「ものづくり補助金」とは、製品・サービスに関する開発・改善といった「事業者のものづくりにかかる経費」を金銭的にサポートする補助金制度です。最大3,000万円(制度によっては1億円)まで補助金が受け取れます。
当記事ではものづくり補助金の概要や受けるための条件、具体的な支給率などを解説します。なお2021年11月現在では、第9次公募が以下のスケジュールで受付中です。
- 公募開始:2021年11月11日
- 申請開始:2021年12月1日
- 応募締め切り:2022年2月8日
ものづくり補助金とは?概要や採択率を解説
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者を対象にした「製品やサービスなどのものづくりにかかる経費をサポートする補助金」です。正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と呼びます。2020年3月10日に1次公募が開始されました。
(出典:ものづくり補助金総合サイト)
ものづくり補助金の目的は、インボイス制度や働き方改革、賃上げなどの2022年以降にある制度変更に事業者が対応できるよう、関連する設備投資を支援することです。
補助対象は革新的なサービス・その試作品の開発や生産プロセス改善などが該当します。
たとえば「今後のテレワーク導入に備えて新しい管理システムを300万円で導入したい」という場合、300万円のうち150万円~200万円の補助金が出ます。
ものづくり補助金の種類は、原則として通常の「一般型」、海外向け事業の場合に補助金額が上がる「グローバル展開型」の2つです。一般型には、新型コロナウイルス感染症への対応を目的とする場合に補助率が上がる「低感染リスク型ビジネス枠」もあります。
第5~7次における応募者数・採択者数は以下のとおりです。
応募者数 | 採択者数 | 採択率 | |
第5次一般型 | 5,139 | 2,291 | 44.6% |
第5次グローバル展開型 | 160 | 46 | 28.8% |
第6次一般型 | 4,875 | 2,326 | 47.7% |
第6次グローバル展開型 | 105 | 36 | 34.3% |
第7次一般型 | 5,414 | 2,729 | 50.4% |
第7次グローバル展開型 | 93 | 39 | 41.9% |
全体的に、45%前後の採択率となっています。
実際に採択された事業は、ものづくり補助金総合サイトの「採択結果」より確認できます。
ものづくり補助金を受けるための条件
ものづくり補助金は申請するだけでは受けられません。以下の条件を満たす必要があります。
- 対象事業者に該当すること
- 対象経費であること
- 必要な事業計画を策定すること
- 審査項目をクリアすること
以下で詳細をみていきます。
対象事業者に該当すること
ものづくり補助金を受けられるのは、一定数以下の規模・従業員の中小企業・小規模事業者です。業種ごとの基準は次の表のとおりです。
以下の形態の組織・団体も対象になります。
従業員数が300人以下・経営力向上計画の認定を受けた「特定非営利活動法人(認定特定非営利活動法人を除く)」も対象です。
ただし、大企業そのものや親会社が一定以上の株式・出資価格を所有するみなし大企業は、ものづくり補助金を受けられません。
対象経費であること
ものづくり補助金を受けるには、申請する経費が、以下8つの対象経費のどれかである必要があります。
- 機械装置・システム構築費
- 運搬費
- 技術導入費
- 知的財産権等関連経費
- 外注費
- 専門家経費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
以下にて解説します。
機械装置・システム構築費
機械装置・システム構築費とは、事業に必要な機械・システム類を買ったり作ったりするときにかかる経費です。具体的には次のとおりです。
- 機械・装置・工具・器具などの購入、製作、借用にかかる費用
- 専用ソフトウェア・情報システムなどの購入、構築、借用にかかる費用
- 上記2つの改良、修繕、据え付けにかかる費用
なお3者以上の中古品流通事業者より特定の事項が記載された相見積もりを取った場合は、中古設備も対象になります。
運搬費
運搬費とは、事業に関する運搬や宅配、郵送にかかる経費です。ただし機械装置を購入したときにかかる運搬費は、機械装置・システム構築費に含めます。
技術導入費
技術導入費とは、事業に必要な知的財産権等の導入にかかる経費です。「商品の商標権」や「技術・発明に関する特許権」、「デザインの意匠権」などが知的財産権に当てはまります。
知的財産権等関連経費
知的財産権等関連経費とは、主に知的財産権を取得するためにかかる経費です。たとえば弁理士に手続きの代行を依頼する際の依頼料が当てはまります。
外注費
外注費とは、新製品やサービスの開発に必要な加工・デザイン(設計)・検査などの作業について、自社以外へ外注するときにかかる経費です。
機械装置の製作を外注する場合は、原則として機械装置・システム構築費に含めます。
専門家経費
専門家経費とは、事業を行ううえで必要な専門家への支払いです。具体的な職種と単価限度は次のとおりです。
専門家の職種 | 補助金の対象になる単価限度 |
大学教授・弁護士・弁理士・公認会計士・医師 | 1日5万円以下 |
大学准教授・技術士・中小企業診断士 | 1日4万円以下 |
学識経験者・兼業・フリーランスなどの専門家へのコンサルティング・旅費の経費 | 1日5万円以下 |
クラウドサービス利用費
クラウドサービス利用費とは、事業に必要なクラウドサービスやWebプラットフォームの利用にかかる経費です。サーバー購入費やサーバー本体のレンタル費は含まれず、あくまでサーバーの1領域を借りる費用のみが対象になります。
また、借りるときに付帯するルータ使用料やプロパイダ契約料、通信料も含まれます。
原材料費
原材料費とは、試作品の開発で必要になる原材料・副資材を買うときに必要な経費です。補助を受ける条件は次のとおりです。
- 作成した受払簿への記帳による受払い明確化
- 試作・開発等の途中で生じた仕損じ品やテストピースの保管
【グローバル展開型のみ】海外旅費
海外旅費とは、海外へ事業を拡大したり、既存の海外事業を強化したりを目的にした海外渡航・宿泊にかかる経費です。
補助を受けるには、交付申請時にあらかじめ計画を申請すること、一度の渡航で2名までにすることが必要です
【低感染リスク型ビジネス枠のみ】広告宣伝費・販売促進費
広告宣伝費・販売促進費とは、事業で開発する製品・サービスの宣伝に関係する経費です。一般型の低感染リスク型ビジネス枠の申請でのみ対象になります。
具体的な経費内容は次のとおりです。
- 広告の作成
- 媒体掲載
- 展示会出展
- セミナー開催
- 市場調査
- 営業代行利用
- マーケティングツール
必要な事業計画を策定すること
ものづくり補助金の給付を受けるには、事前に決められた要件すべてを満たせる3~5年の事業計画の策定が必要です。同時に計画を従業員へ表明しなければなりません。
要件は次の3つです。
- 事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
- 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準に引き上げ
付加価値額は、営業利益・人件費・減価償却費を合計した金額です。給与支給総額は、全従業員および役員に支払った給与等(給料・賃金・賞与・役員報酬など)です。
もし目標値を達成できなかったときは、補助金全額または一部返還になる可能性があります。
審査項目をクリアすること
ものづくり補助金を受けるには、事務局による審査で採択を受ける必要があります。大まかな審査項目は次の3つです。
審査項目 | 概要 |
技術面 |
|
事業化面 |
|
政策面 |
|
審査に関しては、以下の「加点項目」をクリアし書類にて証明することで、採択される可能性が上がります。
- 有効な期間の経営革新計画の承認を取得
- 有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得
- 創業・第二創業から5年以内
- パートナーシップ構築宣言の実施
- 給与支給総額の年率平均+3%や地域別最低賃金+90円など一定水準以上の賃上げ加点 など
ものづくり補助金の種類は?概要や補助率
ものづくり補助金は主に「一般型」と「グローバル展開型」の2種類です。2021年11月現在では終了しているものの、「ビジネスモデル構築型」もあります。
以下ではそれぞれの概要や補助金額の上限、補助率などを解説します。
ものづくり補助金1.一般型
一般型は、ものづくり補助金の一般的な要項を満たしたときに受けられます。
新型コロナウイルス感染症に対応する事業の場合は、補助率が通常より上がる「低感染リスクビジネス型」に申し込めます。
項目 | 要件 |
補助金額 | 100万~1,000万円 |
補助率 |
|
必要な設備投資 | 単価50万円(税抜き)以上の設備投資 |
ものづくり補助金2.グローバル展開型
ものづくり補助金の一般的な要項を満たしつつ、海外事業の拡大・強化を目的とする場合に受けられるのがグローバル展開型です。
「海外の支店への設備投資」や「販売先の1/2以上が海外顧客」などの条件を満たす必要があります。
項目 | 要件 |
補助金額 | 1,000万~3,000万円 |
補助率 |
|
必要な設備投資 | 単価50万円(税抜き)以上の設備投資 |
ものづくり補助金3.ビジネスモデル構築型
ものづくり補助金のビジネスモデル構築型とは、対象事業の実行支援だけでなく、新しい事業の立ち上げを行う場合に補助金が出る制度です。最大で1億円になります。また補助対象になる経費に会議費や謝金、人件費などが追加されています。
2021年3月に2次募集が終了して以来、まだ3次募集は行われていません。ただし2020年4月・2021年1月と募集がされているため、2022年に3次募集がされる可能性はあります。
ものづくり補助金関係の公式サイト「ミラサポplus」や「ものづくり補助金総合サイト」をチェックしておきましょう。
ものづくり補助金の申請方法の流れ
ものづくり補助金の申請方法の流れを以下で簡単にまとめました。
申請の流れ | 概要 |
gBizIDプライムアカウントを取得する | gBizIDプライム公式サイト |
電子申請システムにログインする | 電子申請ログインページ |
電子申請システムにて申請を行う |
|
採択後の手続き | 審査通過後に補助金の交付手続き |
事業計画の結果報告 | 申請した事業目的が達成できているか確認 |
※事業計画書、賃上げ引き上げ計画の表明書、決算書(貸借対照表や損益計算書など)、加点項目の証明となる資料など
ものづくり補助金は電子申請のみ受け付けています。
ものづくり補助金を利用して製造事業の拡大・改善を!
ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者のものづくりについて、最大3,000万円の補助金を給付する制度です。製造環境の基盤固めや強化を見込む経営者は、一度受給を検討してみてください。
もし、ものづくり補助金の申請に関し、事業計画の作成や経費見直しなどを行いたいときは、社会保険労務士などの専門家への相談をおすすめします。豊富な専門知識や経験から、具体的な事業計画や申請の際の注意点などについてアドバイスを受けられます。