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NISAとiDeCoの併用は可能!それぞれの概要やメリット・デメリットを解説

NISAとiDeCoの併用は可能!それぞれの概要やメリット・デメリットを解説

NISA(一般NISAやつみたてNISAなど)とiDeCoは、それぞれ国が設立した資産形成のための制度です。どちらも優れた節税効果や安全な運用を期待できますが、併用することでお互いの弱点をカバーすることも可能です。

当記事ではNISA制度とiDeCoの概要やメリット・デメリット、NISAとiDeCoを併用する際に意識しておきたい注意点などを解説します。

NISAとiDeCoの違い|それぞれの特徴やメリット・デメリット

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NISAとiDeCoは、どちらも「金融商品を運用する」「運用益が非課税になる」という特徴を持った国の制度です。両者の併用について解説する前に、NISA制度とiDeCoの違いについてあらためてご紹介します。

NISA制度(少額投資非課税制度)とは

NISA制度(少額投資非課税制度)とは、証券口座などで開設したNISA口座(非課税口座)内にある一定金額までの金融商品から発生した利益が、すべて非課税となる制度です。非課税となる金融商品の限度を非課税投資枠と言います。

2022年現在のNISA制度の種類は次のとおりです。

  • 非課税保有期間
  • 年間非課税投資枠
対象銘柄
一般NISA(2023年末まで)
  • 5年間
  • 120万円
一定の株式と投資信託が対象
新NISA(2024年1月から)
  • 5年間
  • 122万円(1階部分20万円、2階部分)
  • 1階部分はつみたてNISAと同じ
  • 2階部分は一般NISAと同じ
つみたてNISA
  • 20年間
  • 40万円
  • 国に届け出た長期・分散・積立投資に適した投資信託のみ
  • 購入は積立方式のみ対応(スポット購入は不可)
ジュニアNISA(2023年末まで)
  • 5年間(2023年末以降に非課税期間が終了するものは20歳まで非課税で保有可能)
  • 80万円
一般NISAと同じ

現在では、一般NISAとつみたてNISAの2つがNISA制度の代表格です。iDeCoとの併用を検討する際も、この2つのうちどちらかが基本になります(一般NISA・つみたてNISAは同時に口座を作れない)。

購入できる金融資産の種類は、NISA口座を開設した証券会社や銀行が取り扱っているものに依存します。どこに口座を開設するかは、事前にしっかりとリサーチしておきましょう。

NISAのメリット

NISAのメリットは次のとおりです。

  • 非課税投資枠内であれば、どれだけ利益が出ても金融所得税20.315%が非課税になる
  • 利益が出ても原則として確定申告が必要ない
  • つみたてNISAだと、低リスクの商品・積立方式での購入・少額投資などのおかげでリスクを押さえた投資ができる

税金がかからない点や確定申告が必要ない点などを踏まえると、NISAは投資初心者におすすめできる制度と言えます。

NISAのデメリット

NISAのデメリットは次のとおりです。

  • 購入できる銘柄の種類が限られている
  • NISA口座の利益・損失と他の口座(特定口座・一般口座)の利益・損失とで損益通算ができない
  • 大きな利益を狙いにくい

投資幅が制限される点を考えると、ベテラン投資家や大きな利益を狙いたい方は、特定口座や一般口座での取引がよいでしょう。

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは

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出典 iDeCoの特徴|iDeCoってなに?|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金に上乗せする形で支給される私的年金の一種です。毎月自分で設定した掛金を積み立て、その掛金で商品を運用し、運用益を年金として60歳以降に受け取れます。

掛金は毎月5,000円以上で、1,000円単位で決定できます。掛金の拠出限度額は次のとおりです。

加入資格 拠出限度額
第1号被保険者(自営業者など) 年額81.6万円
第2号被保険者(会社員など)
  • 会社に企業年金がない:年額27.6万円
  • 企業型DCにのみ加入:年額24万円
  • DBと企業型DCに加入:年額14.4万円
  • DBのみに加入:年額14.4万円
  • 公務員等:年額14.4万円
第3号被保険者(専業主婦・主夫) 年額27.6万円

2022年度の法改正によって、「受給開始時期の上限が75歳に延長」「加入上限が65歳まで拡大」などの変更が行われました。

選べる商品を大きく分けると、「元本確保商品」と「投資信託」に分けられます。

元本保証型は定期預金や保険商品、投資信託にはバランス型やREIT(不動産投資信託)などがあります。どの商品を購入するかは、自分で選択が可能です。

運用できる商品はNISAと同じく、制度を申請する運営管理機関によって変わります。商品のラインナップやサービスの充実度などで、iDeCoを開設する機関を選びましょう。

iDeCoのメリット

iDeCoのメリットは次のとおりです。

  • 毎月拠出する掛金がすべて所得控除の対象になる(小規模企業共済等掛金控除)
  • 運用益はすべて非課税となる(毎年非課税のまま受け取り時まで再投資されていく)
  • 一時金で受け取るときは退職所得控除、年金形式で受け取るときは公的年金等控除が適用される

iDeCoは税制上の優遇措置が設定されており、支払時・運用時・受取時のすべてにおいて高い節税効果を得られます。

iDeCoのデメリット

iDeCoのデメリットは次のとおりです。

  • 原則として60歳になるまで引き出せない(流動性が非常に悪い)
  • 各種手数料(口座管理や積立金管理など)がかかる
  • 元本割れのリスクや毎月の支払いによる家計圧迫など、キャッシュ面での管理が大変になる

iDeCoの節税効果は大きいものの、制度を利用中は手元の現金の減りが早くなるのも事実です。自身の資産状況と相談しながら、適切な掛金の金額を設定してください。

NISAとiDeCoは併用可能!メリットとデメリットについて

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NISA制度とiDeCoは異なる制度であり、どちらか一方しか利用できないという制限はありません。併用が可能です。お互いにメリット・デメリットが異なるので、むしろそれぞれの弱点をカバーできます。

例えばiDeCoのみで資産形成を進めている場合、緊急でお金が必要になっても積立分を引き出せません。しかし、NISA制度での資産形成も進めていた場合は、NISA口座の金融資産を売却してすぐに現金を作れます。

一方でNISA制度での資産形成のみの場合だと、iDeCoのような毎月の所得控除や、控除額が大きい退職所得控除・公的年金等控除などの税制を利用できません。老後資金を準備するのであれば、NISAだけよりもiDeCoにも投資したほうがよい成果を得られるはずです。

このようにNISAとiDeCoの併用は、長期的かつ臨機応変さが求められる資産形成において、有利に働くと言えるでしょう。

NISAとiDeCoを併用する際の注意点

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NISAとiDeCoを併用する際は、次に挙げた注意点を意識してください。

  • 現在・将来のキャッシュフローを見直しておく
  • どちらに優先して投資するかはっきりしておく
  • 年齢に応じた配分を意識する

現在・将来のキャッシュフローを見直しておく

NISAとiDeCoを併用する場合、NISAとiDeCoの両方へ投資できるだけの現金が必要になります。もしNISAやiDeCoへの投資にお金を回しすぎると、手持ちのキャッシュが足りなくなり、生活が厳しくなる可能性があります。これでは本末転倒です。

「キャッシュ不足に陥らないよう、事前に収支を見直して計画を立てておけば問題ない」と思われるかもしれません。しかし、自分や親族の病気・けが、勤務先の都合による休職・退職、その他天変地異によるアクシデントなど、予想外のトラブルによる出費が発生する可能性もあります。

そのためNISAとiDeCoの併用は、収入や預金にある程度余裕がある方におすすめします。事前に現在と将来のキャッシュフローを見直しておき、NISAとiDeCoを併用すべきか、どれくらい投資に回すべきかをシミュレーションしておきましょう。

どちらを優先して投資するかをはっきりしておく

つみたてNISAとiDeCoを併用する場合、どちらも毎月決まった金額を積み立てていきます。どちらも途中で金額を変更できるため、時期や投資目的によって「どちらを優先して投資するか」をはっきりしておきましょう。

例えば老後の生活に重きを置く場合はiDeCoを多めに、教育費・養育費のために積み立てる場合は流動性を考えてつみたてNISAを多めになど、資産形成の目的に応じた配分を意識してください。

年齢に応じた配分を意識する

資産形成を始めるときは、始めた時の年齢に応じた投資配分を意識することが大切です。これはNISAやiDeCoにおいても同じです。

以下では20~50代でのNISA・iDeCoの配分について、1つの考え方をご紹介します。絶対の正解ではないので、参考程度にお読みください。

20代の資産形成

20代は老後までは30~40年以上あり、長期投資を始めるには最適な年代です。20代の場合は収入の低さや緊急時の引き出しなどを考慮し、60歳まで引き出せないiDeCoよりも、NISAへの投資を多めにすることをおすすめします。

20代であれば万が一損失が出ても、出世などによる将来的な収入増や再投資などで、損失分を取り返せるチャンスも多いです。一般NISAで株式投資を行ったり、つみたてNISAで投資信託を始めたりなど、元本保証がない少し攻めた投資も視野に入れましょう。

20代後半で収入が増えてきた辺りから、iDeCoへの投資も検討してみるとよいです。

30代の資産形成

30代は結婚・出産・マイホーム購入など、人生における一大ライフイベントを迎える方が多い年代です。20代よりも、まとまった支出が増える点を考える必要があります。リアルタイムでの生活を考慮した、投資と貯蓄のバランスに注意が必要です。

30代の場合、子どもが将来的に高校・大学に進学することを考え、NISAで教育資金を積み立てておくのも1つの手です。とはいえNISAだけでは元本割れのリスクもあることから、NISA制度と併せて学資保険などの商品も準備しておくのがよいでしょう。

また30代は、老後に向けた資産形成についても考え始める時期になります。つみたてNISAやiDeCo、その他長期的に継続できる投資についてしっかりと検討していくべきです。

40代の資産形成

40代になると、老後を迎えるまで10~20年程度まで迫っています。40代から資産形成を始めるときは、積み立て額が少額すぎると十分な資産作りが難しくなります。毎月の積立額を増やす必要があるでしょう。

また40代は、これまで積み立ててきた子どもの高校・大学用の資金が実際に支出される時期です。40代以降は教育資金ではなく、老後資金の積み立てを目的として資産形成が中心になります。

40代は、老後を迎える前につみたてNISAの20年間をフルで使えるギリギリの年代です。NISA制度とiDeCoのうち、自分に必要だと思うほうへ投資を行ってください。損失を抑えて確実に年金を増やしたい場合は、iDeCoの元本保証型商品を運用するのも1つの手です。

50代の資産形成

50代となると、iDeCoの積み立ては最長でも15年(65歳まで)となります、また、つみたてNISAも老後までに20年間の非課税期間が使い切れなくなり、残った年数は年金や退職金での運用となります。そのため50代は、iDeCoやつみたてNISA制度以外の資産形成方法が視野に入る時期です。

5年間で120万円(新NISAは122万円)まで非課税となる一般NISA、通常の株式投資、不動産投資など、50代での資産状況に応じた資産形成をお選びください。

NISAとiDeCoの適切な併用で資産形成を!

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NISAとiDeCoは、それぞれ異なったメリットとデメリットを持つ制度です。資金に余裕がある場合はNISAとiDeCoを併用することで、老後資金から教育資金、マイホーム購入などさまざまなケースを想定した資産形成が可能になります。

併用する場合は、NISAとiDeCoへの投資配分や自分の資産状況・年齢に応じた投資戦略などを事前に検討し、計画的な投資を行いましょう。

もし自分だけで資産形成の計画やNISA・iDeCoの商品選びが難しいという場合は、制度を申請する機関の営業員や、組織とは独立した立場で中立的なアドバイスを行う資産形成のプロのIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などに相談してみるのもおすすめです。

企業の教科書
安藤 正道
記事の監修者 安藤 正道
きわみアセットマネジメント株式会社 取締役

金融商品仲介業「きわみアセットマネジメント株式会社」取締役。
きわみアセットマネジメント株式会社は特定の金融機関に属さず、お客さまのライフプランに最適なアドバイスができるIFA法人です。お客さまの一生涯のパートナーとなり、寄り添います。ご相談は無料ですのでお気軽にお問合せください。

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