税金・税務

認定支援機関って何?事例を交えて徹底解説!

認定支援機関って何?事例を交えて徹底解説!

税理士は聞いたことがあるけど、認定支援機関は聞いたことがない人がほとんどではないでしょうか。

この記事では、認定支援機関とはどんなところなのか、税理士とどんな関係性があるのか、どんな業務をしてくれるのかをご紹介していきます。

認定支援機関とは?

認定支援機関は、銀行などの金融機関と会計事務所の架け橋的存在で、中小企業に専門性の高い支援を行うために創られた支援機関です。一般的には「経営革新等支援機関」と呼ばれています。

専門性が高い証

認定支援機関は、税理士として認められた支援機関だといえます。なぜなら、税理士としての専門知識や実務経験が、国が定めた基準以上の支援機関しか登録されないからです。

認定支援機関の認定制度は、下記のように定義されています。

近年、中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業支援を行う支援事業の担い手の多様化・活性化を図るため、平成24年8月30日に「中小企業経営力強化支援法」が施行され、 中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。

認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、経営革新等支援機関として認定することにより、 中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです

引用元:経営革新等支援機関認定制度の概要

認定支援機関で受けられる4つの支援とは?

認定支援機関で受けられる支援は、大きく分けて4つあります。

  • 補助金の申請
  • 資金調達
  • 経営改善計画策定支援
  • 税制待遇

これからご紹介していく4つの経営支援は、すべて認定支援機関が関わっていないと利用できないので注意してください。

認定支援機関でできること①補助金の申請

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認定支援機関では、ものづくり補助金と事業承継補助金の申請ができます。

ものづくり補助金は、「ものづくり中小企業支援」といわれている経営サポートです。中小企業や個人事業主が、認定支援機関と連携して、サービス開発をしたり試作品開発をしたり、生産業務の改善を行ったりする設備投資を支援するための補助金です。

事業承継補助金は、事業承継をきっかけに新しい経営方針を打ち立てたり、事業を違う角度から取り組んだりする、地域貢献型の中小企業に行われる支援です。年々、事業承継による補助金の支援は拡大されているので、注目を浴びています。

認定支援機関でできること②資金調達

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認定支援機関では、金利を優遇して、資金調達の支援も受けることができます。資金の調達先は、日本政策金融公庫と信用保証協会です。

日本政策金融公庫では、中小企業経営力強化資金として資金調達が行われ、信用保証協会では、経営力強化保証制度を利用するときに資金調達が行われます。

日本政策金融公庫と信用保証協会の詳しい内容は、別記事で紹介しているので、そちらを参考にしてみてください。

認定支援機関でできること③経営改善計画策定支援

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認定支援機関では、経営改善計画策定支援ができます。

支援のタイプは2種類あります。経営改革計画策定支援事業と、早期経営改善計画策定支援事業の2種類です。

経営改善計画策定支援事業とは、経営改善計画にかかる費用の2/3を支援してくれる国の制度です。早期経営改善計画策定支援事業とは、策定支援を行う認定支援機関の専門家への支払費用の2/3を負担してくれる国の制度です。

大きな違いは、上限額にあります。

  • 経営改革計画策定支援事業:負担上限額200万円
  • 早期経営改善計画策定支援事業:負担上限額20万円

経営計画では企業の計画支援、早期経営計画では専門家へのモニタリング費用を含んだ支援が、上限金額として設定されていることを覚えておいてください。

認定支援機関でできること④税制待遇

認定支援機関では、税制待遇もしてくれます。税制待遇は、大きく分けて3つの税制に分かれています。

  • 先端設備等導入計画
  • 所得拡大促進税制
  • 事業承継税制

先端設備等導入計画は、生産性向上特別措置法において設定された、中小企業および個人事業主等が、設備投資を通じて労働生産性の向上を図るための計画です。

計画の認定を受けるためには、所在している市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けていて、認定支援機関からの事前確認を受けた計画でなければいけません。認定を受けたら支援措置を受けることができます。

所得拡大促進税制は、青色申告をしている中小企業者が、一定の条件下で給料などの支給額を増額させたときに、増額した一部を税額控除できる制度です。法人であれば法人税、個人事業主であれば所得税から控除されます。

税金控除額は、一般的に前年度の法人税額か所得税額の約20%が上限となることが多いです。

事業承継税制は、別の記事で解説しているので、そちらを参考にしてみてください。

認定支援機関の補助金報酬を受け取る3つのステップ

実際に、認定支援機関で補助金報酬を受け取るための、3つのステップをご紹介していきます。

      • 申請手続き
      • 受給手続き
      • 報告手続き

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一般的には、上記の流れで手続きを進めることが多いので、順番に読み進めていってください。

認定支援機関で補助金を受ける手順①申請手続き

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申請手続きの中には、申請→採択という手続きの流れがあります。

申請書の作成支援から採択までで、着手金として5〜10万円を設定しておき、補助金の約10%程度を成功報酬としてもらうのが、認定機関としては一般的なようです。

着手金の料金は、最低報酬額を設定している認定機関も数多く見受けられます。例えば、最低報酬を5万円と決めていたら、5万円以下では申請手続きを行わないという感じです。

申請時の着手金は曖昧な認定機関も多いので、申請時に目安の金額を聞いておいてもいいかもしれませんね。

認定支援機関で補助金を受ける手順②受給手続き

受給手続きの中には、交付申請→交付決定→事業期間→補助金支給という手続きの流れがあります。

補助金の受給には、決められたスケジュールを必ず守ることが条件となっています。要は、各スケジュールの期限を守るということです。スケジュールを守れなかったら、補助金を支給してもらうことはできません。

認定支援機関側は、スケジュールや資料を申請者と共有します。無理なく進められるスケジュールになっているか、問題は起きていないかといったことを確認しながら準備を進めていきます。

つまり、事業期間に無理なく進められるような計画書ができてから、交付が決定して事業期間に移ります。そのため、申請手続きから受給手続きを終えるまでにかかる期間は、一般的に最短で約9ヶ月、長引けば1年以上になることもあるのです。

期間の影響もあり、事業者の中には、申請手続きから受給手続きのやり取りが面倒に感じてしまい、途中辞退してしまう人もいるようです。

受給手続きまでの流れが、短期間で済むことはないと覚えておいてください。

認定支援機関で補助金を受ける手順③報告手続き

報告手続きでやることは、事業化報告だけです。

補助金が支給されたら、事業者は毎年一度、補助金対象の事業の業績報告をする義務が発生します。期間は5年間と決まっているので、合計5回の業績報告をする義務が発生します。

事業化報告書の作成は、認定支援機関が分かりやすくサポートしてくれます。しかし、計算方法はルールが決まっているので、計算方法をあなたも理解した上で、取り組んでいくと、効率的に手続きを進めることができます。

経営革新等支援業務の事例

ここまでは、認定支援機関の基本的な説明をしてきました。次に、認定支援機関が行なっている実際の業務事例を、3つ見ていきましょう。業務事例を見ることで、一連の流れがよりイメージしやすくなります。

認定支援機関①:一般財団法人旭川産業創造プラザ 事業者名:株式会社オノデラ様

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開発に向けた実施項目の整理等を通じ、除雪機巻き込み事故を防ぐ製品開発を支援

経緯:地域課題解消に向け新製品開発に取り組む企業を支援

旭川市を中心とした北北海道地域の企業に対して、同機関は、「ものづくり」「販路拡大」「創業」「産学官連携・ 新産業創出」「人材育成」「食クラスター推進(食品製造・食品加工・衛生管理の支援等、食に特化した支援)」の6分 野での支援を実施している。

建設機械用部品を製造する株式会社オノデラ(以下、同社)との関係は、以前に「除雪作業用プラウ(除雪用建 機の前方にある雪を押し出す部位)」の改良に取り組む同社の紹介を受け、支援したことに始まる。

その後、同 社は地域の課題であった除雪用建機の運転手の視界不良により毎年発生する「人の巻き込み事故」を防ぐため の新製品開発を検討していた。

その中で、製品の一部を透明にすることで、視界不良を改善しようと考えた際に、 再び同社から同機関に支援依頼があり、新製品開発の支援を行うことにした。

支援内容:開発に向けてスケジュールと必要な項目の整理を提案

まず、開発期間も限られていたことから、同社の新製品を開発する上で、試作機開発までの全体のスケジュー ルを作成する必要があると提案するとともに、北海道立総合研究機構工業試験場での試験などの開発完了まで に必要な工程や項目を明確化した。

また、透明化することで従来製品と比べ、強度や耐久度が劣っているように見える可能性があると指摘し、 定量的に従来製品と同等の強度や耐久度があることを示すことができれば、販売時に従来製品に対する優位性 を明確化できるのではないかとアドバイスを行った。

成果・効果:新製品開発に成功し、取引先の確保にも繋がる

同機関による開発にかかるスケジュール管理などのサポート支援により、必要な試験工程を踏まえ、研究開 発において必要な検討項目を認識した同社は、品質の維持等も担保できた新製品の研究開発に成功。

開発後には、 展示会への出展の提案や、展示会内やホームページ・SNSの広報として動画を用いた同社製品のアピールの提案など、販路獲得に向けた支援も提供した結果、北海道以外の地域の大手建機メーカー等へも同社製品をアピー ルすることができ、取引にも繋がった。

今後の取組:新製品開発だけでなく、新たに販促面での支援も展開

これまで、ものづくり関連の新製品開発を主に支援してきたが、今回のように販促上の支援も併せて期待し ている中小企業等は多いのではないかと考えている。

今後は、展示会や異業種交流会、及び、他地域の事業者等 との交流会を積極的に開催し、中小企業等の販路拡大に向けた支援を提供していきたいと考えている。

引用元:中小企業・小規模事業者支援 優良取組事例集

認定支援機関②:一般社団法人中小企業診断協会北海道 事業者名:ジオ株式会社様

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異分野である「食の市場」の立上げを複数機関で連携して具体化

経緯:異分野への挑戦に対し、事業内容の具体化等を支援

商店街振興組合、産業振興財団、信用保証協会、金融機関等の他、大手民間企業の計44機関で構成される北海 道ビジネス創造連携プラットフォーム(以下、同プラットフォーム)に所属する中小企業診断協会北海道(以下、同会)、及び、網走信用金庫(以下、同金庫)と、硝子商品製造等を行うジオ株式会社(以下、同社)との関係は、以前に同社から同会の山崎氏(以下、同氏)に、新商品開発にかかる設備導入の経営相談があったことに始まる。

その後、食の市場を立上げる新たな事業に関する相談を受けたところ、新分野への参入であることから、事 業内容の具体化が図れておらず、また、店舗の改装費用を調達する必要もあったため、同会は同金庫と連携し、 資金調達に関する支援も含めた新事業展開の支援を行うこととした。

支援内容:商品コンセプトや集客方法等をアドバイス

まず、商品コンセプトの設計に取り組んだ同社に対して、より多くの顧客に訴求するものとするため、同会 より「この地に来訪しなければ出来ないものを提供することが重要である」と助言し、コンセプト設計を支援した。

また、集客方法について、近くに年間数十万人が来訪する道の駅が存在することから、顧客を誘導するこ とを目指した企画の検討を提案した。

また、同金庫からは、一般的な海産食材の単価や販売点数、及び、年間の道の駅の来客数から見込まれる顧客 数等を用いて売上予測を立てることを提案するとともに、一般的な海産食材の単価や販売点数等の市場データを提供した。

成果・効果:店舗の改装を実現し、立上げ時期の見通しも明確化

商品コンセプト・販促企画の他、売上見通しの明確化支援により、食の市場の事業内容を具体化できた同社で は、同金庫の融資見込みも立ち、店舗の改装も実現。結果、平成27年のゴールデンウィークに新事業が立上が る見通しも立った。

今後の取組:民間の構成機関も巻き込んだ連携支援を強化

同会や同金庫が所属する同プラットフォームでは、経営相談の場において、ベンチャーキャピタルやIT企 業などの民間の構成機関がその分野で事業を行っている場合には同席し、実務を知る立場からより実行性の高 い助言を実施できるようにする等、具体的な仕組みの検討を開始している。

このように、様々な課題に対応出来るよう、構成機関間の連携支援を強化していきたいと考えている。

引用元:中小企業・小規模事業者支援 優良取組事例集

認定支援機関③:平野陽子(中小企業診断士) 事業者名:株式会社美幌石材様

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売上拡大に向けた赤錆除去装置の開発に対し、他事業者との連携体制作り等を提案

経緯:売上拡大に向けた新事業立上げへの挑戦を支援

主に北海道で中小企業や小規模事業者に、事業計画の策定、新事業展開、廃業、M&A等多岐に渡る支援を提 供している同機関と、主に墓石の製造・販売を営む株式会社美幌石材(以下、同社)とは、同機関が新規事業の支援事例について講演したセミナーに、同社が参加していたことを契機に知り合った。

セミナー後、既存事業の先行き不安から売上の拡大を目指すため、新規事業として検討していた「赤錆除去装置の製造・販売事業(以下、同事業)」について相談を受けた。

そこで、同事業の試作品開発に向けて小規模事業活性化補助金(以下、同補助金)の活用を提案し、資金面のサポートも見据えた新規事業立上げの支援を提供することにした。

支援内容:外部との連携を提案し、計画の採算性等についても精査

まず、事業実施にあたって、①同事業が同社にとっては新分野での取組であり、「独立行政法人の試験場」や「大学の教授」といった技術的ノウハウを有する組織・人に協力してもらうことが重要だと考えたこと、②商品開発に成功し、販売することになった暁には、赤錆除去効果の科学的な裏付けも必要になることを考えたことから、外部の専門機関等と連携した体制作りを提案した。

また、事業計画策定の際には、そもそも同事業に対するニーズがあるかどうかについて、類似商品等の動向を見て、事業の市場性・採算性について精査した。

さらに、事業立上げ後の、妥当な販売価格や原価についても、他の類似商品等の情報を提供するなど支援を行った。

成果・効果:他事業者と連携し、試作品開発を開始

外部との連携の必要性や事業計画の精査等の支援を通じ、商品開発の体制や販売後の売上・利益の見込み等を明確化し、同補助金の採択にも繋がった。

その後、大学の教授の協力も得て赤錆除去装置の試作品開発を開始することができた。今後、同事業が立上がった暁には、例えば、建設資材の卸売業者やマンション管理会社等といった具体的な販売先の案を提示し、売上の拡大に貢献できればと考えている。

今後の取組:新事業立上げや創業に向けた支援を積極的に提供

当認定機関は、これまでも中小企業等の資金調達、新事業展開及び創業等の支援に力を入れてきたが、今後新事業展開や創業に向けた支援にも、一層力を入れていきたいと考えている。

引用元:中小企業・小規模事業者支援 優良取組事例集

まとめ

この記事では、税理士と認定支援機関の関係性と、認定支援機関の業務についてご紹介してきました。認定支援機関と業務について、細かく理解できたのではないでしょうか。

ぜひ、参考にしてみてください。

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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