3月、2019年11月~2020年3月、2020年11月~2021年3月の
いずれかの期間のうち、売上高の比較に用いた月を含む期間
※2 2021年11月~2022年3月のいずれかの月
「1年または2年前の11月~3月の、5ヶ月分の売上高の合計」と「今年(2021年度)の11月~3月のうち1ヶ月の売上高」の差額が受け取れます。
事業復活支援金の支給額の上限は、事業規模や売上の減少率によって変動します。具体的には次のとおりです。
売上減少率が30~50%未満の場合、50%以上の6割の金額が支給されます。
最大金額は250万円ですが、資本金5億円超の中堅レベルしかその金額で支給されません。多くの企業が資本金1億円以下の中小企業・個人事業主だと考えると、「事業復活支援金の支給額は30万~100万円」と頭に入れておくとよいでしょう。
事業復活支援金の支給額の計算例
年間売上1億円以下の中小企業の場合、2020年の基準期間の売上高が600万円、対象月の売上高が60万であれば、600万円-60万円=の540万円で上限額の100万円が支給されます。
政府がかかげる事業目的は「来年3月まで見通しを立てられるように」となっていますが、実際に受けられる支給額は1~2ヶ月分の補助レベルと考えておきましょう。ただし事業規模や業種関係なく受け取れることから、活用できる事業者は申請をおすすめします。
事業復活支援金の予算は2兆8,032億円
経済産業省は令和3年度の補正予算にて、事業復活支援金の予算を2兆8,032万円としました。事業や生活・暮らしの支援予算としては、時短焼成等に応じた飲食店への協力金等の6兆4,769億円に次ぐ金額です。
雇用調整助成金の予算額が、令和2年度の補正予算にて1兆3,352億円であったと考えると、事業復活支援金も大規模な支援制度といえるのではないでしょうか。
緊急事態宣言等の影響を受けた場合は月次支援金も活用
政府は2021年6月、コロナ禍の影響を受けた事業者のために、事業復活支援金より先に新しい支援金として「月次支援金」を設立しました。一時支援金に代わる制度として利用できます(一時支援金は申請受付終了)。
月次支援金とは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置(以下、緊急事態措置等)によって実施した飲食店の休業・時短営業や、外出自粛の影響を受けた事業者を、金銭的に支援する制度です。
中小企業なら20万円/月、個人事業主等をなら10万円/月まで受け取れます。対象事業者の業種は問いません。
具体的な支給条件は次のとおりです。
- 緊急事態措置等に伴う飲食店の休業・時短営業・外出自粛の影響を受けていること(取引先が飲食店であることによる影響含む)
- 緊急事態措置等が実施された月のうち、月間の売上が2019年または2020年の同じ月と比べて50%以上減少していること
- 各地の地方公共団体における対象月の協力金支給対象になっていないこと
(出典:一時支援金・月次支援金)
月次支援金の詳細は公式サイトよりご確認ください。
2022年以降で経営を立て直したい事業者向けの資金繰り
事業復活支援金や月次支援金以外にも、2022年以降でも使える事業者向けの資金繰り策があります。
今回はコロナでダメージを受けた中小企業・小規模事業者向けの資金繰り策として、「事業再構築補助金」「雇用調整助成金」「新型コロナウイルス感染症特別貸付」の3制度を解説します。
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、コロナ禍で売上が減少した事業者がウィズコロナでの経済環境の変化に対応するため、新分野への参戦・業種の変更といった挑戦的な事業再構築を実施する際に受け取れるお金です。100万円~1億円の範囲で補助金が支給されます。
事業再構築とは、次の取組を指します。
新分野展開 | 主力の事業は変更せず、新しい製品やサービスを産み出して市場に進出すること |
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事業転換 | 主力の業種(製造業や飲食業などの括り)は変更せず、 主力の事業(製造業であれば製造製品の違い、飲食業なら提供する料理の違いなど)を変更すること |
業種転換 | 主力の業種を変更すること |
業態転換 | 主力製品やサービスの製造・提供方法を大きく変更すること |
事業再編 | 合併や会社分割、株式交換などで新しい事業形態にした後、 新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換のいずれかを実施すること |
事業再構築補助金には、通常枠に加えて大規模賃金引上枠や最低賃金枠などがあります。自社事業の状況に応じた枠の利用を検討しましょう。
詳細は事業再構築補助金の公式サイトをご覧ください。
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、コロナの影響やその他の理由で事業活動を縮小する際、雇用調整によって雇用を維持しようとする事業者を助成する制度です。2021年1月時点では、要件の緩和や日額上限・補助率の拡大となったコロナ特例措置が利用できます。
本助成金は、従業員を休業させた事業者が主な対象です。休業に伴う休業手当の支払い額・日数に応じて給付額は変動します。出向によって雇用調整を行うときは、産業雇用安定助成金の利用を検討しましょう。
詳細は厚生労働省の公式サイトをご覧ください。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
新型コロナウイルス感染症特別貸付とは、主に日本政府金融公庫が実施する、実質無担保・無利子の融資制度です。2021年12月が申請期限でしたが、2022年3月末まで期限が延長されました。
国民生活事業の制度で最大8,000万円、中小企業事業の制度で最大6億円の融資を利用可能です。
ただし融資制度は助成金・補助金と違って返済が必要になるため、申請前には税理士やその他企業経営の専門家などと、事業計画や資金繰り計画について話し合っておきましょう。
詳細は日本政府金融公庫の公式サイトをご覧ください。
2022年度以降の事業立て直し関係の予算について
政府は2022年度の経済対策の予算として、31兆5,627億円を計上しました。一般会計の再出総額は過去最大の35億9,895億円となり、政府は2022年度以降も経済の立て直しに力を入れていくと予想されます。
以下では経済産業省や厚生労働省が公表する補正予算案から、事業者対象の支援策に関係する予算についてみていきましょう。
なお解説している予算案以外にも、事業立て直し関係の事業としてさまざまな事業の予算が計上されています。
資金繰り支援
経済産業省は資金繰り支援として予算1,403億円を計上しました。既定経費の活用を含めると、3兆245億円になります。
主な事業概要は次のとおりです。
- 日本政府金融公庫の資本性劣後ローンの継続
- コロナの影響を受けた事業者を対象にした実質無利子・無担保融資の延長
- 商工中金による危機対応融資の延長
- 併走支援型特別保証の利用条件の引き上げの継続 など
中小企業向け事業再編・再生支援事業
経済産業省は、中小企業向け事業再編・再生支援事業として757億円を計上しています。コロナ禍後、地域経済の中心となる中小企業の成長・事業再編の促進を支援します。
主な事業概要は次のとおりです。
- 官民連携の中小企業経営強化支援ファンドの組成を促進し、資本性資金の投入とハンズオン支援などを実施
- 債務を抱えた中小企業の再生支援ニーズに対応するため、官民連携の中小企業再生ファンドの組成を促進し、万全の体制を確保
- 中小企業の私的整理等のガイドラインを策定
- 経営者保証ガイドラインの明確化・活用を促す措置の検討
コンテンツ海外展開促進・地盤強化事業
経済産業省は、海外向けのコンテンツやプロモーションを行う事業者の支援に557億円を計上しています。主な事業概要は次のとおりです。
コロナの影響を受けたコンテンツ関連業者が行う収益基盤を強化に資する取組の補助として、補助金額の上限を3,000万円から5,000万円に引上げ
イベントのキャンセル費用の補助金額を上限2,500万円から5,000万円に引上げ
海外展開におけるローカライズ・プロモーションの支援
なお、コンテンツ全般の事業者に関連する補助金は、「J-LODlive補助金運営事務局」の公式サイトをご覧ください。
中小企業等事業再構築促進事業・生産性革命推進事業
経済産業省は事業再構築補助金や生命革命推進事業(ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金・事業継承引継ぎ補助金)などの予算として、8,124億円を計上しています。
これらの補助金は政府が提供する中小企業・小規模事業者の支援策として代表的な制度です。2022年度以降も公募が続くと予想されます。
雇用調整金等による雇用維持の取組への支援
厚生労働省は、雇用調整助成金の特例措置の延長といった雇用維持の取組に対し、予算1兆854億円を計上しています。
また雇用調整助成金等の財源確保や雇用保険財政を安定させるために、一般会計から労働保険特別会計雇用勘定への繰入を行います。
民間部門における分配強化に向けた強力な支援策
厚生労働省は、所得の再分配等を目的とした分配戦略の強化として、以下の事業への投資予算を計上しています。
- 業務改善助成金の拡充:135億円
- 非正規雇用労働者等に対する労働移動支援等:808億円
- IT導入分野への重点化によるデジタル人材の育成等:216億円
コロナ禍でも最低賃金を引き上げたり、事業再編でテレワークやIT人材育成を導入したりを検討する事業者を、政府は引き続き支援していくと予想されます。
2022年度に向けて事業復活支援金やその他の資金繰りの利用を検討しよう
2020年~2021年にかけて事業活動にダメージを負った事業者は、事業復活支援金を始めとするさまざまな給付制度を利用できます。事業復活支援金は事業規模・業種を問わず対象になるため、応急的な利用を含めて活用を検討しましょう。
2022年度以降も、世界レベルで経済がどう動くか予想しづらい状況です。ウィズコロナの時代も事業が継続・発展できるよう、今のうちから将来の資金繰りについて考えておくことが重要です。
もし事業復活支援金やその他助成金・補助金・融資制度の申請や活用についてお悩みの場合は、社会保険労務士や税理士、中小企業診断士といった各分野の専門家への依頼をおすすめします。新制度・法改正の最新情報の提供や事業計画作成のサポート、申請の代行などについて相談可能です。