「日本経済が不安定だから、貯金だけでなく積極的な資産運用を!」という風潮を、ここ最近は強く感じる方も多いと思います。日本政府も「貯蓄から投資へ」という戦略を立てたり、総理大臣による積極的な投資の呼びかけがあったりなど、資産運用の文字をニュースでもよく見かけるようになりました。
しかし、これまで資産運用に馴染みのなかった方は、そもそも資産運用とは何かをイメージしづらいのではないでしょうか。
当記事では資産運用の概要や種類、初心者におすすめの資産運用の制度を解説します。
資産運用とは?日本で注目される背景
資産運用とは、主に金融商品への投資やその他の資産への配分などを行い、効率的に資産を増やしていくことです。
「株式投資を始めた」といった投資活動だけでなく、「保険料分がいくらか返ってくる保険商品を買った」「円以外の資産も持っておこう」など、現金以外の資産を持つことも立派な資産運用です。
スマートフォンやネット証券の登場、インターネット申込みの普及によって、日本では以前よりも資産運用が身近になりました。しかし、日本で資産運用が注目されつつあるのは、さまざまな将来への不安が見えてきていることも要因として挙げられるでしょう。
以下では資産運用が注目される背景や、個人投資家の状況などについて解説します。
資産運用が注目される背景
消費税や物価、保険料などの上昇の影響で、円の価値が相対的に下がるリスクがある時代となっています。
例えば今1万円で100個買えるものが、物価上昇の影響で80個しか買えなくなったら、結果的に円の価値が5分の4になります。
税金や保険料の上昇で手元に残るお金(可処分所得)が少なくなると、自由に使えるお金がより減少するでしょう。
加えて、年金制度への不安や停滞・減少する賃金や退職金などの社会的状況もあります。
以上のことから、「ただ現金を持っているだけでは、将来の備えにならない」と考え、資産運用に興味を持つ方が増えているのです。
増加する個人投資家
東京証券取引所が発表する「株式分布状況調査」によると、2020年度の個人株主数は延べ5,981万人(各企業分を単純合算した数値で、1人が10銘柄持てば10人とカウント)と過去最高の人数を記録し、7年連続の伸びを見せました。
延べではない個人株主数も、過去7年間で一番多い約1,408万人を記録しています。
金融庁や日本証券業協会の調査でも、国の非課税投資制度であるNISA・つみたてNISAの口座開設数や買付数が右肩上がりで上昇を見せるなど、個人による投資活動が活発化しているというデータが揃っています。
野村総合研究所の予想でも、「今後は若年層を中心に個人投資家が増える」とされています。今後も資産運用への注目度は増していくといえるのではないでしょうか。
資産運用の種類|株式や投資信託以外の商品も解説
一般的な資産運用の種類としては、主に次のものが挙げられます。
- 株式
- 債券
- 投資信託
- 不動産投資
- 保険商品
- 円や外貨の預金
資産運用の種類1.株式
株式とは、株式会社が投資家からの出資を募る目的で発行する、有価証券の一種です。株式を購入した人は、株主としてさまざまな権利を得られます。
株式での資産運用で得られる利益は次のとおりです。
- 購入した金額より高く売ることで得られる譲渡益
- 年に1回~数回、株式会社より配分される配当金・株主優待
- 保有株数に応じた経営権(議決権など)
株式での資産運用の特徴は次のとおりです。
- 他の金融商品よりリスク・リターンが大きい(値動きが大きい)傾向がある
- 自分がほしい株主優待や応援したい企業で投資先を選べる
- 株価チャートや企業業績などを用いて銘柄を選択するのが難しい
株式投資のくわしい解説については、次の記事でわかりやすく解説しています。
資産運用の種類2.債券
債券とは、国や企業が投資家から資金調達を行うために発行する、有価証券の一種です。発行体によって、公社債(国債や地方債)、民間積(社債)、外積などに分かれます
株式との違いは、債券は出資ではなく借入金、いわゆる返済の必要がある借金・融資に分類される点です。
債券を購入してから満期(償還日)まで、決められた利子(クーポンレート)を投資家へ支払います。満期を迎えると、債券の額面金額が払い戻されます。
債券での資産運用の特徴は次のとおりです。
- 発行体の倒産や経営難(デフォルトリスク)がない限り利息や償還金が支払われる
- 利息や償還金は購入時に決まっているので、リスク・リターンが小さい安定した有価証券である
- 償還日前に換金もできるが、金利によって価格変動が起きる
株式投資や投資信託と比べても、安全性が高い投資対象といえます。
資産運用の種類3.投資信託
投資信託(ファンド)とは、運用の専門家が投資家から集めたお金を1つの資金として金融商品に投資し、その運用益を分配金として受け取るという金融商品です。
要は、投資家は「専門家の投資銘柄や運用方針」に投資し、その見返りを得るというイメージでしょうか。
投資信託での資産運用の特徴は次のとおりです。
- 1つの投資信託商品の中にさまざまな投資対象が組み合わさっているため、分散効果によるリスク低減がなされている(元本保証はない)
- 専門家に管理や運用を任せられるので初心者でも購入しやすい
- リスク・リターンが小さく、株式投資より安全性が高く収益性が低い傾向がある
投資信託のくわしい仕組みについては、次の記事でわかりやすく解説しています。
資産運用の種類4.不動産投資
不動産投資とは、不動産を資産対象として購入して利益を狙う投資方法です。賃貸物件を購入して家賃収入を得たり、株式取引のように売買益を狙ったりなどを行います。
一見して資産運用の初心者の方にとってハードルが高いようにも思えますが、実は「株価チャートや企業分析などについての専門知識がなくても始めやすい」「株式ほどいきなり価値が暴落するリスクは少なめである」などことを考えると、投資対象として一考の余地ありです。
不動産投資での資産運用の特徴は次のとおりです。
- 家賃収入による安定した収益が定期的に得られる可能性がある
- 不動産や相続関係の節税制度や住宅ローンによる購入などを利用できる
- 空き室や老朽化による価値の低下や、災害による不動産の損害・破壊などの独自のリスクがある
貨幣ではなく不動産として保有できるので、インフレやその他の経済状況の変化に対応しやすい資産ともいえます。
資産運用の種類5.保険商品
万が一のけがや病気、死亡などに備えるための保険商品ですが、中には年金や満期保険金が受け取れるといった、資産形成に寄与する貯蓄型保険が存在します。
いくつか例を見ていきましょう。
保険商品の種類 | 概要 |
---|---|
年金保険(個人年金保険) | 毎月保険料を支払いながら死亡等に備えつつ、払込期間終了後に保険料を原資とした一定期間の年金または一括受け取りができる保険商品 |
養老保険 | 毎月の保険料が割高である代わりに、死亡時の死亡保険金と満期時の満期保険金の両方が保証される保険商品 |
終身保険(掛け捨てではないタイプ) | 万が一に対して一生涯備えつつ、解約時には解約返戻金として現金を受け取れる保険商品 |
学資保険 | 保険料を支払いつつ、子どもの高校・大学入学の時期を満期として教育資金を受け取れる保険商品 |
なお上記はあくまで一般的な内容であり、保険会社の商品によってはより柔軟な形態の保険商品があります。
保険商品での資産運用の特徴は次のとおりです。
- 自分や家族の万が一に備えながら、将来的にまとまった資金を受け取れる可能性がある
- 専門知識がなくても運用しやすく、収益性も計算しやすい
- 途中解約だと受け取る金銭が少なくなったり、毎月の保険料支払いが負担になったりのデメリットがある
保険料の支払いは、生命保険料控除として所得税から控除できます。保険商品に関しては、収益性を期待するというより、持て余している現金を将来の備えとして有効活用するイメージになります。
資産運用の種類6.円や外貨の預金
他の資産へ配分するだけではなく、円や外貨を預金することも立派な資産運用の一種です。
円の預金
銀行や信用金庫に円を預けておく預金も、一種の資産運用という考え方ができます。理由は次のとおりです。
- 一定期間引き出せない代わりに高金利となる「定期預金」が使える
- 他の金融商品のように元本割れや損失のリスクはほとんどない
- 預け先金融機関が破綻しても、1金融機関ごとの1人につき元本1,000万円+利息が保証される
とはいえ、定期預金の金利については2022年現在だと平均年利率が0.002~0.003%と、100万円預けても1年で3,000円程度にしかなりません。
資産運用というよりは、万が一のときのセーフティーネットといえるでしょう。
外貨預金
円以外の外貨に換えて預金しておくのも1つの資産運用です。外貨預金の特徴は次のとおりです。
- 円よりも金利が高い傾向がある
- 円安局面だと相対的にリターンが大きくなる
- 円に戻す際に手数料や手間がかかる
- 為替相場によってはリスク・リターンが読みづらくなる
外貨預金は、原則として円よりリスク・リターンが大きい貨幣です。
暗号資産(仮想通貨)やFXは投機
昨今では投資先として暗号資産(仮想通貨)やFXの名前も耳にするようになりました。
しかし、暗号資産とFXは、どちらも短期的な価格変動によるギャンブル性の高い投機であるとの見方が強いです。長期的に資産を積み上げていく投資とは別物と、編集部では位置づけています。
例えば、暗号資産として有名なビットコインは、2021年11月には最高で733万円という値段がつきましたが、2022年1月には398万円と約半額となり、さらに数カ月後には500万円代、5月には380万円となっています。これだけでも安定していないことが伝わるのではないでしょうか。
また、LUNAと呼ばれる仮想通貨は2022年5月1日から12日までの間に、99%もzの価格暴落が発生しました。多くの投資家が損失を避けられなかったといいます。
このように、暗号資産やFXなどの投機は資産運用の方法としてはリスク・リターンがあまりにも安定しません。現時点では、資産運用とは別枠で捉えるのがよいでしょう。
初心者におすすめの資産運用の制度
資産運用を始める際は、NISA制度やiDeCo、ポイント投資などの資産運用に関する制度の活用をおすすめします。
NISA制度(少額投資非課税制度)
NISA制度(少額投資非課税制度)とは、一定の購入金額までの金融資産から出た利益が非課税になる国の税制制度です。
制度ごとの非課税枠は次のとおりです。
- 一般NISA(2023年まで):年間120万円まで購入し、最大5年間まで非課税で保有
- つみたてNISA:年間40万円まで購入し、最大20年間まで非課税で保有
- 新NISA(2024年から)年間122万円まで購入し、最大5年間まで非課税で保有
一般NISAは国が認定した株式銘柄や投資信託が、つみたてNISAは国が認定した安全性の高い投資信託のみが対象です。
新NISAは、1階部分がつみたてNISA、2階部分が一般NISAのようになるという、やや特殊な制度になります。
NISA制度を利用した資産運用なら、非課税かつ確定申告が原則として必要なくなるため、投資初心者でも安心して運用できるでしょう。
NISAやつみたてNISAに関しては、下記の記事にてわかりやすく解説しています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、掛け金を毎月一定金額ずつ積み立てていき、「積み立てた掛け金」と「積み立てた掛け金で運用した金融商品(定期預金、保険商品、投資信託)の運用益」を年金として受け取る私的年金制度です。
掛け金額や運用する金融商品は自分で選べます。
iDeCoのメリットは次のとおりです。
- 国が運営主体で安全性が高い
- 元本保証の商品がある
- 掛け金が全額所得控除となるので、所得税や住民税が安くなる
ただし、積み立てたお金は原則として60歳まで引き出せません。流動性の低さがiDeCoのデメリットといえるでしょう。
ポイント投資
ポイント投資とは、楽天ポイントといった共通ポイントで株式や投資信託を購入する投資方法です。ポイントを現金化して商品を購入するものをポイント投資、現金化せずポイントのままで運用しポイントとして還元されるものをポイント運用といいます。
現金を使わずに始められるので、「とにかく投資を経験したい」「安全に始めたい」という方におすすめです。
ポイント投資に対応しているポイントを以下でご紹介します。
- 楽天ポイント
- dポイント
- Tポイント
- LINEポイント
- Pontaポイント
資産運用の初心者はまずは安定を最優先に!
子育てや老後に向けた資金の捻出や万が一の備えとして資産運用を検討することは、今後必要性がより増していくと考えられています。
今回紹介した資産運用を行う際は、大きな損失を避けやすい安定性あるものを目指し、以下の点にも注意しておきましょう。
- 生活費を削ることなく余剰資金で運用すること
- 少額投資といった安全性の高いものから始めること
- 投資の基本である長期・分散・積立を守った投資を行うこと
1人での資産運用に不安がある場合は、資産運用の専門家に相談してみることをおすすめします。相談先としては証券会社やFP(ファイナンシャルプランナー)などが挙げられますが、おすすめはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)です。
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