補助金・助成金

助成金相談は税理士・社労士のどちらへも依頼すべき理由・メリット

助成金相談は税理士・社労士のどちらへも依頼すべき理由・メリット

助成金とは、政府や各自治体が事業主・個人へ支給する返済不要のお金です。資金繰りに苦しむ中小企業にとって有効な資金調達になりますが、助成金を申請するには就業規則の改定やその他細かい手続きが必要です。

助成金関連の専門家といえば、よく税理士や社労士(社会保険労務士)が挙がります。「税理士と社労士のどちらに依頼すればよいのか」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。結論としては税理士・社労士のどちらにも依頼することで、助成金申請やその後の活用までスムーズに進みます。

当記事では税理士・社労士の違いや助成金関連を双方に相談するメリット、依頼の際の注意点、2022年度も使える助成金制度などを解説します。

税理士と社労士の違い|助成金関連を独占業務とするのは?

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独占業務とは、「特定の資格を持つ人しかできない仕事」です。税理士は税法関係、社労士は労働法や保険法関係についての独占業務を行えます。

助成金申請は労働関係の手続きになるため、申請自体を代理できるのは社労士のみです。以下では税理士と社労士それぞれの役割を解説します。

税理士の業務は税務署関係の手続きや税務・経営相談

税理士とは所得税法・法人税法・相続税法などの税がかかわる法律関係の、申請代行や具体的な相談などを行う専門家です。税理士以外がこれらの独占業務を行うと、法律違反になります(無償独占業務)。

税理士の独占業務は次のとおりです。

税理士の独占業務 概要
税務の代理 確定申告手続きの代行や税務に関する納税者の代弁など
税務書類の作成 確定申告書に関する書類の作成代行など
税務相談 税務に関する申告や書類作成に関する具体的な計算や相談など

税理士は独占業務以外にも、税金・財務関連の知識や経験を生かしたコンサルティングも行えます。たとえば銀行からの融資関係や経費削減、節税に関するアドバイスです。

2019年度に財務省が公表した「令和2年事務年度 国税庁実績評価書」によると、企業の税申告における税理士の関与率は法人税で89.4%と、法人のほとんどが税理士に税務を依頼していると結果が出ました。

社労士の業務は助成金申請やその他労働保険に関わる相談

社労士とは、労働者の雇用・労災保険・健康保険・年金などがかかわる法律関係の、代行申請や具体的な相談を受け付ける専門家です。助成金関連の申請や書類作成を有償で引き受けられるのは社労士のみになります。

社労士の独占業務は次のとおりです。

社労士の独占業務 概要
労働および社会保険に関する代理 助成金手続きやその他労働・社会保険関連の手続きの代行
労働および社会保険に関する書類の作成 助成金の申請書類や就業規則、労働者名簿、賃金台帳などの作成代理
紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士のみ) 解雇や雇い止め、労働条件、悪質な職場環境などに関する紛争関連のサポート

社労士は上記以外の独占業務にも、人事・労務・保険・年金に関する知識・経験を生かしたコンサルティングを行えます。たとえば高年齢者の雇用や年金関係、育児・介護休業の適用に関するアドバイスです。

とはいえ社労士の独占業務は税理士とは違い、報酬をさえ受け取らなければ、社労士資格がない人が代理・書類作成を行っても法律違反にはなりません(有償独占業務)。

しかし労働・社会保険関連の法律のスペシャリストとして国から認められた社労士以外に、経営のコアとなる助成金・労働保険関連を依頼するのは高リスクといえます。

【補足】補助金の申請関係は士業以外でも代行可能

助成金とならび、中小企業・小規模事業者の資金繰りとして活用されるのは補助金です。補助金とは政府や各自治体が掲げる目標に合う事業を行う事業主へ、金銭的な支援を行う制度です。

補助金の申請・書類作成に関する代理について、独占業務とする資格はありません。税理士や社労士以外にも、中小企業診断士・行政書士・士業以外のコンサルティング会社・金融機関・商工会などへ関連業務を依頼できます。

助成金を活用するには税理士・社労士の両方への依頼!理由やメリット

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助成金をうまく活用するには、社労士と税理士の両方への相談をおすすめします。助成金関係は社労士の独占業務ですが、助成金支給前後の経営判断の見極めや、財務状況に応じた助成金活用のアドバイスは、税理士の得意分野であるためです。

以下では税理士と社労士に相談する理由・メリットを具体的に解説します。

税理士に依頼する理由①|助成金活用の具体案を相談できる

助成金申請に必要な就業規則の作成やその他の労務関連の相談は社労士の分野です。しかし社労士は資金調達や事業計画などの財務・経営に関する部分には、原則として関与しません。

つまり社労士だけでは、「支給された助成金をどう使うか」「効果的な事業計画とは何か(採用計画や設備導入など)」といった具体的なアドバイスに対応できないケースがあります。

全国社会保険労務士会連合会が公表した「社労士のニーズに関する企業向け調査結果について」によると、社労士を利用する企業は56.4%と税理士と比べると低い数値です。そのうちの相談内容も雇用や賃金、年金など、財務とは違う部分での相談がほとんどを占めています。

一方、企業の税務を担当できる税理士は、税申告に必要な資金繰り・会計情報や経営計画などに関する知見を持ちます。

そのため支給された助成金をどう使うべきかの具体的なアドバイスや、事業計画策定に必要な試算表の作成などが可能です。

以上のことから、助成金の手続きに関しては、具体的な手続きを社労士に依頼する前に、税理士へ相談することをおすすめします。助成金以外にも、効果的な融資制度や補助金制度の情報を聞ける可能性もあります。

税理士に依頼する理由②|受給額の上乗せができる場合がある

助成金を税理士に相談することで、受給額の上乗せができることがあります。

助成金によっては一定の条件を満たせば基本の受給額に金額を上乗せして受け取ることができます。たとえばキャリアアップ助成金の場合、中小企業の通常の受給額が一人あたり57万円に対し、上乗せ後は72万円に増額。対象が複数人いる場合は、全体で100万円以上増えることもあります。

そしてこの上乗せの条件が「生産性要件」と呼ばれ、3年度前に比べて生産性が一定数伸びていることが求められます。

この生産性の判断は財務情報をもとに判断するため、財務のプロである税理士の専門分野といえます。
社労士は助成金申請のプロですが、財務の専門家ではありません。税理士と社労士の連携によって、受給額の総額が期待できます。

助成金関連の申請の準備は社労士に依頼する

税理士と助成金の使い方や事業計画について内容を詰めた後は、作成した事業計画をもとに社労士へ助成金関連の手続きを依頼しましょう。

助成金の申請は事業主だけでもできます。しかし、助成金申請には用意すべき書類が多いうえに、事業計画内容や書類の不備があると審査に通りません。

助成金申請・支給や事業計画書作成に必要な情報は次のとおりです。

  • 助成金申請に関する申請書
  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 給与台帳や給与明細
  • 雇用保険に関する書類
  • 従業員の出勤に関する書類(帳簿・タイムカード)
  • 会計書類(貸借対照表・損益計算書など)
  • 証憑書類関係(請求書・領収書など)
  • その他受けようとする助成金に応じて必要なもの など

上記の必要書類を正確に準備・作成・提出ができるよう、人事・労務・助成金に関する専門家である社労士への代理依頼がおすすめです。

税理士・社労士のどちらも在籍する事務所へ依頼しよう

士業事務所の中には、税理士と社労士が同時に在籍、または税理士と社労士が提携している事務所があります。

そうした事務所を利用することで、経営の見直しから助成金申請までを、1つの事務所に依頼するだけで完結できます。また税理士・社労士の間での意思疎通もスムーズに進むため、事業計画の策定や手続きがよりスムーズになるでしょう。

助成金の相談を税理士・社労士にする前に見ておくべき注意点

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税理士・社労士へ具体的な相談をする前に、以下の注意点を確認しておきましょう。

普段から労務や財務関係の記録・管理・運用を不備なく行う

問題なく助成金を受け取るには、普段の事業活動において、労務や財務の記録・関係・運用に不備がない必要があります。労働保険法や税法に違反する事業者は、原則として助成金制度は利用できません。

自社は支給条件を満たしているのか、以下にあるおおまかな助成金の支給条件を確認しておきましょう。

  • 雇用保険適用事務所の事業者になっているか
  • 労働保険料を納め、帳簿付けをしているか
  • 給料・残業代未払いや違法な就労などの悪質な経営実態がないか
  • 事業計画策定用の会計・財務状況は整理されているか
  • 過去に助成金の不正受給を受けていないか
  • 助成金の支給要件を満たす事業計画を遂行できる事業体力があるか など

経営ビジョンやスケジュールを明確にしておく

具体的な事業案や計画は社労士・税理士と話し合う必要があるものの、相談する前にはある程度ドラフト案をまとめておきましょう。闇雲に「とりあえず助成金がほしい」と相談した場合、いくら専門家であっても具体的な提案ができません。

たとえば、以下の項目に関して明確にしておくことをおすすめします。

  • 事業で使えるお金や依頼料などに関する予算関係
  • 従業員の数・給与額
  • 就業規則や労働契約関係の資料または写し
  • 経営活動や会計関係の資料または写し
  • 現在の事業の問題点や改善したい点
  • 活用したい助成金制度の大まかな選定
  • 事業計画の大まかなスケジュール

依頼にかかる費用関係も検討する

社労士や税理士へ支払う費用についても、事前に調査・検討しておきましょう。助成金申請に関係する依頼料の、大まかな相場は次のとおりです。

費用が発生する依頼 料金の相場
社労士への助成金代行依頼
(社労士提携税理士事務所も含む)
  • 助成金の受給額の10~15%
  • 支給されないときは無料のところも多数
  • 就業規則作成・変更が必要なときは+2~5万円

また、社労士への助成金申請に伴って、顧問契約や税理士への相談を検討する場合もあるでしょう。参考までに依頼料の相場は以下のようになっています。

費用が発生する依頼 料金の相場
社労士の顧問料
  • 2万円~/月
  • 従業員数によって変動
税理士への税務相談等
  • 1万円/時間
  • 事業計画作成:3万円~/回
税理士の顧問料
  • 売上1億円未満:2~3万円/月
  • 売上1億円以上:5万円/月

詳細な料金は各事務所の設定によります。本格的な依頼前に無料相談や見積り依頼を行いましょう。

【2022年】中小企業の経営者が活用できる助成金制度

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ここからは中小企業の経営者が活用できる、主な助成金制度を解説します。

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用・有期雇用の従業員の給与や待遇を改善することで受け取れる支援金です。キャリアアップ助成金には、主に以下のコースが存在します。

正社員化コース:有期雇用・無期雇用の労働者を正規雇用労働者に転換したときに、1人につき28万5,000円または57万円助成(対象が障害者の場合は45~120万円)

処遇改善関係コース:有期雇用労働者の賃上げや手当制度共有などを行うことで、1人あたり数万~数十万円助成

キャリアアップ助成金については、以下の記事で詳しく解説しています。

雇用調整助成金

雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動を縮小した際、雇用調整(休業や出向など)で雇用を維持しようとする事業者が受け取れる支援金です。支給額は休業させた従業員に支払った休業手当などの金額に応じて決まります。

2022年3月末までは、通常よりも助成額が上乗せされたコロナ特例措置が適用されています。新型コロナウイルスの影響を受けた経営者は支給対象か確認してみてください。

雇用調整助成金については、以下の記事で詳しく解説しています。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、従業員に知識や技能習得のための職業訓練・研修にかかる経費や、訓練中の従業員の賃金を助成する制度です。訓練等を実施した結果、企業の生産性が上がったと認められたときに支給されます。

人材開発支援助成金の主なコースは次のとおりです。

特定訓練コース:正社員に厚生労働省の認定を受けたOJT付きの訓練や効果的な訓練を10時間以上実施したときに助成
一般訓練コース:正社員に特定訓練に該当しない職業訓練等を20時間以上実施したときに支給
教育訓練休暇付与コース:有給教育訓練休暇等制度を導入し、実際に従業員が休暇と訓練を実施したときに支給
特別育成訓練コース:有期契約労働者などの人材育成に取り組んだときに支給
障害者職業能力開発コース:障害者の訓練に関して施設設置・訓練運用をしたときに支給

人材開発支援助成金については、以下の記事で詳しく解説しています。

両立支援等助成金

両立支援等助成金とは、働きながらの出産や子育てを行う労働者を雇う事業主を支援する助成制度です。育児休業等を支援するコースや、男性の育休取得を支援するコースなどがあります。

両立支援等助成金やその他出産・育児に関する助成金・給付制度は、以下の記事で詳しく解説しています。

助成金の申請や活用をお考えのときは税理士と社労士に相談を!

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助成金申請は社労士の独占業務ではあるものの、事業計画策定に必要な財務・会計については、税理士のほうが詳しいケースがほとんどです。「受給額アップの判断や申請前の資金繰り、助成金の使い方は税理士」「実際に助成金を申請する際は社労士」と使い分けることをおすすめします。

どちらの専門家にも依頼することで、複雑かつ時間のかかる助成金申請をスムーズに進められるうえに、助成金を受け取りやすくなります。

きわみグループであれば、グループ内に税理士法人と社会保険労務士法人がいるため、手間なくスムーズに手続きが可能です。受給額を最大化するノウハウをもった、助成金に詳しい税理士と社労士が在籍していますので、面倒な申請手続きからすべて任せることができます。相談無料ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

企業の教科書
竹内 欣士
記事の監修者 竹内 欣士
弁護士、社会保険労務士

知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく、人の世は住みにくい(夏目漱石「草枕」)。
日々、知識を活かす智恵こそが大切だと痛感しています。知を重んじつつ頼らない。情を大切にしつつ流されない。意地を胸に秘めつつ通さない。そのバランスを図りながら、依頼者に寄り添う「身近な相談相手」を目指してまいります。

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