これから会社を設立する、またはすでに日本国内で会社を設立している方へ、質問です。今後、海外進出は考えていらっしゃるでしょうか?
これからは、「グローバル市場で戦うこと」を念頭に置いておくことが大切。なぜなら、国内市場だけの展開では、企業が生き残ることは難しいからです。
しかし、海外での会社設立にはどのような方法があるのか、ご存じない方も多いでしょう。そこで、海外での会社設立における「海外支店」「現地法人」「現地パートナー」の3パターンを解説いたします。海外に会社を設立するメリットやポイントを解説するので、ぜひ参考にしてください。
海外に会社を設立するメリット6選
そもそも、海外に会社を設立するのは、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは主な6つを紹介します。
株式会社はだれでも設立できる
会社設立と聞くと、まとまった資本金が必要だと思う人もいるのではないでしょうか。実は、海外であれば、資本金1円から会社設立は可能です。また、日本で会社を設立する場合、取締役は日本に居住していることが条件になりますが、海外の会社は日本に居住したまま取締役になることができます。
つまり、事業計画さえあれば、誰でも株式会社を設立することができるということです。
事業する国の規制に沿ってスタートできる
国によって、会社を設立するときの規制は異なります。日本では新規事業に参入する際、さまざまな認可が必要で時間と手間が必要ですが、海外は日本に比べて規制が緩いケースが多いです。
ある美容店は、「椅子1つと鏡1つのみ」という1人用店舗を展開しようと考えました。しかし、「店舗面積の6分の1を満たす待合室の設置」という設置基準をクリアできませんでした。そういった規制が少ない海外ならば、進出可能です。
日本では不可能なビジネスでも、海外なら実現できる大きなメリットと言えるでしょう。
グローバルビジネスに参入できる
少子高齢化が進む日本の国内市場は縮小の一途をたどっており、グローバルビジネスが視野にない企業は、これから生き残ることが難しいのが現実。海外で会社を設立すれば、簡単にグローバルビジネスに参入することが可能です。
例えば、アメリカの市場規模は日本と比較すると約3倍、インターネット人口であれば4倍以上の差があります。アメリカに会社を設立すれば、それだけの市場を手に入れることができます。これは、会社の将来にとって大きなポイントとなります。
資金調達の敷居が低い国も
日本では、資金の貸し手と借り手の間に銀行が入る「間接金融」が主で、お金を借りる際には信用や実績が重要視されています。新しく会社を設立しようと思っても、資金調達はとても困難なのです。
対してアメリカでは、貸し手と借り手が直接やりとりする「直接金融」が主流なので、自分の事業計画やプレゼン能力次第で資金調達ができるのが特徴です。「エンジェル投資家」や「ベンチャーキャピタル」など、投資に対して積極的な人々や会社が多いのも、資金調達を容易にしている要因の1つです。
節税対策に有利
日本の法人実効税率 は約40 %ですが、国によっては15%制度だったり、税が課せられなかったりするところもあります。現地に住んでいればその恩恵を受けられますし、日本に住んでいても除外規定などを利用すれば大きな節税が可能です。
「高金利」「リスク分散」外貨のメリットを受けられる
日本円以外の通貨を利用するメリットは、日本よりも高い金利を得られる国が多い点です。例えば、日本の金利は0.1%前後なのに対し、ニュージーランドドルは2.6%です。
また、日本円で管理していると、資本金を海外に送る際に手数料が必要になったり、書類を提出したりしなければいけません。海外法人の場合、その国の通貨を利用して現地の銀行で管理するのが通常なので、その手間も必要ないのです。
さらに、日本円だけに管理が集中してしまうと、日本円が暴落した際に大きな被害を受けるリスクがあります。リスクを分散させるという意味で、外貨を管理できるのはメリットでしょう。
海外で会社を設立するには、大きく分けて「海外支店」「現地法人」「現地パートナー」の3つの手段があります。それぞれのメリット・デメリット、具体的な事例を紹介するので、自分にはどの方式が合っているのか、考えてみましょう。
現地法人方式とは
現地法人方式とは、簡単に言えば海外に子会社を作るということ。海外進出をする企業で最も多く見られる方式です。特徴は、本社と同一の事業だけではなく、新規の事業開拓をしやすいこと。日本よりも低い現地の税率を受けられる点が大きなメリットでしょう。
一方、本社とは別の法人として扱うので、現地の会社法で定められている会計・税務・労務などの書類を、本社とは別に作成しなければなりません。例えば、会社設立時に、本社からの資金移動はよくあることです。そのたびに、正式な書類を作らなければならない面倒さもあります。
海外支店方式とは
海外進出の際、既存の事業を拡大しようと思ったときにおすすめなのが、海外支店方式です。支店が海外にあるというだけで、国内にある支店と扱いは何も変わりません。
本社と財布が同一なので、もし支店に赤字が出ても、本社の利益と相殺できます。さらに、本社から商品を仕入れても社内取引扱いになり、経理作業を省けるのもメリットの1つです。
ただ、法人税の申告をする際、財布が同一であるが故に、海外支店での所得であっても、日本で法人税の申告をしなければいけません。現地ではなく日本の税率が適用されることになります。海外の低い税率を受けられないのが、デメリットと言えるでしょう。
現地パートナー方式とは
ここまで紹介した2つの方式を採用すると、自力で現地の販路を開拓しなければなりません。しかし特に中小企業などは、自力で全てを行うのは難しいですよね。そこでおすすめなのが、現地パートナー方式です。
現地パートナー方式とはその名の通り、現地でパートナーをみつけて企業運営を行っていくことです。これを取り入れ、現地の企業に販売代理店になってもらったり、提携したりすることで、現地の情報を1から集める必要がなくなります。初期投資が少なくて済むのも大きなメリットです。
しかし、現地のパートナー企業に、商品やサービスの営業秘密やノウハウを盗られてしまい、撤退に追い込まれてしまうリスクもあります。どのような現地企業を選ぶのかが大切なポイントになるので、しっかり調査しておきましょう。
海外で会社を設立する際のポイント
できるだけ失敗せずに海外での会社設立をするために、以下を確認しておきましょう。
海外に強い顧問を付けるべき
会社にとって顧問とは、専門的な知識を持っているアドバイザーのような存在。「ブレーン」と呼ばれることもあります。海外に会社を設立するにあたっては、特に現地の情報に強い顧問が必要とされます。
具体的には、日本と海外は会社設立に必要な書類などが全く違うので、そういった処理をスムーズに進めるスキルが必要です。さらに、マーケティング戦略などを検討する際に、詳しい情報を持っている人が必要です。
現地の制度や、文化に詳しい人を顧問に選びましょう。
賢い現地法人の選び方
海外に会社を設立する方式は3種類あると上述しましたが、結局どの方式を選べばよいのでしょうか?簡潔にまとめました。
ビジネスモデルにあった現地法人を選ぼう
海外での会社設立を成功させるためには、ビジネスモデルに合った現地法人を選ぶことが大切です。以下の3通りを参考にして、考えてみてください。
- 海外支店方式:現在の事業を拡大したい。
- 現地法人方式:現在の事業の他に新規事業にも広げていきたい
- 現地パートナー方式:自力で販路開拓やサプライチェーンを確保するのが難しい
まとめ
海外で会社を設立するには主に3つの方式があります。それぞれメリット・デメリットがありますが、現地の方々からの信頼を得やすい現地法人方式をとる企業が多いです。
海外での会社設立は、日本よりも規制が緩く、様々なビジネスチャンスとグローバルビジネスというこれからの企業に必要なものが手に入れられるうえに、節税対策にもなります。理想のビジネスモデルに合った方式を選んで、海外で会社を設立しましょう。