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バランス型投資信託は初心者向け? 概要やメリット・デメリットから考察

バランス型投資信託は初心者向け? 概要やメリット・デメリットから考察

投資家から集めたお金を1つのファンドとして専門家が運用し、成果に応じて分配金が配分されるのが投資信託の仕組みです。どの資産にどの比率で配分するかは専門家が決めており、資産構成や比率はファンドごとに多種多様です。

投資信託の中には、1つの銘柄でさまざまな資産・地域などへの投資ができる「バランス型投資信託(バランスファンド)」があります。

バランス型ファンドは「リスクの低さが初心者にぴったり」との意見もある反面、「信託報酬が高いし、他の面でもデメリットがある」との声が出ています。メリット・デメリットをしっかり把握してから、購入・運用すべきか検討しましょう。

当記事ではバランス型投資信託の概要やメリット・デメリット、購入する際のポイントなどを解説します。

バランス型投資信託とは?特徴や種類について

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バランス型投資信託(バランスファンド)とは、ファンドの投資先を特定のものに絞るのではなく、複数の資産・市場・地域などへバランスよく投資する投資信託のことです。

上記図だと、8つの資産へ均等に配分するタイプの投資信託になります。他のバランス型投資信託はすべて均等に分けているわけではなく、運用会社が定めた金融資産・比率に従って配分が決まっています。

例えば、国内株式・債券のみで構成されているものや、国内外の株式・債券の4つに分散しているものなどです。中には投資信託の運用を行う投資信託として、「ファンドオブファンズ形式」と呼ばれる商品も存在します。

バランス型投資信託は、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAで運用する商品としても有名です。

バランス型投資信託の組入比率による特徴

バランス型投資信託の商品性は、組み入れられている金融商品の種類・配分によって大きく変わります。

例えば4資産に分散するタイプであっても、株式へ多めに組み入れているものは価格変動が大きくなり、J-REIT(日本の不動産投資信託)へ多めに組み入れているものは、株式市場とは異なる値動きを見せるなどです。

またバランス型投資信託は、株式の組み入れ割合によって「株式を少なめにした安定タイプ」「株式や債券をバランスよくしたタイプ」「株式を多めにして積極的に成長を見込むタイプ」のように分けられているケースも多くみられます。

自分の運用方針やリスク許容度を基に、運用する商品を選ぶようにしましょう。

バランス型投資信託の種類

バランス型投資信託の商品の種類は、販売会社によって多種多様なものが揃っています。そのような中でも投資信託の運用方針によって、「資産配分固定型」と「資産配分変動型」の2つに大別できます。

資産配分固定型

資産配分固定型とは、運用前にあらかじめどの資産に何%投資するかの配分を決めておき、組入比率を維持して運用するバランス型投資信託です。配分比率がズレてきたときは、自動的に比率を元に戻すリバランスを行います。

保有資産のバランスが確認しやすい、自動的に決められたリバランスを実施するなどのメリットがある反面、下がり局面の資産を保有しても比率を変えずに持ち続けるデメリットがあります。

資産配分変動型(アロケーション型)

資産配分変動型(アロケーション型)とは、市場状況やリスク許容度、目標リターンの水準になどの要素に応じて、資産の組入比率を適度に変更しながら運用するバランス型投資信託です。

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「組み入れた株式の見通しがよいときは株式の比率を上げる」、「運用を安定させたいときは債券の比率を増やす」など、臨機応変かつリスクを抑えた運用を目指せるのがメリットです。ただし、マーケット動向と異なる動きをする場合があります。

バランス型投資信託を知る上で覚えておきたい用語

バランス型投資信託を知る上では、ポートフォリオとリバランスの用語の意味を押さえておきましょう。

ポートフォリオ

ポートフォリオとは、簡単に言えば金融資産の組み合わせです。「国内の株式を30%保有する」「国内債券と海外債券のバランスを20%・20%で保つ」などを、ポートフォリオを組むと言います。

バランス型投資信託におけるポートフォリオの意味は、商品自体の資産比率を表すことが多いです。ポートフォリオによって、バランス型投資信託の商品性が大きく変わります。

リバランス

リバランスとは、ポートフォリオ運用において、資産を再配分することを意味します。

投資活動においては時間経過とともに市場・経済状態が変化することで、資産配分が変動するのが一般的です。

そこで資産配分を元に戻すために、資産を売買して修正を行います。例えば国内債券が下落して10%低下し、国内株式が10%上昇したときは、国内株式を10%売却して国内債権を10%購入します。

初心者向けは本当? バランス型投資信託のメリット

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バランス型投資信託は、分散効果の高さや投資対象の選びやすさなどから、初心者にもおすすめされることが多い金融商品です。ここからは具体的に、以下3つのバランス型投資信託のメリットを解説します。

  • 分散によるリスク低減効果が期待できる
  • 1つの商品で世界中の資産に投資できる
  • 少額投資で始められる

分散によるリスク低減効果が期待できる

バランス型投資信託は、商品自体が複数の資産や地域への分散投資を行っているため、分散による投資リスク低減効果が期待できます。

分散投資によるリスク低減は、長期投資・積立投資と並ぶ投資の基本です。本来は株式や債券などの配分を自分で考える必要がありますが、バランス型投資信託であれば購入するだけで分散投資になります。

投資先には海外も含まれている商品もあるので、国際分散も容易に可能です。先進国株式・債券だけでなく、新興国株式・債券(エマージング株式・債券)も投資先としている商品も珍しくありません。

本来、国外の金融商品を購入するのは、投資初心者にとって高いハードルです。バランス型投資信託を運用すれば、初心者でも気軽に国際投資ができる点もメリットと言えるでしょう。

また、中でもiDeCoやつみたてNISAでの運用に対応しているバランス型投資信託は、金融庁などの公的機関が選定したローリスク・ローリターンなものです。100%とまでは言いませんが、投資初心者でも運用しやすい商品です。

リバランスを任せられる

バランス型投資信託は原則として、運用する専門家が定期的にリバランスを行います。

自分でリバランスを行う場合、基準価格や経済ニュース、運用レポートを細かくチェックしつつ、自分で比率を考えて売買をしなければなりません。このときに売却益が出ると、金額によっては課税対象となり、確定申告と納税を行う必要が出てきます。

このようなリバランスの労力が発生しない点が、バランス型投資信託のメリットの1つです。運用は専門家が行う=自分で売却益を出していないので、リバランスによる税金の発生も心配不要です。

少額投資で始められる

バランス型投資信託は、商品によっては100〜1,000円単位の安価な金額で購入できます。少額投資で始められるので、投資初心者でも手を出しやすいのがメリットです。

例えば、本来だと8つの資産を運用したいときは、自分で8種類の資産の購入・管理を行わなければなりません。これでは労力と時間がかかるだけではなく、購入資金も数十万円から数百万円ほど用意する必要があります。

初心者におすすめできない理由とは? バランス型投資信託のデメリット

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続いて、バランス型投資信託が初心者におすすめできない理由を解説します。メリット・デメリットを理解した上で、バランス型投資信託を購入するかご検討ください。

おすすめできない理由となる、次の3つのデメリットを見ていきましょう。

  • 保有資産や基準価額の動きの原因が理解しづらい
  • 得られる利益が少ない可能性がある
  • 投資経験を積む機会が疎かになる可能性がある

保有資産や基準価額の動きの原因が理解しづらい

バランス型投資信託には、1つの商品の中にさまざまな資産が混ざっています。そのため、基準価額が動いたとき「どの資産の価格が変動したのか」「なにが原因で動いたのか」が、非常にわかりづらいのがデメリットです。

得られる利益が少ない可能性がある

バランス型投資信託はリスク低減効果がある反面、得られる利益が少ないデメリットがあります。具体的な理由は次のとおりです。

  • 分散効果によってリスクが抑えられる代わりに価格の上昇幅も少なくなるから
  • 発生する利益が少ないと、iDeCoやつみたてNISAを運用する際の節税効果の恩恵も受けづらくなるから
  • 手数料がインデックスファンドと比較して高い傾向があるから

とくに気をつけたいのが手数料です。インデックスファンドは信託報酬が0.1%未満になるなど安く抑えられていますが、バランス型投資信託は0.15〜2%を超える商品が多いです。1%を超えるものも珍しくありません。

とくにリバランスなどで運用者の負担が大きい資産配分変動型や、複数の投資信託を管理・運用するファンドオブファンズ形式の商品は、手数料が高くなる傾向があります。

投資経験を積む機会が疎かになる可能性がある

バランス型投資信託はポートフォリオ組み立てや投資銘柄の選定、リバランスまで専門家に任せられる反面、便利さにかまけて投資経験を積む機会が疎かになる可能性があります。

投資初心者でも運用しやすいと始めた結果、いつまでも初心者から抜け出せなくなるかもしれません。

バランス型投資信託を購入する際のポイント

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バランス型投資信託をより安全に運用するには、購入の際に次のポイントを意識してみてください。

  • 自分の投資の運用方針を固める
  • 組入資産の比率を確認する
  • 購入前に手数料や投資銘柄などの情報を確認する
  • コツコツ積み立てて運用するという投資の基本を忘れない

自分の投資の運用方針を固める

バランス型投資信託を購入する前に、自分はどのような投資をしたいのかという方向性を定めましょう。

利益を出す積極的な運用であれば「株式や新興国の商品が多いタイプ」を、安定した運用を目指すなら「債券や投資信託を組み入れているタイプ」を選ぶなどが考えられます。

もしもより特化した運用方針を求める場合は、バランス型投資信託よりも株式や債券、他の投資信託を中心に購入したほうがよいケースもあるでしょう。購入するかを見極める意味でも、運用の方向性は最初に固めておくことをおすすめします。

組入資産の比率を確認する

運用方針を固めた後は、運用方針に応じた組入資産の比率を持つ、バランス型投資信託を購入しましょう。チェックすべきポイントは次の通りです。

  • 運用指標はインデックス運用かそれ以外か
  • 株式や債券の比率はどうなっているか
  • 株式や債券の銘柄はどうなっているか
  • 海外の金融資産も入っているか、先進国や新興国の比率はどうなっているか
  • 株式市場との連動が少ない資産(REITなど)が含まれているか

購入前に手数料などの情報を確認する

購入前には、組入比率以外にも以下のようなさまざまな情報を確認しておきましょう。

  • これまでの運用実績はどうなっているか
  • 運用会社の知名度・信頼性はどうか
  • 購入手数料や信託財産留保額、信託報酬はいくらか
  • リターン率はどうなっているか

長期目線という投資の基本を忘れない

ローリスク・ローリターンの傾向が強いバランス型投資信託といえども、運用方法によっては大きな損失を出す可能性もあります。また、外国の金融資産を含んだバランス型投資信託は世界経済から受ける影響も大きく、意図しない形で価格が大きく変動するリスクを孕んでいます。

いずれのケースにおいても、投資の基本である「コツコツ積み立て、長期目線で行うこと」を忘れないようにしてください。株価は日々変動しており、1日の値動きで一喜一憂すると、精神的にも疲れてしまいます。

バランス型投資信託は原則として大きく値動きする商品ではないため、一度購入したら年単位での保有を前提に、長期的な複利効果を見込んだ安定運用を心がけましょう。

バランス型投資信託で安定した運用を目指そう!

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バランス型投資信託は、1つの商品で分散効果を得られるリスク低減に優れた商品です。ただし、大きな損失が出ない代わりに利益も抑えられたり、複数の資産の確認が大変だったりなどのデメリットもあります。

投資初心者がバランス型投資信託を購入する際は、運用を専門家に任せっきりにするだけではなく、自身も運用成果をこまめに確認・分析して勉強することが大切です。

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安藤 正道
記事の監修者 安藤 正道
きわみアセットマネジメント株式会社 取締役

金融商品仲介業「きわみアセットマネジメント株式会社」取締役。
きわみアセットマネジメント株式会社は特定の金融機関に属さず、お客さまのライフプランに最適なアドバイスができるIFA法人です。お客さまの一生涯のパートナーとなり、寄り添います。ご相談は無料ですのでお気軽にお問合せください。

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