「ストックオプション制度」という言葉を耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?株式会社を経営している方の中には、「ストックオプション制度を導入しようかな……」と考えている方も多いでしょう。
本記事では、ストックオプション制度の仕組みをメリット・デメリットと共にご紹介。税制優遇措置もご紹介するので、ストックオプション制度に興味のある方、そもそもストックオプション制度とはどんな制度なのか知らない方は是非参考にしてください。
ストックオプション制度とは
ストックオプションとは、自社株を予め決められた価格で将来取得できる権利のこと。会社によって、従業員や取締役に付与されます。
株価は常に変動します。ストックオプション制度を導入している場合、予め決められた価格よりも時価が高かったときには権利を行使して株を取得、保有したままでもOKですが、すぐに売却すればその差分だけ利益を得ることができるのです。
- 例)ストックオプション制度で決められた価格:1株1,000円
- 時価:1株2,000円
- もし100株購入した場合、下記の計算式の通り10万円の利益を得られます。2,000円×100株-1,000円×100株=100,000円
権利を行使する期間や購入数の上限は会社によって指定されていますが、行使するか否かは権利を付与された従業員の自由なので、もし予め決められた価格より低かった場合は行使しなくて構いません。
つまり株価が上がれば上がるほど権利を付与された従業員や取締役は利益を得られることになるので、業績アップを目指す労働意欲の向上に繋がると期待できる制度なのです。
ストックオプションの税制優遇措置について
ストックオプション制度で得られた利益には、税金がかかる場合があります。しかし優遇措置がとられている場合があるので、以下の2つの違いを把握しておきましょう。
<税制適格ストックオプション>
税制適格ストックオプションとは、税制優遇措置の対象となるストックオプション制度のこと。
税制適格ストックオプションは付与された翌年の1月31日までに調書・調書合計表を税務署に提出する必要があります。期限を過ぎると優遇措置の対象とならないので、注意しておきましょう。
<税制非適格ストックオプション>
税制非適格ストックオプションとは、税制優遇措置の対象ではないストックオプション制度のこと。「株価の時価-ストックオプション制度で予め決められた価格」で得られた利益は給与所得として見なされるので、所得税が課せられます。 また、株を購入ではなく譲渡した場合も「株の譲渡価格-ストックオプション制度で予め決められた価格」が譲渡所得となり、所得税が課せられます。
ストックオプションのメリット
上記で軽く触れましたが、ここで改めてストックオプション制度のメリットについて確認しておきましょう。付与対象者、付与者それぞれの立場のメリットをご紹介するので、自社で導入する際の参考にしてみてください。
ストックオプション付与対象者のメリット
付与対象者(権利を与えられた取締役や従業員)のメリットは、主に以下の2つ。
ストックオプション対象者のメリット①市場価値が高くなるほど、報酬を受け取れる
自分の会社への貢献が株価に反映し、自分の利益に直結する「目に見えやすい」利益です。価格が全て分かっているため、通常の給与よりも報酬の仕組みが分かりやすいのがポイントでしょう。
ストックオプション対象者のメリット②通常の株式を持つよりもリスクが少ない
通常の株式であれば、購入時の価格よりも売却時の価格の方が低かった、などの損をする可能性が非常に高いです。しかし、ストックオプション制度は株式を購入する「権利」を付与しているため、購入するかしないかは自由。株価が低い場合は権利を行使しなければ良いので、損をすることがありません。
ストックオプション付与者のメリット
付与者(会社)の主なメリットは、以下の2つ。
ストックオプション付与者のメリット①財務に関係なく人材を集められる
良い人材を集めようとすると、通常高い給与を用意します。ただ、ストックオプション制度という将来的なインセンティブがあることを提示すれば、高い給与でなくても良い人材を集める事が可能です。
ストックオプション付与者のメリット②株価が上がれば、社員のモチベーションが上がる
自分の頑張りが自分の利益に直結するので、社員全体のモチベーションアップを期待できます。
ストックオプションのデメリット
良いこと尽くめのように思えるストックオプション制度ですが、もちろんデメリットも存在します。導入する際は、しっかりデメリットも把握した上で検討しましょう。
ストックオプション付与対象者のデメリット
付与対象者のデメリットは、主に以下の2つ。
ストックオプション対象者のデメリット①得た利益には所得税がかかる
税制適格ストックオプションであれば問題はありませんが、税制優遇措置の対象から外れてしまうと所得税がかかります。所得税は前年の所得に比例してかかるので、ストックオプション制度で得た利益がない年に多くの所得税を支払わなければなりません。
ストックオプション対象者のデメリット②自社の努力以外の要因で株価が下落する可能性がある
株価は常に変動しており、自社の経営努力が素直に株価に反映するとは限りません。経済全体が落ち込んでいたり、関係会社の不祥事など、自社の努力ではどうすることもできない要因で株価が下落してしまうこともあります。
ストックオプション付与者のデメリット
付与者のデメリットは、主に以下の3つ。
ストックオプション付与者のデメリット①付与基準が曖昧だと不公平が起こり、社員に違和感を感じさせる
ストックオプションを付与する従業員の選定基準や購入する株式の数の上限、権利行使価格などが従業員によってバラバラだと、不信感を与えてしまいます。不信感はモチベーションの低下や人材の流出にも繋がるので、どのような基準があるのか、公開しておくなどの対策が必要です。
ストックオプション付与者のデメリット②利益を得た社員が退職する可能性がある
ストックオプションで利益を得てすぐに退職、というケースも実は少なくありません。人材集めには有効ですが、流出の抑制や人材保持の観点ではリスクがあるといって良いでしょう。
ストックオプション付与者のデメリット③株価が一定、または下がったりすると社員のモチベーションに影響する
付与対象者のデメリットの項でも述べたように、自社努力の範疇外にある要因で株価が下落する可能性もあります。その場合「努力しても報われない」と、モチベーションの低下に繋がることも。モチベーションアップを目的として導入したのに、逆の結果になってしまった、なんてケースも多々あります。
ストックオプションのまとめ
ストックオプション制度は、これから株価が上昇するであろう会社が導入すれば、とても魅力的な制度。従業員は利益を得られて、会社は優秀な人材の確保を安価で行うことができます。しかし、予期せぬ株価の低下などによって、ストックオプション制度が上手く機能しないこともあります。
今回ご紹介したメリット・デメリットをしっかり理解して、付与対象者・付与者どちらもメリットが得られるような導入の仕方を検討してみてください。