近年の「働き方改革」も少しずつ世間に浸透し、平成から令和へと移り変わると同時に、職場で働く労働者の意識も少しずつ変化していることを感じている方も少なくないのではないでしょうか。
年金の受給年齢が少しずつ繰り上げられ、生涯の労働年数も増えている昨今。少しずつ有給の取得率を増やして、「仕事も大事」「自分の時間も大事」。両立をしながら働き方改革の波に乗るための現代の疑問に答えていきたいと思います。
有給休暇とは
正式名称は「年次有給休暇」といい、「有給」や「有休」と訳されることも多いですね。
有給休暇とは、読みのとおり、「1年ごとに更新される、お給料が支払われる休暇」です。すべての労働者に対し、一定の条件を満たすと有給休暇が支給されます。
【有給休暇付与の条件】
- 雇入日から6か月間継続勤務し、かつ
- 労働日数が所定労働日数の8割を超えている
有給休暇の付与日数と給与の取り扱い
1年間に付与される日数は、週の労働時間数と労働日数によって変わってきます(1日から最長10日)。勤続年数により、付与日数が年々増加し、最多で年間20日の付与となり、1年間だけ持ち越すことができます。(最長40日)
有給休暇の付与日数は労働者の労働日数などによって次のように定められています。
有給休暇の付与日数 通常の労働者
フルタイムで働く通常の労働者については、有給休暇の付与日数は以下の表のとおりになっています。
継続勤務年数(年) | 付与日数(日) |
0.5 | 10 |
1.5 | 11 |
2.5 | 12 |
3.5 | 14 |
4.5 | 16 |
5.5 | 18 |
6.5以上 | 20 |
有給休暇の付与日数 パート・アルバイトなど
パートやアルバイトなどの労働日数や労働時間がフルタイムの労働者より少ない場合です。
つまり、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者については、次のように付与日数が定められています。
継続勤務年数(年) |
付与日数 | |||
週の所定労働日数が4日の場合(年に直すと169~216日) | 週の所定労働日数が3日の場合(年に直すと121~168日) | 週の所定労働日数が2日の場合(年に直すと73~120日) | 週の所定労働日数が1日の場合(年に直すと48~72日) | |
0.5 | 7 | 5 | 3 | 1 |
1.5 | 8 | 6 | 4 | 2 |
2.5 | 9 | 6 | 4 | 2 |
3.5 | 10 | 8 | 5 | 2 |
4.5 | 12 | 9 | 6 | 3 |
5.5 | 13 | 10 | 6 | 3 |
6.5以上 | 15 | 11 | 7 | 3 |
有給休暇での給与の支給額
給与についてですが社員の場合には、有給を消化しても基本給から減額されません。
またパートやアルバイトの場合には、雇用契約書の時間数×時給が1日の有給付与額となり、給料に加算して支給されることになります。
有給休暇付与と消化の改善
「年次有給休暇」とは、厚生労働省が管理する「労働基準法」上で、有給の付与日数は平成6年までは、1年継続勤務で最多日数が7日間でした。それ以降、労働者に対して、上記のように付与の条件が良くなりました。
しかし、これを消化できているかというと、公務員はさておき、民間企業ではなかなか自由に取得できていないのが現状でした。近年は、「働き方改革」として、週40時間以内労働、時間外労働時間の見直しや、ノー残業デーの設定、有給消化の促進などが行われ、以前に比べれば働き方自体を見直したことにより少しずつではありますが改善傾向にあります。
有給消化の現状と時季指定義務
有給は「取得しやすい会社」と、「取得しにくい会社」に二分化され、「有給がなくなり、給与が減額されても休む人」と、「有給が常々上限に近い日数を残しているにもかかわらず、消化しない人」と二極化されるというのが現実です。
会社によっては有給を取得できなかったことの見返りとして、「有給の買い取り」をしていた時代もあり、それにより、「消化することが美化」だとされていなかったという経緯もあります。
それを見直し、有給を全ての人に消化してもらおうと国が促進しているのが、昨年より始まった「時季指定義務」です。
これは、年次で有給の付与日数が10日ある労働者で、1年間に5日間、自主的に有給消化をしない場合には、事業主の方で「〇月〇日に休んでください」と時季を指定して、消化してもらわないといけないことになったのです。
これは義務ですので、「年次有給休暇管理簿」を作成し、3年間保存しなければいけないとともに、5日間消化できていない場合には、事業主が処罰を受けることになりますので注意が必要です。
有給の取得率は52%
有給の取得率は、有給休暇付与日数から取得日数を割り返したもので算定します。日本全体では、前述したように「働き方改革」や「時季指定義務」の予告や促進があったからか、少しずつですが、取得率が増えてきています。
- 平成28年 49.4%
- 平成29年 51.1%
- 平成30年 52.4%
有給取得率を向上させる方法
昭和生まれの人は、日本が高度成長期にあったことから、「趣味が仕事」というくらい、働くことが一番大切で、「家族のために働く」など、特に男性は必死に仕事をすることで、自分を美化している時代でした。
それとは反対に、平成生まれの人は、「ゆとり世代」といわれるように、「仕事が一番」ではなく、お金は欲しいけど、自分の時間をとても大切にしたいという、「仕事は二の次」の風潮があります。
そこへ、働き方改革と来るものですから、今の時代、就職や転職する人達にとっても、自分の就きたい会社の「有給取得率」は気になるものです。そこで、有給取得率を上げる企業努力の方法を探ってみたいと思います。
有給を取りにくい雰囲気を払拭させよう
有給を取ることに気兼ねしてはいけません。お互い様なので、会社の就労日でも仕事の段取りをつけて有給をとり、休んだ人の分の穴埋め(フォロー)をできる体制を構築しましょう。
- 有給申請時に恐縮する言葉は使わない。(お忙しいところ申し訳ありません。すみません)
- 社長、上司、マネージャーなど、上位の立場の人が率先して有給を取得する(当然ですが、新人やパート、アルバイトなどは、社員や上層部が休みを取らないのに、自分が有給を消化しようという気にはなりません)
- 有休消化率の高い社員への優遇措置を設けるまたは、リフレッシュ休暇の促進など
有給はかならず1日単位で取らないといけないというルールはありません。半日単位の取得も可能ですし、職場によっては時間単位での取得が可能な場合もありますので、確認してみましょう。
また、時期的に繁忙期で、仕事が忙しくてどうしても休めないという場合には、例えば来客のピークがお昼までなら、午後からは有給消化をするとか、取りにくいが「午後からは帰るよ」と他の仲間に早くから告知して、業務を効率的に仕上げて帰るなどの努力が必要です。(お互い様ですので、この方法で全員が半日消化することが可能となります)
「この業界は忙しいのが当たり前」などと言っていてはいつまで経っても有給を消化することができません。会社から時季を指定されて休むよりは自分の段取りで休んだほうが休みやすいし、気分もラクではないでしょうか。
まとめ
社風など、昔からのルールにとらわれていると、時代の波に乗っていけないばかりでなく、目まぐるしく変わる、みんなの暮らしやすさからも取り残されていってしまいます。
昔は昔。新しいルールを真摯に受け入れ、それが浸透していけば、みんなも働きやすい職場が自然に構築されると思います。そのためには一人ひとりが少しずつ意識づけをして、若年層から高齢者まで、時代に沿った働き方ができるように心がけていきましょう。