補助金・助成金

両立支援等助成金とは?|出生時両立支援コース・女性活躍加速化コースなどを紹介

両立支援等助成金とは?|出生時両立支援コース・女性活躍加速化コースなどを紹介

両立支援等助成金は都道府県の労働局が事業主に支給する助成金です。2021年度は子育てパパを支援するための職場環境を整備した事業主を支援する「出生時両立支援コース」をはじめとして8つのコースがありました。

高齢化社会で懸念される介護離職の防止や、共働き世帯増加に伴う女性が活躍しやすい職場環境づくりに取り組む事業主を助ける制度です。両立支援等助成金の内容や、助成金が生まれた背景などについても説明します。

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金は職業生活と家庭生活が両立できる職場環境づくりに取り組む事業主を支援する制度です。両立支援等助成金は、時代の要請に応じてその内容が変遷しているのが特徴です。

内閣府男女共同参画局の平成30年度の調査によれば、平成9年を境として全雇用者世帯に占める共働き世帯数が、男性雇用者と無業の妻からなる世帯数を上回りました。平成30年は、1829万世帯のうち共働き世帯数は1188万世帯です。男性の所得だけでは家計を支えきれない様相が透けて見えます。そこで仕事と育児や介護の両立をサポートする制度が強く求められています。

両立支援等助成金の概要

2020年度には育児や介護による退職者の再雇用を促進するための「再雇用者評価処遇コース(カムバック支援助成金)」がありましたが、2021年度はなくなりました。一方で2021年度には、新型コロナウイルス感染拡大に伴う「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース」と「小学校休業等対応助成金」、および出生率低下をうけて「不妊治療両立支援コース」が新設されています。

2020年度から引き続きあるのは、「出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)」、「介護離職防止支援コース」、「育児休業等支援コース」、「女性活躍加速化コース」、「事業所内保育施設コース」の5つのコースです。

両立支援等助成金取得における中小企業とは?

両立支援等助成金にかぎらず厚生労働省関連の助成金は、経営環境が厳しい中小企業の場合、助成額が多かったり、中小企業だけに支給されたり、要件が緩やかであったりします。中小企業の範囲は以下のとおりです。

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引用:厚生労働省「2021年度両立支援等助成金のご案内」リーフレット

両立支援等助成金|8つのコース

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2021年度の両立支援等助成金には8つのコースがあります。

  1. 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
  2. 介護離職防止支援コース
  3. 育児休業等支援コース
  4. 女性活躍加速化コース
  5. 事業所内保育施設コース
  6. 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置に関する助成金(休暇取得支援コース・休暇制度導入助成金)
  7. 不妊治療両立支援コース
  8. 小学校休業等対応助成金

気になるのが、2022年度の両立支援等助成金の動向です。厚生労働省の「2022年度(令和4年度)の予算概算要求の主要事項」によれば、両立支援等助成金に関わる「女性活躍・男性の育児休業取得等の促進」に関わる予算概算要求額は2021年度が193億円、2022年度が178億円となっています。

細かい項目や要件については不明ですが、2020年度からのコースや新型コロナウイルス感染拡大に関するコースも引き続き継続すると予想されます。決定次第対応できるように準備しましょう。

5)の「事業所内保育施設コース」は、事業所内保育施設を設置、運営、増築する事業所を対象とした助成金ですが、平成28年4月1日より新規受付を停止しています。

両立支援等助成金の8つのコースうちから利用促進が期待される1)出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)、2)介護離職防止支援コース、3)育児休業等支援コース、4)女性活躍加速化コースを取り上げて、支給額や注意点などを説明します。

両立支援等助成金|出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

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「出生時両立支援コース」は「子育てパパ支援助成金」ともいわれます。平成28年度の男性の育児休業取得率は、民間企業が3.16%と低水準です。諸外国と比較しても、米国の夫が1日当たり3時間10分家事・育児関連の時間を費やしているのに対して、日本では1時間23分にすぎません。

こうしたデータを背景に、共働き世帯の男性労働者が育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場環境をつくるために取り組む必要があるといえます。

育児休業取得の場合は、実際に子の出生後8週間以内に連続14日以上(中小企業は連続5日以上)を男性労働者が取得する必要があります。育児目的休暇は新たに制度を導入し就業規則などに規定したのち、男性労働者が子の出生前6週間から出生後8週間の間に合計8日(中小企業は5日)以上所定労働日に対して休暇を取得します。

※出生時両立支援コースの支給額※

中小企業に支給される額は、大企業などの倍額です。個別支援加算は、男性が育児休業を申し出るまでに個別面談を行うなど、育児休業の取得をサポートする取り組みをした場合に支給されます。( )内は生産性要件を満たした場合です。

【中小企業の支給額】

育児休業 男性の育休取得者 中小企業
1人目

※1

57万円(72万円)
個別支援加算:10万円(12万円)
2人目以降
※2
5日以上の育休 14.25万円
(18万円)
14日以上の育休 23.75万円
(30万円)
1か月以上の育休 33.25万円
(42万円)
個別支援支援加算:5万円(6万円)
育児目的休暇 1事業主
1回限り
28.5万円(36万円)

※1 「1人目」の金額が適用されるのは、14日以上(中小企業は5日以上)の育児休業を取得した男性が初めて出たときの1回限りです。
※2 過去に14日以上(5日以上)の育児休業を取得した男性がいた事業主は「2人目以降」の金額が適用されます。

【中小企業以外の支給額】

育児休業 男性の育休取得者 中小企業以外
1人目 28.5万円(36万円)
個別支援支援加算:5万円(6万円)
2人目以降 14日以上の育休 14.25万円
(18万円)
1か月以上の育休 23.75万円
2か月以上の育休 33.25万円
(42万円)
個別支援支援加算:2.5万円(3万円)
育児目的休暇 1事業主
1回限り
14.25万円(18万円)

引用:厚生労働省「【2021】両立支援等助成金パンフレット_0914.indd」P3

※出生時両立支援コースの注意点※

・育児休業等支援コース(育休取得時・職場復帰時)との併用不可。
・男性労働者の休業等開始前に育児休業制度などを労働協約または就業規則に定めること。
・次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、労働局へ届出。
・対象の男性労働者を育児休業または育児目的休暇の取得日から支給申請日まで、雇用保険被保険者として継続して雇用していること。
・育児目的休暇制度については平成30年3月31以前にすでに導入している事業主は支給対象にならない。

両立支援等助成金|介護離職防止支援コース

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介護離職防止支援コースは中小企業のみが対象です。介護をしながら仕事をする労働者のための「介護休業取得」と「職場復帰」、「介護両立支援制度」と3つの種類があります。また「新型コロナウイルス感染症対応特例」も注目すべき制度です。

「介護支援プラン」を作成し、労働者の円滑な介護休業の取得や職場復帰に取り組み、労働者が実際に介護休業を取得するか、介護のための柔軟に就業できる介護両立支援制度を利用した事業主に助成金が支給されます。介護休業取得では対象労働者が合計5日以上の休業取得が要件です。

「介護両立支援制度」では、
①所定外労働制限制度
②時差出勤制度
③深夜業の制限制度
④短時間勤務制度
⑤介護のための在宅勤務制度
⑥(法を上回る)介護休暇制度
⑦介護のためのフレックスタイム制度
⑧介護サービス費用補助制度
がありますが、内容によって申請期限が異なりますので注意が必要です。

「新型コロナウイルス感染症対応特例」は、労働者が家族の介護のために5日以上特別に設けた有給休暇を取得したときに助成金が支給されます。

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引用:厚生労働省「【2021】両立支援等助成金パンフレット」 P15

※介護離職防止支援コースの支給額※

[1]~[4] いずれの場合も1事業主1年度5人まで支給されます。( )内は生産性要件を満たした場合です。

支給額 支給人数/回数
[1]休業取得時 28.5万円(36万円) 1年度5日まで
[2]職場復帰時 28.5万円(36万円) 1年度5日まで
[3]介護両立支援制度 28.5万円(36万円) 1年度5日まで
[4]新型コロナウイルス感染症対応特例 (1)休暇取得日数が合計5日以上10日未満 20万円 (1)(2)合わせて1事業主5人まで
(2)休暇取得日数が合計10日以上 35万円

引用:厚生労働省「【2021】両立支援等助成金パンフレット_0914.indd」P14

※介護離職防止支援コースの注意点※

共通する注意点は、介護支援プランによって制度を労働者に周知させることと、申請時に雇用保険被保険者であることです。継続雇用の期間については、制度によって要件が異なりますので注意しましょう。また制度について労働協約または就業規則に定めることが必要です。
休業取得時
・対象となる労働者と面談のうえ、「面談シート兼介護支援プラン」に記録し、介護支援プランを作成。

職場復帰時

・職場復帰後に介護休業取得者とフォロー面談を行ったのち記録。
・職場復帰後、原則として休業前に就いていた職務に復帰させること。

介護両立支援制度

・介護支援プランにより介護と仕事の両立を支援するという方針の周知は支援制度実施開始日の前日までに行う。周知は、社内報やメールなどによる方法がある。
・同一労働者について同一の介護両立支援制度に係る申請は1回限り。

新型コロナウイルス感染症対応特例

・新型コロナウイルス感染症への対策として、育児・介護休業法上の介護休業、介護休暇、年次有給休暇とは別の介護に関する有給休暇制度を20日以上設けて周知すること。

両立支援等助成金|育児休業等支援コース

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育児休業等支援コースのなかで「1 育休取得時」「2 職場復帰時」「3 代替要員確保時」「4 職場復帰後支援」は中小企業が対象です。「5 新型コロナウイルス感染症対応特例」は2021年度に導入された制度で、すべての事業主が対象となっています。

「1育休取得時」「2職場復帰時」では、「育休復帰支援プラン」を作成し、労働者の育児休業の取得や職場復帰に取り組み、労働者が育児休業を取得した事業主に支給されます。以下は支給申請までの流れです。

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引用:厚生労働省「【2021】両立支援等助成金パンフレット_0914.indd」P43

※育児休業等支援コースの支給額※

( )内は生産性要件を満たした場合です。

支給額 支給人数/回数
[1]育休取得時 28.5万円(36万円) 1事業主2回まで(無期雇用者・有期雇用者各1回)
[2]職場復帰時 28.5万円(36万円)
職場支援加算:19万円(24万円)
1事業主2回まで(無期雇用者・有期雇用者各1回)
[3]代替要員  確保時 47.5万円(60万円)
有期雇用労働者加算:9.5万円(12万円)
原則1年度延べ10人、5年間
[4]職場復帰後  支援 子の 看護休暇 制度導入時※1 28.5万円(36万円) 1事業主1回
制度利用時 1,000円(1,200円)×時間 1事業主5人まで※2 (1年度200時間(240時間)まで)
保育サービス 費用補助 制度導入時※1 28.5万円(36万円) 1事業主1回
制度利用時 事業主負担額の3分の2 1事業主5人まで ※2 (1年度20万円(24万円)まで)
[5]新型コロナウイルス感染症対応特例 5万円※3 1事業主延べ10人まで(上限50万円)

引用:厚生労働省「【2021】両立支援等助成金パンフレット_0914.indd」P42

※育児休業等支援コースの注意点※

・育休復帰支援プランに基づき、労働者が育児休業を実際に取得すること。
・育児休業取得者の代替要員を確保すること。
・子の看護休暇・保育サービス費用補助など、育休復帰後の労働者の支援への取組を実施すること。
・新型コロナウイルス感染症の影響による小学校等の臨時休業等により子どもの世話をする労働者のために特別休暇制度等を導入し、労働者が特別休暇を取得すること。

両立支援等助成金|女性活躍加速化コース

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女性活躍加速化コースは女性の活躍推進に取り組む事業主を支援する制度で、中小企業が対象です。ただし、このコースの中小企業は常時雇用する労働者数が300人以下の事業所となります。

女性活躍推進法に沿って、女性労働者の能力の発揮や雇用の安定を目指すものです。女性の活躍状況を把握し、男性との比較において女性の活躍に関して改善すべき事情の解消に向けて目標を掲げます。その後女性が活躍しやすい職場環境の整備などに取り組み、数値目標を達成した事業主に支給される助成金です。

※女性活躍加速化コースの支給対象となる数値目標※

いずれも取組前と取組後の数値がわかる書類の写しが必要です。
・採用における女性の競争倍率(応募者数/採用者数)を引き下げる。
・採用において、女性の採用人数を増加させる。

※女性活躍加速化コースの支給額※

1事業主1回限りで、( )内は生産性要件を満たした場合です。
47.5万円(60万円)

両立支援等助成金を利用して優秀な人材を確保

両立支援等助成金は共働き世帯の増加や少子高齢化を背景に、ますます利用促進が期待される助成金です。優秀な人材の育児や介護での離職防止を支援するだけでなく、職場環境を整備することで、新たな人材獲得にも繋がる可能性があります。

毎年制度や要件が変更になり提出書類も多く複雑であることから、支給申請を確実に行うためには、社会保険労務士に相談することをおすすめします。

きわみ事務所には助成金制度に精通した社労士が在籍しています。申請についてもすべてお引き受け可能ですのでぜひお問い合わせください。

企業の教科書
竹内 欣士
記事の監修者 竹内 欣士
弁護士、社会保険労務士

知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく、人の世は住みにくい(夏目漱石「草枕」)。
日々、知識を活かす智恵こそが大切だと痛感しています。知を重んじつつ頼らない。情を大切にしつつ流されない。意地を胸に秘めつつ通さない。そのバランスを図りながら、依頼者に寄り添う「身近な相談相手」を目指してまいります。

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