独立起業前にやることはたくさんあり、設立後では間に合わないこともあります。ひとつでも準備を怠ると事業の足を引っ張り、サラリーマン時代よりも大幅な収入減になりかねません。
しかし、実際に何から手を付けたら良いのかが分かりづらいのではないでしょうか。独立起業前にやることの中には時間のかかる項目があり、優先順位をつけることが必要です。そこで、必要最小限の10選にしぼって、解説します。
会社設立の前にやること①給与以外の収入源を確定させる
会社設立の前にメインの収益がないと破綻もありえる
会社設立後は給与のような安定収入が保証されないため、メインの収益確保が必要になります。生活費や経費などの支払いができなければ、サラリーマンに逆戻りなど早期破綻もあり得ます。
会社設立後の収益確保までの資金調達法
事業が軌道に乗るまでの間の経費などの支払い財源を確保する方法は2つあります。
- 自己資金を貯める自己資金は自由に使えるお金であり、事業が軌道に乗るまでの時間稼ぎに最適です。日本政策金融公庫の新創業融資制度など自己資金が融資の条件であり、計画的に貯めることを求めています。
- 創業融資を受ける自己資金を貯めるのには時間がかかるため、足りない分は金融機関からの融資で補います。実績のない会社が資金調達を成功させるカギを握るのが、将来の見通しを示す事業計画書です。
会社設立の前にやること②住居の見直し
会社設立後の後では賃貸住宅の審査が通らない可能性も
賃貸住宅の審査が通過しやすいのは安定収入のあるサラリーマンで、独立をすると厳しくなります。
たとえば、一般的に「年間家賃<年収の30%」が目安といわれていますが、起業したての場合は条件をクリアしても賃貸契約を断られるケースがあります。
また、連帯保証人が見当たらない場合、独立起業後は保証会社の審査が通らない可能性があり、最悪、新規の部屋は借りられない可能性があります。しかも、たとえ連帯保証人を確保しても、大家から保証会社の利用が求められるケースがあります。
会社設立の前にやること③住宅ローンを組む
独立開業すると、住宅ローンを組むのがサラリーマンよりも難しくなります。
会社設立後の収入は不安定
住宅ローンの審査基準で評価の基準になるのは安定収入の有無で、起業したては収入が予測できない点で不利になります。銀行は収入源によりローンが支払えないことを恐れるからです。その点、安定収入が保証されるサラリーマンのほうが有利です。
会社設立の前にやること④クレジットカードを作る
クレジットカードは購入日よりも後払いのため、利用すれば資金繰りが楽になります。
会社設立後はカードが作れない!?
カード審査は安定収入が保証されないフリーランスに厳しくなります。独立後に会社員の感覚で気軽にクレジットカードを作ろうとしても、失敗する可能性があります。
会社設立の前にやること⑤カードローンを組む
独立後はいつ資金が足りなくなるのか予測できないため、いつでも借り入れを可能なカードローンを組みましょう。たとえば、当てにしていた得意先の入金が遅れて預金残高が少なくても、経費の支払い財源が確保できます。
会社設立の前にやること⑥事前に人脈形成をしておく
会社設立してからの人脈形成は間に合わない
独立後は販売活動などやることがたくさんあり、人脈形成に割く時間の確保が難しくなります。独立前こそ積極的に取り組みましょう。
会社設立前に関係を作っておけば、今後何かの役に立つ
事前の人脈形成は独立後に役立つ可能性があります。
- 異業種交流会に参加する:異業種交流会に参加すれば、将来の得意先や業務提携先の確保につながるかもしれません。
- マーケティングや営業セミナーを受講する:独立後の悩みは集客であり、将来の悩みが共有できるマーケティング・営業セミナーは人脈形成に役立ちます。
- 「創業塾」に参加してみる:独立起業を見据えて商工会議所などの創業塾に参加するのも一つの手です。
- 起業で成功した人の話を聞きにいく:起業で成功した人の話は人が集まるため、人脈形成を可能にします。しかも、モチベーションアップとノウハウの蓄積ができます。
会社設立の前にやること⑦自社のWEBサイトを作成する
名刺交換後に自社に興味を持ってもらうツールがWEBサイトです。たとえば、名刺交換をした人と会話が弾んだ場合、自社のWEBサイトに訪問してもらえる可能性は高くなります。しかし、作成していなければ、仕事を受注するチャンスがなくなるかもしれません。
WEBサイトがあることにより、自社の信用は高まり、販売につながりやすくなります。
会社設立の前にやること⑧キャッチコピーを考える
自社PRにはキャッチコピーが必要であり、会社設立前から考えておく必要があります。たとえば、同業他社のWEBサイトや新聞広告などを参考にして取り入れることが可能です。
会社設立の前にやること⑨競合調査を実施する
同業他社と差別化を図るために競合調査が必要になります。たとえば、値段・サービスの質などを比較して、自社の強みを見いだせ、アピールすることができます。
会社設立の前にやること⑩税金の知識を身に着ける
独立後に税金で損しないために最低限の知識が必要です。
会社設立後は勉強時間の確保が難しい
独立後は他にやることがたくさんあり、勉強時間の確保が難しくなります。
会社設立の税務関連は税理士を活用する
税法はボリュームが多く複雑なため、自分でマスターするのにも限界があります。見つける税金の知識は必要最小限にして、税理士に任せるのが妥当です。たとえば、毎年改正される税法に自社で対応するのは大変です。
特に個人事業主と違い、法人の決算は専門知識が必要であり、自社で税務申告まで行うのは至難の業です。
会社設立前に信頼できる税理士をみつけて、会社設立からサポートしてもらうことが好ましいでしょう。
【会社設立前にしっておくべき】最低限の税知識
税理士に依頼する前に知っておくべき税金の知識を紹介します。
- 設立前の事業費用は経費に計上できるたとえば、設立時に支払う登録免許税や司法書士などへの手数料、賃貸物件を探す交通費などは起業後に経費に計上できます。そのため、領収書などを忘れずに保管しておきましょう。
- 青色申告の申請青色申告を申請すれば、設立初年度の赤字分は欠損金として、翌年度以降の所得金額から控除でき、節税に利用できます。
- 資本金1,000万円以上は初年度から消費税が課される設立時の資本金が1,000万円以上なら初年度から消費税が課されるため、出資額を決める判断材料になります。
会社設立前は反社会的勢力と関わらない
反社会的勢力と関わりのある会社・経営者に対して金融機関は融資をしたがりません。たとえば、日本政策金融公庫は「断固たる態度で反社会的勢力との関係を遮断し排除する」という立場を明確にしています。
会社設立前は公共料金・ローン・家賃・税金をきちんと支払う
公共料金・ローン・家賃・税金の未払いがある人を金融機関は信用せず、融資審査でマイナスポイントになります。会社設立の6ヵ月前までにはきちんと支払いを済ませましょう。
会社設立後に事業がうまくいかないときの対処法を考えておく
そもそも事業は計画通りに進むとは限らないため、対処法は事前に考えておく必要があります。たとえば、サーバーのメンテナンスと得意先から継続受注する予定とします。途中で取引停止をした場合を想定して、別の得意先を確保するなどのリスク管理が求められます。創業融資の面談でも必ず質問される項目ですので、あらかじめ聞かれそうなことを想定しておきましょう。
まとめ
会社を設立することは、人生においても大きな分岐点となることでしょう。華々しいスタートをきるためにもしっかりとした事前の準備が必要です。特に、融資や税金については会社を設立し運営するうえで、とても重要なポイントになってきます。信頼できる弁護士や税理士といった専門家に相談しながら、会社設立後もサポートしてもらうことをおすすめします。
なお、きわみ事務所では会社設立や資金調達の相談を受け付けています。代表税理士はITベンチャーで役員を務めた経験があるという、業界でも数少ない「経営者目線」のアドバイスができる税理士です。まずはお気軽にお問い合わせください。