近年「起業」に対するハードルが下がり、身近な人が起業をしたという方も多いのではないでしょうか。
アイデアと資金とやる気さえばれば、起業をするチャンスは誰にでもあります。しかし、起業をして成功するのは全員ではありません。「起業をするのであれば事業を成功させたい」と多くの起業家が事業をスタートさせますが、起業に成功するのは限られた起業家だけです。
この記事では、起業に必要な知識には何があるのか、また成功する起業家になるために必要なことについて紹介していきます。
起業とは
起業とは、新しく事業を始めるために会社を立ち上げることです。会社には株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類があり、どれを選んで設立しても「起業」に当てはまります。
起業をするには、事業のアイデアが固まった後さまざまな手続きをする必要があります。定款認証や登記申請、官公庁への届出などです。資金調達も忘れてはいけません。起業をする際には、最低でも3~6か月分の固定費分の事業資金を用意しましょう。
起業に必要な知識
起業には知識が必要です。とくに重要なのが、マーケティング・会計・税金・資金繰りに関する知識です。どれが欠けても会社運営に支障をきたします。
起業を考えている方は、事前にしっかりと勉強するか、もしくは専門家を雇い会社として必要な知識が充足するよう心掛けましょう。
マーケティング
新たに立ち上げたサービスや商品を広めるのに、マーケティングの知識は必要不可欠です。起業したのにサービスや商品が誰にも使ってもらえなければ、会社はすぐに倒産してしまいます。
マーケティングとは、商品やサービスのターゲット層にアプローチをして購入へ繋げる行為のことです。まず商品やサービスの購入者となるターゲット層にどのようなニーズがあるのか、どうすればそのニーズを満たせるのか市場調査を行います。
市場調査の結果を受け、最も効果的であると判断された手法で広告宣伝活動を行います。ターゲット層に合わせて広告媒体を変えたり、広告から伝えたい内容を変えたりする必要があり、専門的な知識が求められる活動です。最終的には広告宣伝活動の結果を収集・分析し、次回の広告宣伝活動へと反映させていきます。
マーケティングは商品やサービスを顧客に認知してもらい、購買に繋げるのに欠かすことのできない知識です。立ち上げた会社を継続していくためにも、しっかり知識を身に付けましょう。
会計
会計には、財務会計と管理会計と呼ばれる2つの種類があります。財務会計と管理会計の2つの会計は、どちらも起業にとって必要な知識です。
財務会計とは、いわゆる会社の外向けの会計のこと。会社の会計情報を投資家や株主に対して発信するための会計です。会計原則に則って決算書を作成し、外部の人向けに会社の会計情報を開示します。
一方、管理会計とは会社の内向けの会計のこと。会社の会計情報を分析し、今後に活かすための会計のことです。予算と実績の比較を行い今後の改善点を見つけたり、赤字の原因を探したりします。会社をよりよくするための会計です。
起業にとって会計は、重要な業務です。外向けの会計がなおざりでは新たな投資を得ることはできず、投資家の信頼を得続けることもできません。内向けの会計をしっかりと行えないと、より良い会社にするために何をすべきかお金の面からアプローチすることはできません。
会計には専門的な知識が必要です。税理士や会計士といったプロの力も借り、より良い会社経営を目指していきましょう。
税金
会社経営と税金は切っても切り離せない関係があります。たとえ起業したばかりであっても、会社を運営している以上は税金を納める義務が発生します。具体的には、法人税や法人事業税、法人住民税といった税金です。
税金は、会社の収益額に応じて納めるべき金額が変動します。そのため、会計処理を正確に行えなければ正確な納税はできません。会計は、起業をする前にきちんと学習しておくべき項目でしょう。
起業前の職業が会社員であれば、基本的に税金は給与から天引きされ、自動的に納められることが多いです。自らが申告しなくても、税金を納めていました。
しかし、会社経営はそうはいきません。自らが申告を行わなければ、税金額がいくらかもわからないのです。待っていれば税務署が税金額を教えてくれるわけではありません。意図的でないにしろ、税金を納めなければ脱税になってしまいます。税金の知識は、起業前に必ず身に付けましょう。
資金繰り
起業した会社を運営し続けるためには資金が必要です。お金がなければ、従業員を雇い続けることもオフィスの賃料を払い続けることもできません。
資金調達の手段は、金融機関や銀行から融資を受けたり、国や地方公共団体から補助金を受けたりと様々です。なかには低金利で貸付を行う制度や返済不要の制度も存在します。
資金調達をするにはどのような手段があるのか、あらかじめ下調べしておくようにしましょう。
起業で成功するために必要なこと
起業家にとって必要なものは知識だけではありません。成功する起業家には、共通した考え方や気持ちの持ち方があります。
詳しくご説明します。
流行や常識に囚われない
起業家や投資家は、流行や常識に囚われすぎてはいけません。「今流行っているから」とある特定の飲み物を提供するお店で起業をするにしても、実際にお店を開く頃にはブームが過ぎ去っている可能性があります。
流行や「この業界は儲かっている」と、その時の常識だけで起業アイデアを決めてしまうのは非常に危険です。目先の利益だけにとらわれないようにしましょう。
強みを生かす
自分の強みを生かすことが、起業には必要です。様々な会社がある中で新たに起業をして成功するためには、他の会社にはない独自性、つまり何かしらの強みが必要です。
「この会社は他の会社と違う」「この会社にしかない」と思ってもらわなければ、数ある会社の中から起業したての会社が選ばれることはありません。
「納得いかないから変えていきたい」といった始まりがマイナスの感情でも構わないのです。強い想いがあって始めた事業であれば、思いは人や他社にはない強みになります。自らの強みを事業へ生かしていきましょう。
人の役に立つ
ビジネスの基本は「人の役に立つ」ことにあります。
商品を作って人の生活をより便利にしたい、サービスで人の悩みを解決したいなど、ビジネスの根幹にあるのは「人の役に立ちたい」という気持ちです。「人の役に立ちたい」ような起業に対し、人は投資や応援をしたくなります。
自分が「起業したい」と思った最初の気持ちを忘れないようにしましょう。
行動を起こす
成功する起業家は、とにかく行動を起こします。実際に現地に行ってみる、経験者に話を聞いてみる、他社の製品を使って比較してみるなど様々なことを自ら実行します。
起業は、自ら行動を起こさなければ成し得ることはできません。「こんなアイデアがある」「こんなサービスもいいな」と思い描いていても、アイデアを実現するには自ら行動を起こす必要があるのです。挑戦する前に諦めることなく、積極的に自ら行動するようにしましょう。
忍耐力を持つ
ビジネスは1日で成功するものではありません。時には赤字になることもあるでしょう。じっと待てる忍耐力も身に付ける必要があります。
起業は始めれば終わりではありません。従業員への給料やオフィスの家賃などを支払うためには、毎月継続して売り上げ続ける必要があります。市場は移り変わっていくもので、売上が良い月もあれば悪い月もあるでしょう。短期的な目線でのビジネスでは、ビジネスを大きく伸ばすことはできません。
上手くいかないときでも忍耐力をもって、ビジネスに向き合っていく必要があります。どこを改善すれば今後良くなるのか、自分たちには何が欠けているのか、トライ&エラーを繰り返して正解を手探りで探していかなければならないのです。ビジネスに忍耐力は必要不可欠です。長期的な視点から忍耐力をもってビジネスと向き合っていきましょう。
悲観的になりすぎない
悲観的になるのは何も悪いことばかりではありません。リスクに対し慎重であるとも言えます。
しかし、起業において悲観的になりすぎてはいけません。
起業は成功が約束されたものではなく倒産する可能性もありますが、悲観的にリスクばかり思い描いていては起業は前に進みません。リスクを検討することも大切ですが、悲観的になりぎず自らの事業を信じることも大切です。
お金の知識を身に付ける
起業をする上で必要になる知識は、お金に関する知識です。
会社を運営していくにはお金が必要になります。仕入代金の支払いや従業員への給与など、事業は支出なくしては成り立ちません。支出は収益から支払額を捻出したり、銀行や金融機関から借り入れを行ったりして、状況に合わせた対応を行う必要があります。
お金の知識があれば、何をするのがベストか判断できます。しかし、お金に関する知識がないと場当たり的な対応しかできません。
会社を運営する上では「節税」に対する知識あると有利です。また、税金に関する知識も必要になります。
いつ・どのような税金を申告し、いつまでに納税を行うのかという知識が欠けてしまっていては、意図せず脱税してしまうリスクが出てしまいます。起業する前に、お金に関する知識をしっかりと身に付けましょう。
自分の思考パターンを分析する
自分がどのような考え方をする人間なのか分析をしましょう。
成功する起業家には「悲観的になり過ぎないこと」や「流行や常識に囚われないこと」といった考え方が必要です。自分が悲観的な考え方をしているのか、流行や常識に囚われやすい傾向にあるかは自分で認識してはいないでしょう。自分がどのような考え方をするのか、思考パターンを分析して理解しておく必要があります。
「自分は悲観的になりやすい」思考パターンが認識できていれば、「これは悲観的でない人の考えと違う答えになるのかもしれない」ことに気が付けます。
しかし「自分は悲観的になりやすい」ことを知らなければ、悲観的な結論にしかたどり着けないかもしれません。自分の思考パターンを知ることで、事業運営で取れる選択肢を広げられます。起業家には自らの思考パターンを分析し、認識しておくことも必要な事柄なのです。
人脈を生かす
起業家にとって人脈は立派な武器です。起業家同士の交流会や勉強会など、新しい人脈を得られそうな場所には積極的に出かけましょう。
また、一見事業とは直接関係がないような人脈も大切です。大学の友人や教授など、人出が必要になったタイミングでリファラル採用をして社員を確保したり、最初は必要がないと思っていた知識が後々に必要になってくることがあります。
人との出会いを大切にし、生かせる人脈は事業への糧にしていきましょう。
知識をインプットする
起業前も起業後も、知識のインプットは積極的に行いましょう。知識はあれば、取れる選択肢が増えます。
知識は、本を読んだり経験者から話を聞き吸収できます。知識をインプットするときには、普段では選ばない本を選んでみたり、なかなか会う機会がない人と会ってみたりと、いつもとは違った価値観に触れられる機会を得るように心掛けましょう。
違った価値観に触れることでインプットできる知識の幅が広がり、取れる選択肢も広がっていきます。
自分の利益のみを追求しない
起業は一人では成し得ません。従業員や取引先、顧客がいて初めてビジネスは成立します。そのため、自分の利益のみを追求していてはビジネスは長続きしません。
ビジネスの本質は「人の役に立つこと」です。成功した起業家の多くは、後に自らが投資家になり新たな事業や会社に投資を行うケースが多くあります。自分のことだけでなく、未来や人のことを考えられる人が多いという証です。
自分がなぜ事業を始めようと思ったのか、事業を行うことで社会の何を変えたかったのかを忘れることなく経営を行っていきましょう。
アウトプットする
インプットだけでなく、アウトプットすることも成功する起業家には必要なことです。
知識は自分の内側に貯め込んでいるだけはなく、外に出すことでも役に立ちます。インプットした知識をもとに新たな事業を開始したり、サービスの改善に役立てたりと会社のためになることに知識を使える機会はたくさんあります。
また、アウトプットして初めて身になる知識もあります。インプットした知識は、アウトプットして自らの経験に変えていきましょう。
【起業の成功例】不況でも業績を伸ばして成功している事例
2020年から新型コロナウイルスの影響が大きく、今まで以上に企業の生き残りが厳しい環境です。そんなコロナ渦でも、業績を順調に伸ばしている企業があります。
ここでは、2つの企業をご紹介します。
株式会社ZEALS
チャットボットを主力サービスとする株式会社ZEALSです。
株式会社ZEALSは、2014年の設立以降「チャットコマース」と「接客DX」をメインとして順調業績を伸ばしている企業です。2021年3月現在、チャットコマースの導入先は約400社、エンドユーザーは延べ人数約430万人と多くの人に利用されていることがわかります。
大手企業から約18億円もの資金調達にも成功し、益々の躍進が期待される企業です。
freee株式会社
クラウド会計ソフトのfreeeを中心としたクラウドサービスを展開するfreee株式会社です。
freee株式会社は、2012年の設立以降順調にユーザー数を獲得してきました。コロナ禍でテレワークが普及した影響も大きく、2019年6月期で160,132件だった有料課金ユーザー企業数は、2021年6月には245,003件へと大幅に増加しました。コロナ禍で成功した企業であるといえます。
おわりに
起業をするには、さまざまな知識が必要になります。その中でもマーケティング・会計・税金・資金繰りに関する知識は必要不可欠です。どれが欠けても事業を継続させていくことはできません。起業家は、起業する前に最低限の知識を身に付ける必要があります。
自分だけですべて知識を身に着けることは難しいため、専門家の力を借りることを検討しましょう。会計・税金・資金繰りは、税理事務所や会計事務所に相談することをおすすめします。
税理士事務所や会計事務所の中には、起業したての会社を専門に扱っている事務所やまた起業家の起業をサポートしてくれる事務所があります。起業を行うにはさまざまな手続きを行う必要があり、自分一人で行うには時間が掛かり、作業も煩雑です。税理士事務所や会計事務所に依頼することで、起業家は事業の推進に専念できるでしょう。