投資初心者が株式投資を始める前、「どうやって株を買えばよいのか」「売買タイミングはいつなのか」といった悩みを抱えることは珍しくありません。
当記事では、証券口座開設から始まる株の買い方の流れや証券会社の種類、株式投資の種類、初心者におすすめの株式投資の方法を解説します。
株式の買い方を流れに沿って解説
原則として株式の売買は、投資先の企業と個人が直接やり取りして進めるわけではありません。証券取引所(株式市場)を使って企業と直接取引できるのは、金融商品取引業者として国に登録している者のみです。
一般的な投資家が株式投資をしたいときは、まずは金融商品取引業者である証券会社の口座を開設する必要があります。その後は証券会社を通じて、証券取引所に上場している株式を売買します。
2022年4月4日より、東京証券取引所の市場区分が、一部・二部などから「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに変更されました。名古屋証券取引所でも、市場区分の名称変更がなされています。とはいえ、購入の際に実施することは変わりません。
株式の買い方について、具体的な流れは次のとおりです。
- 証券口座を開設する
- 証券口座へ入金する
- 購入銘柄を決定して購入する
- 保有する株式を売却する
証券口座を開設する
最初の手続きは、証券会社を選んで口座開設を申込むことです。2022年現在では、インターネット上の手続きのみで開設まで進められます。
必要書類等は証券会社にもよりますが、主に以下のものが必要です。
- マイナンバーカード
- 運転免許証+個人番号通知カード
- 郵送の場合は申請書類や印鑑
インターネット上で手続きを進める場合は、上記のうち必要なものを写真で撮影し、写真データを所定の場所にアップロードします。必要事項の入力も行います。
郵送で開設する場合は、所定の申請書類に本人確認証などのコピーを添えて、指定された郵送先へ送りましょう。
開設の手続き後は、証券会社による審査が行われます。審査に通過したときは、数日~数週間のうちに口座開設完了案内やID・パスワードが送付されます。これで口座開設は完了です。
NISA口座・つみたてNISA口座、外国株式取引口座、IPO株式口座などを開設したいときは、開設手続き時にその旨を選択しておく必要があります。
なお、証券会社の口座は他社を含めて複数開設も可能です。開設も無料のところも多いため、「一旦開設だけしておこう」と気楽に構えて問題ありません。
証券口座へ入金する
証券口座を開設した後は、開設した口座へ資金を入金します。口座へ入金したお金を使って、今後株式を購入するためです。
証券口座に入金する方法は、主に「銀行窓口での振込」「ATMからの振込」「インターネットバンキングからの振込」の3種類です。
インターネットバンキングからであれば、自宅から簡単に入金できます。ただし、事前にインターネットバンキングを開設しておく必要があります。
購入銘柄を決定して購入する
入金後は、実際に購入する株式を選択します。「銘柄」「購入数・購入金額」「成行注文か指値注文か」「注文期間」などを決定しましょう。
売買注文を出した後、約定すれば取引完了です。細かい注文方法は証券会社によっても変わるので、事前に確認しておいてください。
以下では「成行注文」と「指値注文」の違いも解説します。
成行注文
成行注文とは、こちらで売買価格を指定せずにリアルタイムで発注する方法です。売買が成立する相手は、売り注文のときは一番高く買ってくれる相手、買い注文のときは一番低く売ってくれる相手です。
スピーディーな取引ができる反面、売買価格が読めずに予想外の価格で取引が成立するデメリットがあります。
指値注文
指値注文とは、こちらで事前に売買価格を指定しておき、希望の株価になった時点で売買を成立させる方法です。指定した値段で購入できるメリットがある反面、指定額にならなければいつまでも売買が成立しないデメリットがあります。
保有する株式を売却する
購入した株式を売却する際は、売り注文を選択します。「銘柄」「売却数・売却金額」「成行注文か指値注文か」「注文期間」などを決定しましょう。
株式の売買取引における利益・損失が確定(利確)するのは、株式を売却したタイミングです。
保有株式の株価が購入時より上がった状態で、売却せずに保有し続けている状態を「含み益」といいます。逆に下落している状態を「含み損」といいます。
保有株式を売って得られるのは、売却益(キャピタルゲイン)です。長期保有で配当金や株主優待による利益(インカムゲイン)を狙う場合は、売却せずに数年〜数十年単位で保有を続けるのが一般的です。
キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを狙うかは、個々人の投資スタイルによって変わります。
証券会社は「店舗型」と「ネット証券型」の2種類
証券会社は、「店舗型」と「ネット証券」に分けられます。
店舗型は、投資会が実際に証券会社の窓口に足を運んで営業を行う証券会社です。専門知識を持つ担当者から、資産運用のアドバイスを受けながら進められるメリットがあります。オンラインサービスを提供する証券会社であれば、パソコンやスマホにての株式売買も可能です。
店舗型の代表的な会社は次のとおりです。
- 野村證券
- SMBC日興証券
- 大和証券
- みずほ証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
一方でネット証券は、インターネット上の操作のみで金融商品の売買が完結する証券会社です。店舗や常駐社員を持たない分、取引手数料が安いメリットがあります。また、営業時間がある店舗型と違い、インターネットを用いていつでもどこでも取引ができる点もネット証券の特徴です。
ネット証券の代表的な会社は次のとおりです。
- 楽天証券
- SBI証券
- 松井証券
- マネックス証券
- LINE証券
- auカブコム証券
証券会社を選ぶ際は、「どんな銘柄を取り扱っているか」「自分の投資スタイルはどうか」「信頼性はあるのか」といった基準で選びましょう。
初心者は手数料が安く、気軽に始められるネット証券型がおすすめです。本格的に投資や資産形成について相談したくなったときは、店舗型の利用を検討するのもよいでしょう。
株式はいつ売買すべき?購入と売却のタイミングを考察
株式の売買取引の基本は、「安いときに買い、高いときに売る」です。売買タイミングを見極めるのは専門家でも難しいとされていますが、押さえておくべき基本的な考え方や売買タイミングは存在します。
以下では株式を購入および売却するタイミングを解説します。
なお、投資リスクの関係上、必ずしも紹介したケースが適切になるとは限りません。あくまで参考情報としてください。
株式を購入するタイミング
当記事で紹介する株式を購入するタイミングは、「株価が割安のとき」「割安株・成長株を見つけたとき」「移動平均線と株価が離れているとき」の3つです。
株価が割安のとき
同じ銘柄の株価であっても、普段から上下を繰り返しています。比較的割安になっているタイミングで購入しましょう。
割安になるタイミングは次のとおりです。
- 権利確定日(配当や株主優待の権利が決定する日)の直後のタイミング(権利落ち日)
- 業績が上方修正されて、まだ株価に反映されていないタイミング
割安株・成長株を見つけたとき
割安株(バリュー株)とは、企業の価値や資産に対して正しい評価がされておらず、実態よりも株価が低い株式のことです。
成長株(グロース株)とは、企業の業績がよく株価にも反映されている株式の中でも、さらに成長が見込めるものです。ベンチャー企業やトレンドの商品・サービスを扱っている企業によく見られます。
株式売買で利益を狙う際は、将来的に値上がりが期待できる割安株と成長株に絞るのも1つの選択肢です。
ただし、割安株・成長株を見極めるには、株価純資産倍率(PBR)や株価収益率(PER)などを用いた企業分析の能力も必要です。
移動平均線と株価が離れているとき
投資に慣れるまで見極めが難しいのですが、移動平均線と株価が離れているタイミングで購入するのも有効といわれています。
移動平均線とは、一定期間における株価の終値(取引終了時の株価)を毎日・毎週・毎月で計算し、その結果を線で繋いでグラフ化したものです。
出典:株価検索 -はじめての方へ- | 日本取引所グループ
この移動平均線と現時点での株価が離れているマイナス乖離の状態は、株式の買い時の1つです。
株価の平均値より株価が大きく落ちているマイナス乖離は、株価の急落が原因であるケースが見られます。すると、一気に落ちた株価が「平均に戻らなくては」と反発の値動きになる可能性があります。
株式を売却するタイミング
株式を売却するタイミングは、投資初心者にとっては非常に難しい見極めになります。株式を売るときは、利益を狙う以上に損切り(含み損を確定させること)のタイミングを図り、リスク軽減を優先することも重要です。
当記事では「損失を出さないための売却タイミング」に絞って解説します。
事前に決めておいた売却・損切りのタイミング
投資初心者が陥りやすいミスとして、損切りができずに株式が塩漬け状態になり、延々と含み損が膨れ上がるパターンが挙げられます。また、上昇トレンドにある株式を「まだ上がる!」と過信し、当該株式の株価が急落して売り時を逃すことも珍しくありません。
投資初心者におすすめしたいのは、事前に売却するタイミングを決めておくことです。「買ったときより株価が10%上がったら利確する」「株価が15%以上下がったら損切する」と設定し、必ず守るように徹底しましょう。
中には、SNS上の悪質なインフルエンサーによる情報に振り回されて、予定と違う銘柄を掴んで失敗するケースも増えてきました。周囲からの意見に盲目しすぎず、自分なりの投資スタイルを維持することが大切です。
投資先の業績が下がったとき
株価は投資先の業績・経営状態によって大きく左右されます。業績が株価へ反映されていない時点でも、持続的に業績が下がっている場合は売却を検討すべきかもしれません。
他の投資家も業績が低迷している企業を見ると、「配当金が期待できない」「落ち目の企業の経営に関わっても仕方がない」と、当該企業株式を売却する方向に動く可能性があります。
投資先の決算情報を定期的にチェックしておき、悪化の兆候を早めに掴めるようにしておきましょう。
初心者におすすめする4つの株式投資の方法
株式は、投資信託や債券での投資と比べるとハイリスク・ハイリターンの金融商品です。株式投資を長く続けるには、高いリスクを承知しつつ、少額で始められる株式投資からスタートするのもよいでしょう。
初心者におすすめする株式投資の方法や考え方として、以下4つを解説します。
- 複数の銘柄や株式以外の金融商品も保有する分散投資をする
- 興味ある銘柄やほしい株主優待など株価以外の要素で選んでみる
- 株式累積投資(るいとう)や株式ミニ投資で始めてみる
- 中長期的目線をもっておく
例えば株式累積投資や株式ミニ投資の場合、原則として100株単位の高額での取引になる株式投資であっても、単元未満・少額から始められます。
以下ではそれぞれの概要をみていきます。
分散投資をする
1つの銘柄にすべて投資するのではなく、「A社とB社」や「飲食業と通信業」といった、複数の会社・業種の株式を組み合わせた分散投資をおすすめします。ある株式の株価が暴落したときに、別の株式の値動きによって損失をカバーしやすくなります。
また、株式以外にも投資信託や債券、不動産などの他の金融商品にも分散するのもおすすめです。
興味ある銘柄やほしい株主優待などで選んでみる
株式投資の本質は「株式を購入することで、投資先の企業活動を応援すること」にあります。そのため、投資初心者は割安株や株式市場などを一旦考えず、自分が応援したい・興味のある企業の株式を選ぶのもよいでしょう。
自分にとって身近な企業の株式であれば、積極的に情報収集ができたり、株価が上がる喜びを感じやすかったりなどのメリットがあります。
また、自分がほしい株主優待があるかどうかで選ぶのもおすすめです。例えば、すかいらーくグループであればガストやバーミヤンで使える株主優待カード、マクドナルドであれば食事優待券が貰えます。
株式累積投資(るいとう)や株式ミニ投資で始めてみる
株式累積投資(るいとう)とは、毎月1万円から定期的に株式を購入していく積立投資です。次に株式ミニ投資とは、通常の株式投資の10分の1の株数で取引ができる株式投資です。
どちらもまとまった資金がなくても株式投資ができるメリットがあります。また、双方とも複数の銘柄への分散投資にも対応可能です。
株主の権利行使(議決権や株主優待)は証券会社が行いますが、配当金は保有数に応じて支払われます。保有数が売買単位である100株に到達すると、保有主は株主の権利が得られます。
中長期的目線を持っておく
株式投資のスタイルは、日々の株価の値動きに合わせて短期間で売買を繰り返す「短期投資」と、数年~数十年単位で同じ銘柄を保有し続けて複利効果で利益を得る「長期投資」に分かれます。
投資初心者は長期投資がおすすめです。複利効果による長期的かつ安定した収益や、日々の値動きに一喜一憂せずメンタルが安定するなどのメリットがあります。
長期投資と短期投資の違いについては、「長期投資と短期投資の違いは?それぞれの特徴を解説」の記事でわかりやすく解説しています。
【初心者向け】株式投資に関するQ&A
最後に、投資初心者が気になる株式投資に関するQ&Aをみていきましょう。
上場していない未公開株を購入するには?
原則として、一般投資家は未上場である未公開株を購入できません。購入するには、当事者同士での合意による譲渡が必要です。
2022年時点では、「上場する予定があるからこの未公開株を購入すべき」と勧誘し、金銭を騙し取る悪質な事例が金融庁などに報告されています。必ず儲かるとの言葉は、金融商品取引法における「断定的判断の提供」として違反となる可能性もあるので、甘い言葉には注意しましょう。
配当金や株主優待がもらえるタイミングは?
配当金や株主優待がもらえるのは、銘柄ごとに設定された「権利確定日(割当基準日)」に、一定以上の株式を保有している者です。権利確定日から数ヶ月後に届くことが多いです。権利確定日やもらえる時期は、投資先によって異なります。
配当金以外の株式保有のメリットは?
株式を保有していると、配当金を受け取る権利(利益配当請求権)以外にも、株式の保有割合に応じてさまざまな権利が発生します。主な株主の権利は次のとおりです。
残余財産分配請求権:投資先が解散する際に残った財産の分配を受ける権利
株の買い方に関する相談はIFAに相談するのもおすすめ
株の買い方や売却のタイミングについては、ベテラン投資家でも悩むときがあるほど難しい要素です。もし株式売買や今後の資産形成についてアドバイスが欲しい投資初心者は、IFA(独立系ファイナンシャルプランナー)に相談するのもよいでしょう。
IFAとは、特定の金融商品取引業者や銀行に所属することなく、資産形成についてのサポートを行う人です。証券会社からのノルマや所属先の方針に囚われず、客観的かつ中立的な立場でアドバイスしてくれます。