株式投資初心者は、投資の方向性が曖昧だったり考え方が身に付いていなかったりで、「なかなかうまくいかない」と悩むケースも少なくありません。初心者は成功例をなぞるより、失敗しない方法やリスクを抑える考え方を勉強し、投資経験を積むことをおすすめします。
当記事では株式投資初心者が知っておきたい失敗例や考え方、おすすめの投資方法などを解説します。
株式投資とは?仕組みや特徴を解説
株式投資とは、企業が発行する「株式」の売買によって行う投資活動のことです。株式売買による差額(売買益・値上がり益)や、株式保有による配当金・株主優待が利益になります。
株式投資の仕組みや特徴をみていきましょう。
株式を発行するのは株式会社
株式とは、資金調達を目的として発行する有価証券です。企業は投資家に株式を買ってもらうことで出資扱いの金銭を得ます。株式を発行し、調達した資金で得られた利益を株主へ還元する企業を株式会社と呼びます。
株式を購入した投資家は金銭と引き換えに株主となり、保有株式数や割合に応じた、経営権・配当を受ける権利などを得ることが可能です。
なお株式は、原則として1単元(100株)単位で購入します。単元未満で購入するには、株式累積投資(るいとう)や株式ミニ投資などを利用します。
一般投資家が購入できるのは上場した株式
一般の方が株式を購入するときは、株式会社と直接やり取りするわけではありません。
また原則として、一般の方が購入できる株式は、証券取引所に上場した企業のものが中心です。
一般投資家は、まず証券取引所との仲介役となる証券会社にて口座を開設し、売買注文を行います。
次に証券会社が投資家の代わりに証券取引所に売買注文をします。こうして一般投資家は、目的の株式を購入・保有・売却ができるのです。
証券取引所に上場していない未上場株式(未公開株)は、原則として一般投資家が売買するのは困難です。
未上場株式を取得するには、相続・贈与や知り合いの経営者との直接交渉、クラウドファンディング、勤務先のストックオプションなどの方法があります。
株式投資はリスク・リターンが比較的高め
株式投資は、有価証券による投資の中でもリスク・リターンが比較的高めです。得られる利益が大きくなる代わりに、損失が大きくなる可能性も高くなっています。
とはいえあくまで傾向があるだけで、株式投資が必ずしもハイリスクハイリターンとなるわけではありません。国の経済状況、政治動向、企業業績、銘柄の種類などで、リスク・リターンの幅に影響があります。
なお株式投資に関する基礎知識や疑問点は、「【初心者向け】株式投資とは?疑問点や基礎知識をわかりやすく解説!」でもわかりやすく解説しています。
初心者でも始めやすい株式投資の方法5選
初めての株式投資で、いきなり1単元(100株)の売買や確定申告ありきの投資などを行うのは、ハードルが高いと感じる初心者の方も多いでしょう。
株式投資の中には少額から始められるものや、非課税制度を利用できるものがあります。
ここからは初心者でも始めやすい株式投資の方法として、次の5つを解説します。
- ネット証券を利用した売買
- 一般NISA
- 株式累積投資
- ミニ株・単元未満株
- ロボット・アドバイザー
手軽な開設や手数料の安さが魅力のネット証券の利用
初心者が証券口座を開設するなら、実店舗を持たずインターネット上のみで株式の売買注文を受け付けるネット証券がおすすめです。おすすめの理由は次のとおりです。
- 店舗を持たずに固定費を下げているので、各種手数料が安い
- パソコンやスマホでいつでも売買注文ができる
- さまざまな取引ツールが使える
- 最新情報や株式チャートをすぐに確認できる
- 専属の担当者が付かず、しつこい営業電話や情が湧いて断りづらい状況などを気にしなくてよい
初心者の場合は、信頼性と安全性を考慮し、大手のネット証券を利用するとよいでしょう。大手ネット証券は主に次のとおりです。
大手ネット証券 | 特徴 |
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SBI証券 | ・取引できる銘柄の数が豊富かつ手数料が非常に安い ・証券口座開設数840万以上、2021年みんなの株式ネット証券比較ランキング1位などトップクラスの実績 |
楽天証券 | ・投資信託や外国株を含めてSBI証券に並ぶ取り扱い銘柄数 ・新規口座開設数4年連続No.1、NISA口座開設数・iDeCo加入数3年連続No.1の実績 |
マネックス証券 | ・マネックストレーダー、銘柄スカウター、マルチボード500などの数多くの取引アプリ・ツールが揃う ・5,000銘柄を超える米国株の取り扱い |
松井証券 | ・HDI-Japan(ヘルプデスク協会)主催の問合せ窓口格付け(証券業界)11年連続1位を獲得 ・創業100年以上の歴史ある会社かつ、インターネット取引の実績20年以上の老舗 |
LINE証券 | ・スマホでの取引を前提としたシンプルかつ利便性の高い操作画面 ・1株数百円からの少額取引にも対応 |
2022年現在では、少数ながら店舗を持つ大手ネット証券や、オンラインサービスを展開する店舗型の証券会社も登場しています。
非課税枠や確定申告関係で始めやすい一般NISA
一般NISAとは、国が設立したNISA制度(少額投資非課税制度)の1つです。非課税投資枠120万円/年の範囲内で購入した株式から出る利益(売買益や配当金)は、全額が非課税になります。
また、開設したNISA口座で発生した利益については、原則として確定申告が必要ありません。投資初心者でも安心して取引ができる制度といえるでしょう。
なお同じくNISA制度であるつみたてNISAで購入できるのは、投資信託のみです。
少額かつ分散投資にもなる株式累積投資(るいとう)
株式累積投資(るいとう)とは、1銘柄につき毎月1万円以上1,000円単位から、同一株を月々で積み立てていく株式投資です。
株式累積投資では、1単元未満の少数から購入できます。例えば本来100株100万円のところを、毎月1株1万円ずつで購入が可能です。積立投資によって購入時期をズラすことで、分散投資による時間分散効果にも期待できます。
ただし、保有株式が1単元に達するまでは名義人が証券会社となり、株主の権利の行使は証券会社が行います(配当金は持分に応じて購入者へ分配)。また、口座管理手数料や株式売買手数料がやや割高になるのがデメリットです。
単元未満で買える少額投資のミニ株・単元未満株
単元未満で安く株式を保有する方法として、ミニ株や単元未満株の購入が挙げられます。
ミニ株とは、株式の10分の1で投資できる取引方法です。ミニ株での投資を、株式ミニ投資と呼びます。配当金は持分に応じて分配され、同一銘柄が合計1単元に達すると、議決権や株主優待の権利を得ます。
単元未満株とは、1単元に満たない株のことです。ミニ株のように、10分の1と単位が決まっているわけではありません。こちらも権利関係が発生するのは、同一銘柄で1単元に達したときです。
少額投資でスタートできるのがミニ株・単元未満株のメリットですが、得られる売買益や配当金などのリターンが少ないのがデメリットです。
AIによる投資プラン提案を受けられるロボット・アドバイザー
買いたい銘柄やポートフォリオ構成などを決めるのが難しいときは、ロボット・アドバイザー(以下、ロボアド)の利用がおすすめです。
ロボアドとは、人工知能(AI)が投資診断やアドバイス、商品運用などの投資サポートをするサービスです。提案から運用をすべて任せる「投資一任型」と、提案を中心にサポートする「アドバイス型」の2種類があります。
知識や経験が乏しい投資初心者でも、気軽に利用しやすいのがメリットです。
株式投資初心者が陥りやすい失敗|確認しておくべき注意点
投資初心者が株式投資を行う際に、陥りやすい失敗があります。具体的には次のとおりです。
- 長期・分散・積立の考え方が身に付いていない
- 流行りやインフルエンサーを信じて脳死で購入する
- 株価上下に一喜一憂してしまう
- 余剰資金以上の取引を行い生活が苦しくなる
- 信用取引などの無理な投資をしてしまい大損する
- 損切りのタイミングがわからず塩漬けにしてしまう
ここからは、株式投資初心者が陥りやすい失敗例や注意点を解説します。
失敗1.長期・分散・積立の考え方が身に付いていない
株式に限らず、投資活動は長期・分散・積立の考え方が基本です。金融庁や大手証券会社でも、投資の基本として推奨されています。
長期 | 数年~数十年単位で銘柄を売らずに保有し、複利効果で徐々に利益を得る考え方 |
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分散 | 複数の企業や国・地域の銘柄を買ったり株以外の金融商品にも投資したりなど、1つの銘柄に集中せずに分散して購入する考え方 |
積立 | 短期間で大量の銘柄を購入するのではなく、定期的に少しずつ積み立てて購入していく考え方 |
失敗2.インフルエンサーを信じて脳死で購入する
SNSが発達した今、流行りの銘柄や有名なインフルエンサーがおすすめする商品などの情報が目に入りやすくなりました。参考程度であれば問題ありませんが、情報を精査せずに脳死で購入するのは危険です。
中には、次に挙げられるような悪質な詐欺・騙し行為が見受けられます。
- 「この銘柄は100%儲かる」など買い煽って分不相応に値を吊り上げ、自分は高値で売り抜ける
- 事実と異なるいい加減な助言にもかかわらず、コンサル料やオンラインサロン料などで不正に金銭を騙し取る
- 金融庁に登録していない者が金融庁や業者を偽って助言・仲介業を行う
投資詐欺については、金融庁からも注意喚起がなされています。情報を鵜呑みにする前に、必ず一次情報やインフルエンサーの実績・評判などを、多方面から確認しましょう。
失敗3.株価上下に一喜一憂してしまう
初心者が株価チャートを見ていると、1日~数日程度の短期間での値動きに一喜一憂し、精神的に疲労するケースが見られます。
デイトレードや短期投資でない限りは、短期間の細かい値動きには反応せずどっしりと構えておきましょう。1日で見ると株価は激しく上下しているように見えますが、1週間・1ヶ月単位で見るとそこまで動いていないケースがほとんどです。
失敗4.余剰資金以上の取引を行い生活が苦しくなる
投資は必ず、生活資金とは別の余剰資金で行いましょう。資金を投入すればするほど利益が出るのは当然ですが、生活資金も投資して大きな損失が出てしまうと、生活が苦しくなるリスクが多大にあります。
「子どもの教育資金や老後の生活費も使い込んでしまった」となっては、取り返しがつかないかもしれません。
余剰資金を作るには、毎日の家計の見直しや、クレジットカードのポイントの利用などが考えられます。
失敗5.信用取引に手を出し大損する
信用取引とは、現金や株式を担保にして、証券会社からお金を借りて取引する方法です。担保したもの以上の価格での取引が可能ですが、つまりは借金をして投資していると同義です。
担保以上の資金を借りて投資することを、テコの原理を意味するレバレッジ効果と呼びます。例えば委託保証金率30%だと、約3.3倍もの取引が可能になります。利益も約3.3倍ですが、損失も3.3倍です。
もし信用取引で損失を出してしまうと、身の丈以上の損失となったり追証(決められた委託保証金率を下回ったときに、追加での担保が必要になること)が発生したりなど、大きな支出になります。
投資経験の浅い初心者にとっては、信用取引は非常にリスクの大きい方法です。現物を売買する、現物取引による投資をおすすめします。
失敗6.損切りのタイミングがわからず塩漬けにしてしまう
投資初心者にとってもっとも難しいとされるのが、保有商品を売却して損失を確定させる損切りのタイミングです。
人間は「損失を確定させるのが怖い」「いつか上がるだろう」といった、失敗を認めたくない心理が働きやすいといわれています。損切りをためらう原因の1つです。
しかし初心者の相場読みは根拠に乏しく、下落したまま株価が上昇しないことも珍しくありません。売りに売り抜けない、塩漬けの状態が続く可能性が高くなります。
初心者が損切りのタイミングを図るには、「購入価格より10%下がったら売る」といった、マイルールを設定しておくのが効果的です。
株式投資初心者から脱却するための考え方
初心者で重要なのは、「とりあえず行動して経験を得る」「自分の興味ある株式を購入してみる」と、恐れすぎず投資活動に挑戦することです。
しかし初心者も経験を積んでいけば、「もっと根拠に基づいて銘柄を選びたい」「自分の理論に基づいて投資したい」と考えるようになるでしょう。
ここからは、株式投資初心者から脱却するための考え方を解説します。
株式投資における指標を覚える
株式指標とは、株式の銘柄を比較したり評価したりするために用いる尺度です。株価の割安・割高や経営状態について、株式指標に照らし合わせて確認することで、その企業に投資すべきかの判断材料とします。
株価指標には、日経平均株価やTOPIX、PER(株価収益率)、ROE(自己資本利益率)、配当性向(当期純利益から配当金がどれだけ支払われたか)などが存在します。
企業の決算書を読めるようにする
株価と企業業績には、大きな相関性があります。企業の決算書を読めるようになることで、企業業績・実施事業から株価を推測しやすくなります。
決算書からは、「どれくらいの資産を持っているのか」「借金はあるのか」「設備投資や配当金にいくらキャッシュを回しているか」などを確認可能です。
上場企業が公表している決算書は、決算日時点での資産状況を記載した「貸借対照表」、1事業年度の収益・費用をまとめた「損益計算書」、企業の営業・投資・財務で動いた現金をチェックできる「キャッシュフロー計算書」などがあります。
決算書は、企業の公式サイトや四季報などに掲載している有価証券報告書や決算短信などでチェックできます。
株価チャートの読み方を覚える
株式チャートとは、1日や1ヶ月といった一定の期間における、株価の動きをグラフ化したものです。
実は株価チャートには、長年蓄積されたデータを根拠とした値動きの傾向があります。「〇〇の動きをしたら株価が上がる可能性がある」「◯回の動きを繰り返したら買いのサイン」といった形です。
例えば「ヘッド・アンド・ショルダー」と呼ばれる値動きをした後は、株価が下がっていく可能性があります。
チャートパターンをいくつか頭に入れて株価チャートをチェックすれば、投資の判断力が磨かれていくはずです。
店舗型の証券会社も利用してみる
ネット証券以外にも、敷居が高い店舗型の証券会社を利用してみるのもよいでしょう。店舗型の証券会社の特徴は次のとおりです。
- 担当者が顧客の資産状況やニーズに応じて、資産運用のアドバイスや金融商品の紹介をしてくれる
- 証券会社の担当者が分析したレポートなどをチェックできる
- IPO(新規公開株)や、委託を受けた非上場株式などを取り扱っている可能性がある
店舗維持費や人件費がある分、手数料はネット証券よりも高めの傾向があるので注意しましょう。
専門家からのアドバイスを受けてみる
自分のライフプランに合わせた投資方法や株式市場の情報について知りたいときは、資産運用の専門家からアドバイスを受けてみるのも1つの手です。
資産運用について相談できる専門家は次のとおりです。
- IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー):資産運用のアドバイスや株式売買の仲介を行う
- FP(ファイナンシャル・プランニング技能士):資産運用や税金、保険などの知識からライフプランの立案・作成を行う
- 証券会社の営業員:証券会社での勤務経験や、自社の金融商品の知識を用いさまざまなサポートを行う
【初心者向け】株式投資に関する2つの疑問点
最後に、株式投資初心者がよく思う2つの疑問点についてまとめました。わからないことがあれば、ぜひ参考にしてください。
株式投資を始めるにはどうしたらよい?
株式投資を始めるには、「証券口座を開設する」「証券口座へ入金する」「株式を購入する」の3ステップを行います。
心理的にも一番ハードルが高いのが証券口座の開設という方も多いでしょう。とはいえ現在は、パソコンやスマホがあれば家で手続きを完了できます。
公式サイトにて本人確認書類などの必要情報をアップロード、または送られてくる申請書に記入し郵送を行い、パスワードや暗証番号を設定します。後はWeb上からマイページにログインし、取引をスタートさせてください。
詳細な方法は証券会社によって異なります。開設したい証券会社の公式サイトなどでご確認しましょう。わからない点があれば、サポートセンターに問い合わせながら進められます。
確定申告はどうすればよい?
会社員の場合、投資による利益(収益-損失や費用)が20万円を超えると、確定申告が必要になります。税務署や国税庁の公式サイトにて確定申告書や必要書類を入手し、記入して居住地の税務署へ提出しましょう。期限は原則として、次の年の2月15日~3月15日です。
ただし、NISA口座や源泉徴収ありの特定口座での取引であれば、原則として確定申告は必要ありません。ケース次第では確定申告したほうが得になる場合もありますが、確定申告が負担となる場合は利用を検討してみてください。
株式投資初心者は失敗例や考え方を頭に入れておこう
初心者が株式投資を行うときは、失敗例や考え方を理解して大きな損失を避けることが大切です。少額で始められる株式累積投資や非課税の一般NISAなどでリスクを押さえつつ、健全な投資活動で経験を積んでいきましょう。
「専門的な見解がほしい」「今後のプランも相談したい」などの希望があれば、IFAやFPなどの資産運用の専門家へ相談してみてください。