「単身赴任手当」とは、法律で定められた手当ではないため、企業によって手当の考え方や支給の方針が違ってきます。この記事では、具体的な内容などについて詳しく説明いたします。
公務員や民間の企業に勤めている人の場合、異動や転勤がある業種の人も少なくありません。独身の一人暮らしの場合には該当しませんが、家庭があり、子供さんが学校に通っているなどの場合は二重生活を余儀なくされるため、この「単身赴任手当」が支給されるかどうかということは大事な問題となってきます。
赴任先での生活費や、家族の住む本来の家に帰省する場合の交通費などもかかってきますので、どこまでを手当として支給するか、相場を含めて詳しく説明していきます。
単身赴任とは
「単身赴任」とは、妻帯者が会社からの通達により、家族と離れて「単身」で「赴任」することを言います。
現在の勤務先から他の支店や営業所へ転勤するに伴って、自宅から通勤することが現実的に難しい場合や、通勤時間が短縮される場合に行うものです。単身赴任は、男性が該当する場合が最も多いと考えられますが、近年では、女性の幹部候補が社会勉強のために地方や海外に赴任するケースも少なくありません。
男性が単身赴任する場合には、いままでは奥様に任せていた家事や炊事、転入届や郵便物の移動届など、諸々の業務以外のやらなければならないことがたくさんあり、一人暮らしになれるまでには時間を要す場合があるため、単身赴任をするかどうかに迷う男性も少なくありません。
単身赴任手当の種類
単身赴任手当とは、法律で定められた手当ではないのですが、公務員の場合は人事院の規定により、民間の場合は厚生労働省の「就労条件総合調査」によると平均的な金額が公表されており、一般的に支給されている手当です。
ひとくくりにしている「単身赴任手当」の中には、具体的に、何の項目が含まれるのか説明いたします。
単身赴任手当
単身赴任手当は別名「別居手当」とも呼ばれ、「業務の都合でやむを得ず家族と別居しなければならなくなった」場合に支給される手当です。
地域手当
地域手当とは特殊な地域での就業をする際に支給される手当です。
異動先にもよりますが、極端に寒冷な地で就業をしなければいけない、交通の便に支障をきたすほどの極端に過疎の地などで支給されることがあります。
外地手当
外地手当とは海外赴任の場合に支給される手当です。(他の手当てに比べて手厚い保証のことが多いです)
家賃補助(住居手当)
家賃補助は家賃の一部を会社が補助するというものです。なお社宅がある場合や、会社契約のアパートがある場合は該当しません。
また赴任先の住まいへの引っ越しにかかる金額の一部を補助したり、敷金・礼金の負担、赴任先への移動の交通費用、光熱費や駐車場代を負担する場合もあります。
帰省手当
帰省手当は単身赴任先から自宅に帰省する時の交通費の額の支給です。
一般的な「出張旅費」の場合は、「旅費交通費」として会社から支給され、給与額に反映されないため非課税です。しかし、「帰省旅費」の場合は、「帰省」は「職務」ではないため、法律的には給与とみなされ、経費ではなく、給与扱いとされ課税対象にする必要があります。
また、本社などで会議が行われ、そのついでに帰省する場合であれば、「職務」とみなし、経費扱いの支払いとなるため、給与額には反映されません。
子育て世代や、近年では高齢化社会の影響により家族の介護を抱えている人など、家庭の諸事情があり、家族全員で引っ越しができない環境にある場合、単身での異動を受け入れないといけないことになります。
いくらサラリーマンの宿命とはいえ、当事者からするとなかなか厳しい選択肢になってきます。住宅ローンを払っている場合には、特に二重生活にはどちらの住まいにもお金がかかりますので、手当てが頼りになるのが実情です。
家族の絆も保ちつつ、仕事も責務を全うしてもらいたいというスタンスを維持するためには、時々の帰省を会社側で受け入れすることが必要となります。
単身赴任手当の相場はいくら?
「単身赴任手当」の月額の相場をみていきます。
公務員の「単身赴任手当」
国家公務員の単身赴任手当は、人事院の規定により、基本額が30,000円と定められており、その他に、赴任先の住居と配偶者の住居との間の交通の距離に応じて8,000円から最大3万円の加算額があります。
その他に、住居手当として、最大27,000円が支給されます。さらに、二重生活をしていて、配偶者の住居の家賃を払い続けないといけない場合には13,500円を上限として支給されます。
民間企業の「単身赴任手当」
厚生労働省が、民間の企業実態を把握する調査である「就労条件総合調査」によると、平成27年度の単身赴任手当の平均額は約46,000円となっております。
民間の企業の場合、「単身赴任手当」は法律で定められた手当ではないため、それぞれの会社によって支給する範囲の考え方や方向性が違ってきます。
出張や異動、転勤が多い会社の場合は、一定の条件で平等に支給するために、就業規則の中で、「旅費規程」や「単身赴任手当」について、きちんと定めていることがほとんどです。逆に、幹部以外は外に出向く機会の少ない会社では、ここまで整備されていない場合が多く見受けられます。
ただ、会社側としても、単身赴任を起因として退職されては困るので、1~2か月に1回は出張の名目で帰省させてくれたり、家庭の事情を考慮してくれたりなど、辞められないように柔軟に対応しているのが実情です。
現状として、別居手当は公務員と足並みを揃え、その他に帰省費用を実費額相当負担、家賃の補助は金額の2~5割が公正妥当な範囲だととらえます。
まとめ
家庭持ちのサラリーマンにとって、単身赴任をするかどうかは一大事です。自分ひとりの意見だけで決められるものではありません。もちろん家族の協力と同意がないとできない話です。諸事情の背景を理解しながらも、会社も業務をすみやかに遂行させるためには「単身赴任」をしてもらうしか方法がない場合があります。
単身赴任を引き受ける社員は、二重生活になり、出費も増えるわけですから、当然ながらも会社からの手厚い手当が必要です。就業規則で単身赴任手当が規定されている場合は良いですが、規定や前例がない職場の場合には、赴任した社員が不利にならないように、公正妥当な手当の金額を支給することを念頭に起いて試算しましょう。