新型コロナウイルスの影響により、東京都ではテイクアウト助成金として、「業態転換支援(新型ウイルス感染症緊急対策)」の申請を受け付けています。この助成金は、新規でテイクアウトを始めた飲食事業者に対する支援策で、4月からサービスを開始した場合、あるいはこれから始めようとしている場合に初期経費等に対し、活用が可能です。今回はこの記事で、「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)」の概要や申請方法についてご紹介します。なお、新型コロナウイルスの支援策は日々情報が更新されており、執筆時点(2020年6月9日)から状況が変化する可能性もあります。申請時は最新の情報をチェックするようにしましょう。
東京都のテイクアウト助成金「業態転換支援」の概要
東京都中小企業振興公社が実施するテイクアウト助成金「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)」は、新たにテイクアウト、宅配、移動販売を始める飲食事業者への支援対策です。初期経費等に対し、助成対象経費の5分の4以外で、最大100万円となっています。申請対象は東京都内で飲食業を営む中小企業、個人事業主です。
この業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)は助成金なので、融資とは異なり原則返還は不要です。ただし、今後の事業活動に向けた取り組みにかかる経費の一部から助成金額が決定され、実際の交付は取り組みが完了後(後払い)となります。
助成対象 | 都内で飲食業を営む中小企業者(個人事業主含む) |
助成内容 | 新規でテイクアウト、宅配、移動販売を開始する場合の初期経費等 |
助成限度額 | 最大100万円 |
助成率 | 助成対象経費の5分の4以内 |
助成対象期間 | 交付決定日から2021年1月末まで ※ただし着手日から最長3か月間 ※2020年4月1日以降で交付決定前に着手した経費も実施した確認が取れれば対象に含まれる(3月中に実施した取り組みは対象外) |
申請受付期間 | 第一回:2020年4月23日~5月18日(消印有効) ※以降順次受付、最終受付は2020年11月25日(予定) |
申請方法 | 申請書をダウンロードの上、郵送にて送付 【送付先】 〒101-0024 東京都千代田区神田和泉町1-13 住友商事神田和泉町ビル9階 公益財団法人東京都中小企業振興公社 経営戦略課 業態転換担当宛 |
問い合わせ | 助成金の申請・リーフレットに関すること:03-5822-7232 専門家派遣に関すること:03-3251-7881 その他事業全般に関すること:03-5320-4791 |
東京都のテイクアウト助成金の対象者
東京都の業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)の申請は都内で飲食業を営む中小企業、個人事業主で、新たにテイクアウトや宅配、移動販売を始める事業者が対象です。また、都内に本社または支店登記をしている飲食業者で、「資本金5,000万円以下または従業員50人以下の企業」である必要もあります。
東京都のテイクアウト助成金の主な助成対象経費
業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)は、新たにテイクアウト等を始める場合の初期経費等に対し助成されますが、主な助成対象経費は下記の通りです。システム導入費なども助成対象となるのが特徴といえます。なお、2020年4月1日以降開始であれば、交付決定前に着手した経費も、実施した確認がとれれば対象に含まれます。
- 販売促進費(印刷物制作費、PR映像制作費、広告掲載費 等)
- 車両費(宅配用バイクリース料、台車 等)
- 器具備品費(WiFi導入費、タブレット端末、梱包・包装資材 等)
- その他(宅配代行サービスに係る初期登録料、月額使用料、配送手数料 等)
助成限度額は最大100万円
業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)の助成率は助成率5分の4(80%)となっています。例えば、対象経費が50万円だった場合、助成額は40万円ということになります。また、最大100万円の上限があるため、150万円の対象経費に対しては、助成額は100万円となります。
東京都のテイクアウト助成金「業態転換支援」の申請から支給の流れ
東京都中小企業振興公社が受け付けているテイクアウト助成金「業態転換支援」の申請は、郵送のみの受付となっています。メールやFAX、持参などによる提出は受け付けていません。助成金の交付は、助成金額の確定後に届く確定通知書に基づいて請求することで支給されます。
【おおまかな申請の流れ】
- 東京都中小企業振興公社ホームページから申請書をダウンロード
- 申請書の作成、添付書類の準備
- 必要書類を簡易書留など、記録が残る方法にて郵送
- 交付決定後、申請内容に基づきテイクアウト、宅配、移動販売の取り組みを実施
- 取り組みが完了後、速やかに助成対象経費報告(実績報告書)の提出
- 提出した実績報告書に基づく完了検査の実施
- 助成金額の確定
- 助成金の支払い
申請に必要な書類
テイクアウト助成金「業態転換支援」の申請には、公社ホームページからダウンロードする申請書以外に、「納税証明書」などの添付書類も必要です。
また、添付書類として1期以上の決算を経ており、申告済みで受付印がある「直近1期分の確定申告書の写し」も必要です。1期に満たない未決算企業の場合は、代表者の直近の「源泉徴収票」もしくは「所得税納税証明書その2」を提出できることが条件となります。
その他、保健所や必要となる職員関係の許可を取得していることや、その許可証等の写しの提出も必要です。
【提出が必要な書類】
- 交付申請書(様式第1号)
- 登記簿謄本または開業等届出書
- 納税証明書(事業税、都民税)の原本
- 直近1期分の確定申告書の写し
- 保健所、食品関係各許可証の写し
- 申請金額の根拠となる資料の写し
不明な点は専門家に相談しつつ準備を
助成金の申請は前述の通りさまざまな書類の準備が必要です。不明な点は税理士や社会保険労務士など外部専門家に相談しつつ、準備を進めましょう。
東京都のテイクアウト助成金「業態転換支援」申請時のポイント
テイクアウト助成金「業態転換支援」を検討する場合は、申請する際のポイントや注意点を押さえておきましょう。
感染拡大防止協力金とは別で受給可能
東京都が実施している支援策には、テイクアウト助成金以外に都の休業要請に協力した事業者に対して支給される「感染拡大防止協力金」もあります。「業態転換支援」のテイクアウト助成金は、感染拡大防止協力金を受け取っていても対象になるので、併給が可能です。
申請は1事業者につき1回
テイクアウト助成金「業態転換支援」は、都内の飲食事業者が対象ですが、1事業者につき1回の申請になります。多店舗を展開している事業者の場合、店舗ごとの申請はできないので注意しましょう。
確定通知書から交付まで2~3週間程度
テイクアウト助成金「業態転換支援」の受給は、助成金額の確定後、確定通知書が届いて請求してから2~3週間程度とされています。ただ、申請から交付決定までがおよそ2週間、準備実施期間が最大12週間、完了検査から2~3週間程度で助成金額の確定がされることを考慮すると、トータルで約4か月程度かかえると考えておくほうがよいでしょう。なお、助成金額確定や交付については、書類不備があった場合想定日数より時間がかかることもあります。
不正受給はペナルティ対象
テイクアウト助成金に限りませんが、助成金の不正受給はペナルティ対象となります。虚偽や隠匿など不正手段により助成金の交付を受けた場合、あるいは受けようとした場合は、助成金の返還や、最悪の場合刑事罰が適用されるリスクもあるので注意しましょう。
東京都以外で実施されているテイクアウト助成金例
テイクアウト助成金は、東京都以外の自治体でも実施されています。今回は石川県や広島県の助成金をご紹介します。
【石川県小松市】デリバリー・テイクアウト推進事業助成金
石川県小松市では、市内で飲食店および食料品を主として取り扱う小売業を営む中小事業者、個人事業者がデリバリー、テイクアウト、移動販売業に参入した場合の助成制度を設けています。助成額は5万円で、対象経費は参入にかかる初期費用(消耗品費、器具費、広報費、委託費、車両等の経鼻な改修費)です。申請受付期間は2020年5月1日~2021年1月29日です。1事業者1回限りの申請となっています。
このテイクアウト助成金の対象者は下記のすべての要件を満たす事業者です。
- 小松市内で飲食店及び食料品を主として取り扱う小売業を営む方
- 令和2年2月1日以降にデリバリー事業、テイクアウト事業または移動販売事業に参入した方
- 市税等の滞納がない方
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律第2条第5項に該当する性風俗関連特殊営業及び第35条の2に規定する特定性風俗物品販売等営業、暴力団員等でない方
【広島県】テイクアウト・デリバリー参入促進事業助成金
広島県では「テイクアウト・デリバリー参入促進事業助成金」という名称でテイクアウト助成金が実施されています。県内に主たる事業所を置く飲食業や宿泊業の中小事業者で、新たにテイクアウトやデリバリーなどの事業に新規参入する事業者の助成制度です。
助成額は上限30万円で、助成率は10/10となっており、販売促進費、配送用車両費借上料、梱包・資材等の購入費、店内等内装工事費が対象経費に該当します。受付期間は2020年5月7日~7月31日までとなっていますが、予算枠に達し次第終了となるため、検討している場合は早めの申請をおすすめします。
まとめ
東京都のテイクアウト助成金「業態転換支援(新型コロナウイルス感染症緊急対策)」は、新たにテイクアウトやデリバリーなどをはじめた事業者に対する助成制度です。最大100万円まで助成されるので、申請が認められれば新規参入するための初期経費の一部を賄うことができるでしょう。
ただ、申請にはいくつか書類の準備が必要です。不明な点は、税理士をはじめ外部専門家の手を借りつつ、申請することをおすすめします。また、新型コロナウイルス関連対策は日々状況が変化し、情報が更新されています。申請を検討する際は、事前に最新の情報を確認の上、準備を進めましょう。