税理士と契約をすることはハードルが高く感じられることもあるかもしれません。月々の顧問料がかかってくるため二の足を踏んだり、税理士を探すことに手間を感じたり、理由はさまざまでしょう。
しかし、税理士と顧問契約をすることはメリットが多いのも事実。
ここでは税理士と契約することによるメリットと、税理士選びをきちんとしておくべき理由について紹介します。経営者自身や自社にとって相性のいい税理士を選びましょう。
税理士と顧問契約をすることで受けられる5つのメリット
税理士と顧問契約をすることのメリットは、次のようなものがあります。
- 節税のアドバイスで資金繰りに余裕ができる
- 決算や確定申告作業の負担が軽くなる
- 不安の大きい税務調査に立ち会ってもらえる
- 経営面のアドバイスをもらえることがある
- 正しい経理処理で信頼がアップする
節税のアドバイスで資金繰りに余裕ができる
決算書上では黒字でも、現金が手元にないことが原因で倒産する“黒字倒産”はもっとも避けたいこと。資金繰りはしっかりとチェックしておかなければならないポイントです。
税理士は税務のプロ。したがって、どうすれば節税につながるのかを適切な方法で教えてくれます。正しい知識をもった税理士からのアドバイスを聞き、適切な形で節税していくことで出費が減り、資金繰りにも余裕ができるはずです。
黒字倒産について理解しておきたい方は「黒字倒産とは?倒産しない会社との違いと要因や予防法とは?」の記事も確認しておきましょう。
決算や確定申告作業の負担が軽くなる
税理士と顧問契約をすることで、決算や確定申告の作業を任せることが可能。
顧問契約をしなくても、スポット契約で確定申告作業を頼むことはできます。しかし、顧問契約をして日々の記帳も任せることで、正確な会計・税務処理をしてもらえるので安心です。
また、決算処理の手続きに追われる時間を営業活動に充てることができるため、営業面から見てもメリットでしょう。
確定申告について詳しく知りたい方は「【初心者向け】確定申告とは?必要な人や手続きの流れをわかりやすく解説」もチェックしてください。
不安の大きい税務調査に立ち会ってもらえる
税務調査とは、納税が正しく行われているかを税務署職員などが調査すること。税務調査をやる日程は、ある日突然連絡が届くため驚く人も少なくありません。
特に、経理へ配属されたばかりであったり、入社間もないタイミングで税務調査が入るとなると、どうすればいいのかわからなかったり、無事に乗り切れるか不安になったりするでしょう。
そのような時に顧問税理士がいれば安心です。顧問税理士は税務調査への立ち会いが許可されているので、監査員からの質問にも正確に答えてもらえます。顧問契約をしていない税理士は立ち会えないため注意してください。
税務調査の基本については「税務調査とは?必要な準備と調査の流れについて徹底解説」の記事で詳しくご紹介しています。
経営面のアドバイスをもらえることがある
孤独になりやすい経営者にとって、相談できる相手がいることは大きなメリット。大きな決断する際にアドバイスをもらえることで、決断に関する不安感を和らげることにもつながります。
しかし、相談相手は誰でもいいわけではありません。情報漏洩の心配や忖度による間違った選択の可能性もあるからです。
その点、税理士であれば会社の内情も知っています。また、経営状況も把握しているため、状況に合わせて適切なアドバイスを受けることも可能。経営者の相談相手として税理士はぴったりなのです。
その他に相談できる相手を知りたい方は「経営相談に最適な相手と相談時の注意点とは。どんなことを相談する?」も合わせてチェックしてください。
正しい経理処理で信頼がアップする
自分だけの知識で節税をしようとすると間違った経理処理をしてしまい、最悪の場合、不適切会計で罪に問われる可能性もあります。
税理士は正しい処理をしっかりと身につけており、間違った処理をする心配は限りなく少ないです。不慣れな経理担当者に任せるよりも、プロである税理士に頼んだほうがミスが少なく、信頼できる会計書類ができるでしょう。
不適切会計については「不適切会計の事例や防止策とは?不適切会計はミスでも罪に問われる!?」も確認してください。
税理士選びに失敗するとどのようなトラブルがある?
ここまで税理士と顧問契約することによって受けられるメリットをご紹介しました。税理士と顧問契約を検討する場合、税理士選びに失敗するとトラブルになる可能性もあるため注意が必要です。
考えられるトラブルは次のようなものがあります。
- 適切なタイミングでの助言がもらえない
- IT対応しておらず、手間がかかる
- コミュニケーションがうまくとれない
順番に見ていきましょう。
適切なタイミングでの助言がもらえない
トラブルで一番気になるのが、適切なタイミングでのアドバイスが受けられないことでしょう。「今」質問したいのに、なかなかメールなどの返信が返ってこなかったり、電話をかけてもつないでもらえなかったりしたら、対応できず困ってしまいますよね。
税理士が忙しいのはよくあることですが、密に連絡がとれないのはデメリットになります。空き時間にすぐに連絡をくれたり、「明日の午前中までに連絡します」のような返信目安を連絡してくれる税理士であれば安心でしょう。
IT対応しておらず、手間がかかる
古くから開業している税理士事務所にありがちなのが、ITに追いつけていないトラブルです。
たとえば、今ではメールへのデータ添付で簡単に確認できる書類を「FAXで送って」と言われるような事務所だと、対応するのに手間がかかります。
そこまで極端でなくても、メールやチャットツールを利用していない可能性もありますので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。
コミュニケーションがうまくとれない
税理士の中には残念ながらコミュニケーションが上手くとれない人もいます。「先生」と呼ばれる立場であることから上から目線になってしまったり、こちらの話を聞かずに一方的に言いたいことだけと伝えてくる人がいたりすることも。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、税理士との契約前に必ず面談の時間をつくりましょう。実際に顔を合わせて話をすることで相性を探るのがベターです。
失敗しない税理士選びのための6つのポイント
税理士選びに失敗すると、せっかくの顧問料が無駄になってしまいます。失敗しないためにできることは絶対にやっておきたいですよね。
税理士選びで失敗しないためには、次のようなポイントを確認しておきましょう。
- 相性がいいかどうかを面談で見極める
- サービス内容について把握しておく
- 自社に合った知識や実績を持っているか確認
- 顧問報酬の料金体系が明確かチェック
- 税制改正にきちんと対応できている?
- レスポンスの早さをチェックしておく
確認ポイントが多く感じるかもしれませんが、安くはない顧問報酬を有意義に使うためにもしっかりチェックしてくださいね。
相性がいいかどうかを面談で見極める
よく考えずに「よさそうだから」と経歴だけ見て税理士を選んだり、人の紹介だからと面談なしで契約したりするのは絶対にやめたほうが無難。自分との相性は、経歴や他人からの評判からはわからないからです。
気になる税理士を見つけたら、まずは面談する時間をとりましょう。どれだけ経歴がよかったとしても、人からの評判がよかったとしても、自分や自社との相性がいいとは限りません。
お互いに顔を合わせて話をすることで相性を確認しておきましょう。
サービス内容について把握しておく
どこまでの手続きやサポートに対応してもらえるのかは、税理士事務所や担当税理士によって異なります。
たとえば、経営に関する相談にのってほしいのに、選んだ税理士が対応していなければサービスを受けることはできません。反対に、必要のないサービスのために報酬を支払うのはもったいないですよね。
- 税理士がどこまでのサービスに対応可能なのか
- 自社で必要なサービスの範囲はどこまでなのか
この点について契約前にしっかりと確認しておきましょう。
自社に合った知識や実績を持っているか確認
税理士がどのような知識や実績を持っているのかの確認も欠かせません。もちろん、大きな実績やたくさんの知識を持っていることに越したことはありませんが、自社に合っている情報を持っていることのほうが重要です。
- 自社の業界・業種に詳しいか
- 同じような業界で税理士経験があるか
このような項目を確認し、自社にとってメリットのある税理士かどうかを確認しておきましょう。
顧問報酬の料金体系が明確かチェック
サービス内容が税理士や税理士事務所によって異なるのと同じように、顧問報酬の料金体系も決まったものはなくそれぞれです。
報酬が高いからといって自社にとって助かるサービスを展開しているとも限りませんし、反対に、安いからといってサービスが悪いわけでもありません。
気をつけたいのは報酬の安さにこだわりすぎないこと。自社に必要なサービスをしている税理士を選ぶことに注力しましょう。
税理士の顧問料の報酬相場が気になる方は「税理士にはどんなことを頼める?顧問契約とスポット利用の費用相場とは」の記事を確認してください。
税制改正にきちんと対応できている?
忙しさや税理士の不勉強が原因で、税制改正への対応が遅れていることもあります。税務のプロであるからと安心して任せているのに、税理士の対応によって不正会計になってしまっては本末転倒です。
- しっかりと税制改正に対応できているのか
- 税理士たちの勉強の場が用意されているのか
このようなポイントを、税理士や税理士事務所のサイトなどを参考に確認しておきましょう。
令和3年の税制改正について知っておきたい方は「令和3年の税制改正!雇用者の給与が増加した場合に適用できる「賃上げ税制」とは」の記事を参考にしてみてください。
レスポンスの早さをチェックしておく
前半でもお伝えしましたが、聞きたいことや確認したいことへの返答がすぐに届かない税理士では安心して任せられません。
- 利用しているメッセージツール
- 連絡のとれる時間帯や曜日
- 大体の返信スピード
このあたりを事前に確認しておくだけでも安心できるでしょう。また、税理士にも「まめに連絡をとりたいのだな」ということが暗に伝わるため、質問しておくことをオススメします。
税理士選びの時期・契約するタイミングとは
税理士との顧問契約は早ければ早いほどいいでしょう。特に、起業直後はやることも、手続きも多いため、経理面でのサポートが受けられるのはありがたいことです。
しかし、毎月かかってくる顧問報酬の支払いの問題もあり、難しいこともあるでしょう。多くの経営者が税理士を選ぶきっかけになるのは、以下のようなタイミングです。
- 税の課税対象になるタイミング
- 会社設立のタイミング
- 決算前に限界を感じたとき
- 融資を受けたり資金調達をしたりする時期
- 税務調査が入ることになったとき
やはり1番のオススメは会社設立のタイミングですが、難しいようであればスポット利用を活用して正しい経理処理ができるようにするのもいいでしょう。また、消費税の課税対象になる“売上高が1,000万円を超えるとき”に顧問契約することで、課税初期から節税することができます。
税理士とは、スポット契約よりも長期に渡って関係を続けたほうがメリットが多いです。できるだけ早くからパートナーとして契約しておくのがいいでしょう。
これから会社を設立する方は「会社設立時に税理士は必要?依頼のタイミングや費用の相場を確認しよう」も参考にしてみてください。
相性のいい税理士を探す5つの方法
税理士と一緒に事業を進めていくことのメリットをお伝えしましたが、それでは相性のいい税理士はどのように見つけたらいいのでしょうか。
税理士を探す方法は、主に次の5つの方法があります。
- 知人や取引先からの紹介
- 銀行や商工会議所からの紹介
- オンラインコミュニティからの縁
- インターネット検索
- 税理士紹介サイトの利用
特に多いのが“人からの紹介”でしょう。しかし、他人との相性がいい税理士が、自社や経営者自身とも相性がいいとは限りません。知り合いからの紹介ということで断りにくい雰囲気になってしまうため、できれば避けたほうが無難です。
オススメなのは税理士紹介サイトの利用。たくさんいる税理士の中から自分に合った1人を選ぶのはとてもハードです。紹介サイトを利用することで、税理士に求める条件を伝えれば候補者をピックアップしてもらえ、探し回る手間を大幅に削減できます。
- どのようなことを任せたいのか
- 税理士に求めることは何か
自社の希望を明確にしたうえで、税理士紹介サイト利用して顧問税理士を探してみましょう。
税理士選びに失敗しないためにしっかり調査をしよう
税理士への顧問報酬は決して安くありません。そのことが理由で顧問契約を避けてきた経営者もいるほどです。しかし、事業の初期からパートナーとして一緒に進んでいくことで得られるメリットがたくさん。
税理士選びで失敗しないためには、自社との相性をはじめとした6つのポイントがあります。直感で決めるのではなく、自社にとってメリットのある税理士かどうかをしっかりと見極めてから契約を決めましょう。
実際に会ったり、電話で話したりすることでしかわからない雰囲気や相性もあります。まずは無料相談や面談を設定してみてはいかがでしょうか。