業務改善を行う際、重要なポイントを抑えることで得たい結果を効率的に得ることができます。
見切り発車で業務改善を進めてしまっては、得たい結果を得られないどころか、無駄なコストを生むことにもなりかねません。
そこでこの記事では、
- 効率の良い業務改善5ステップ
- 業務改善を行う際、絶対に抑えておきたいポイント
- 業務改善に成功した企業の実例
などについて分かりやすく解説していきます。
記事を読むことで、未然に失敗を防ぎ、得たい結果を効率的に得ることが可能です。
効率の良い業務改善5ステップ
もっとも効率の良い業務改善の進め方は下記の通りです。
- 業務の工程を見える化する
- 問題点を探してアクションを決定
- 業務改善の目標を設定
- 会社全体で共有できる資料(フロー)を作成
- フローに対して継続的に取り組む
以下にて順番に解説していきます。
業務改善の手順1.業務の工程を見える化する
まずは、問題点を見つけるために業務工程を見える化します。これを業務の棚卸しとも言います。そうすると、これまでに見えてこなかった改善点がみえてくるはずです。
具体的に言うと、
- 業務の偏り
- 必要性の低い業務
- 外部発注するべき業務
などが見えてきます。大まかな問題点が見えてきたら次に進みましょう。
業務改善の手順2.問題点を探してアクションを決定
改善するべき点が見えてきたら、問題点を深掘りして行うべきアクションを決定していきます。
たとえば、従業員の作業工程を改善するべきだと思うのであれば、従業員が抱える仕事を細分化し、「無駄な工程」「仕事の抱え込みすぎ」などをあぶり出します。
改善点がいくつか見つかった際には、優先順位を明確にしておくことが大切です。そして次に、優先順位の高い改善点に対して行うアクションを選択します。
選択するアクションは、
- 減らす
- 変える
- 無くす
の中から選択(分類)するとよいです。
具体的な対策は下記を参考にしてみてください。
- 無駄な工程が多い・・・スムーズに進むべき工程の中で承認者が多すぎると、時間や労力が無駄になってしまうことが多いため、承認者の必要性について社内で再検討してみるとよいです。
- 仕事の抱え込みすぎ・・・一人に対しての業務量が多い場合は、システムの導入・アウトソーシングなどの対策が考えられます。
具体的な改善策を策定する際は、「コスト」「時間」「手間」などの観点から評価を書き出しておくことも忘れずに。
業務改善の手順3.業務改善の目標を設定
具体的な改善策が決まったら、目標を設定します。
目標は目的を達成するための指標となるので、具体的に数値化しておきましょう。なお、目標となる数値を設定したら、アウトソーシングすることも一度検討してみてください。
アウトソーシングを利用するメリットは下記の通りです。
- 人材確保や設備投資などのコストを抑えられる
- 自社での生産よりクオリティが高くなることもある
- 雑用業務が少なくなってメイン事業に時間を投資できる
「自社で進める場合」と「アウトソーシングした場合」との費用対効果を比べたうえで検討するとよいです。
業務改善の手順4.会社全体で共有できる資料(フロー)を作成
次に、業務改善のポイントを抑えたフローを作成します。
業務改善は会社全体を巻き込んで進めていく場合がほとんどですから、スタートからゴールまでのフローを明記しておくことが非常に大切です。そして、フローを作成したら具体的な手順を示したマニュアルを作成していきます。
マニュアル作成の手順は下記の通り。
- マニュアル化する範囲の業務を明確にする
- 目次になるようにマニュアルの構成を作成する
- 時系列・担当者を内容に当てはめていく
- マニュアルを基に改善策を運用する
- 修正箇所や課題を見つけてブラッシュアップしていく
フローとマニュアルがあると業務の無駄や課題を見つけやすくなることに加え、引継ぎがスムーズに行えるというメリットもあります。
業務改善の手順5.フローを継続して取り組む
業務改善のフローを継続して取り組みつつ、同時にPDCAを回していく必要があります。加えて、行った改善策がどのくらい目標値に近づいたのかを検証することも大切です。
ゴールに対しての伸び率が悪いようであれば、フローやマニュアルを見直し、改善の速度を上げていきましょう。
フローを一周しただけで改善されるケースは少ないですから、継続して取り組む姿勢を保ち続けることが重要です。
業務改善で失敗を防ぐためのポイント
業務改善を行う際、失敗を防ぐためにも下記のポイントを必ず抑えておきましょう。
- 従業員を巻き込む
- 改善点を見逃さない
- 施策を作って放置しない
それぞれについて詳しく解説していきます。
業務改善のポイント1.従業員を巻き込む
業務改善は、会社全体で取り組むことで真価を発揮します。ですが、ただ「業務改善を行います」と告知したところで、メリットを直接的に感じない従業員は能動的に動いてくれません。
そのため、会社全体を巻き込むためにも、下記のような対策を取る必要があります。
- 従業員同士が業務改善について成功・失敗を話し合える場を作る
- 業務改善によって得られた効果や改善点を共有して当事者意識を持ってもらう
- 能動的に動いた従業員に対してしっかりと評価する仕組みをつくる
また、自社の従業員だけではなく、パートナー企業や取引先の意見や実例を参考にすることも効果的です。
業務改善のポイント2.改善点を見逃さない
効率良く業務改善していくためには、改善点を見逃さないことが絶対条件です。ただし、業務改善をやるだけでは、かえって無駄な作業を増やすだけになることもあります。
そこで、改善点を見逃さないためには、
- 社内での情報収集を怠らない
- 手順をひとつずつ見直してみる
- 作成したフローチャートやマニュアルを繰り返し見直す
などといった対策を繰り返し行うことが大切です。
業務改善のポイント3.施策を作って放置しない
意外と多いのが、業務改善の施策をつくってそのまま放置してしまうことです。
経営陣が決定して、そのまま下に流しただけで1ヶ月も続かない…みたいなことが割とあります。これは効果測定をしてブラッシュアップしていくこと以前の問題です。
ですから、まずは施策を放置しないための仕組みづくりを行う必要があります。
たとえば、「報告係を一人決めて、月に1回会社全体で結果の報告を行う」といったことが考えられます。
情報をしっかりと共有し、従業員全体からフローの流れが見えるようにしましょう。
業務改善に成功した事例から学ぼう
以下では、業務改善に成功した事例を紹介していきます。
他社の成功から学び、より効果的で効率の良い業務改善を行っていきましょう。
業務改善の事例1.すぐにできる5S運動で作業スピード向上
以下では、比較的に実践しやすい「5S運動」で大幅な作業スピード向上に成功したA社の実例を紹介します。
【ホテル経営をするA社の課題】
顧客からの要望にできるだけ早く対応することが求められるホテル業では、ちょっとした業務の無駄とイレギュラーで発生した工数が命とりになります。そこでA社は、顧客に対して迅速かつ高品質なサービスを提供するために、次の業務改善を行います。
【A社の取り組み】
A社が取り組んだのは、サービス業ではきわめて模範的といえる「5S運動」の徹底でした。
5Sとは「しつけ」「清潔」「清掃」「整頓」「整理」を指し、それぞれの頭文字をとって名づけられています。同社はまず、現状を分析するべく、スタート地点である今の現場を写真として残しました。そして、改善すべきだと思う箇所に決まり事を設け、それを徹底して守ったのです。
【業務改善から得た効果】
- 作業スピード17%向上
- 従業員の意識改善の成功
【成功のポイント】
A社の大きな成功要因は、現状分析を徹底したところだといえます。
現状分析は大変重要ですから、やみくもに行わずに『BPMN(ビジネス・プロセス・モデリング表記)』などのシステムを上手く利用するとよいです。
業務改善の事例2.作業計画を立案し、人件費を大幅に削減
次に、作業計画を立案することで人件費を大幅に削減したB社の実例を紹介します。
【店舗運営を行うB社の課題】
B社は、大型チェーンの進出により経営状態が圧迫されて苦しい状況にあったのですが、それ以上に、従業員が危機感を持っていないことを問題視していました。なぜなら、業務効率をアップしてコスト削減・サービス品質向上の効果を得るにも、現状の従業員の意識では不可能だと考えていたからです。
【B社の取り組み】
同社が一番最初に取り組んだのは、店舗内の作業でもっとも工数がかかる業務の特定でした。
具体的には、
- 現状分析から出した自社の時間と、標準時間の比較
- 作業別に、妥当な時間・必要な人数を算出する
- 数値を基に計画書を作成し、改善研修をスタートさせる
といった流れで行っています。このような業務改善は一般的なものなのですが、同社はこれを1年間、かなり根気強く続けています。
【業務改善から得た効果】
- 作業効率18%アップ
- 離職率が減ったことにより人件費の削減に成功
- 商品のロスが減ることにより輸入コストの削減に成功
【成功のポイント】
B社の成功の大きな要因となったのは、根気強く業務改善と向き合ったことと、検証をしながら改善策のブラッシュアップを定期的に行ったことでしょう。
ただ続けるだけでは効果はありませんから、改善策を放置しないことが大切であるということが分かります。
業務改善のポイントは仕組みづくりを行うこと
先ほど紹介した5S活動のように、取り組みやすい業務改善はいくつかあります。
ですが、業務改善で難しいのは、
- 従業員を巻き込むこと
- 改善策のブラッシュアップ
- 会社全体に改善策を浸透させること
の3点であり、業務改善を行うこと自体が難しいわけではありません。
したがって、実行していく業務改善を決めた後は、「従業員をどう巻き込むか」「改善策をどう浸透させるか」などの仕組みづくりを綿密に行うことが重要になります。