税金・税務

効果的な法人の節税方法10選|税務調査にも耐えられるノウハウを徹底解説!

効果的な法人の節税方法10選|税務調査にも耐えられるノウハウを徹底解説!

法人の経営で利益が上がるようになると、節税策が気になります。しかし、無駄なものを買って現金を無くすだけの節税では意味がありません。また、脱税的な節税ではなく、税務調査を受けても堂々と説明できる説明が必要です。

今回は、効果的な法人の節税ノウハウを解説します。節税のノウハウはこれだけではありませんが、基本となる考え方を押さえておけば、ほかの節税方法にも応用できるでしょう。
最後には、事業年度内の時期別に検討すべき事項についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

法人と個人の違い

法人と個人の違い

節税を考える際に、よく比較されるのは法人と個人事業主の違いです。新規事業を立ち上げようと考えたときに、法人にするか個人事業主にするか、どちらを選択するほうが良いのか悩む方は少なくありません。

法人と個人で最も違う点として、それぞれかかる税金が異なるということです。以下ではその違いを簡単に解説していきます。

個人事業主の所得税

個人事業主には所得税がかかります。所得税とは、個人が商売をして稼いだ利益などにかかる税金のことです。1月から12月の間に得た1年分収入から必要経費などを差し引いた残額が、所得税を計算するもとになる所得になります。

個人事業主の節税の方法としては主なものは、次のとおりです。

  • 青色申告をする
  • 取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を購入する
  • 短期前払費用として、決められた条件のもと一年分の経費を前払いする
  • 小規模企業共済制度や中小企業倒産防止共済制度に加入する
  • iDeCoを利用する
  • ふるさと納税を行う

法人の法人税

法人税とは、法人が事業活動によって上げた利益に対して課せられる税金です。法人税の納税額は、会社の益金から損金を差し引いた所得金額に税率をかけて、税額控除額を差し引いて算出します。少し専門的になりますが、益金や損金は税法上の概念であり、会計上の収益や費用とは若干異なるのが特徴です。

( 益金 ー 損金 )×  税率 = 法人税の納税額

法人税の計算では、会計上の収益や費用をそのまま用いるのではなく、税務調整を行って税法上の益金と損金を計上して最終的に納税額を算出します。

個人事業主に比べ、計算方法や税法が複雑化している法人税。その代わりではありませんが、法人での節税方法は多岐にわたります。以下では、法人における節税方法を更に詳しく解説していきます。

 

効果的な節税方法10選

効果的な節税方法10選

法人で節税を行っていくためには、合法的にきちんと節税し、経費に上げるべきものは上げることで、キャッシュを減らしすぎないことが大切です。バレなければいいという考えで、違法な節税方法をとってしまうと結果として、罰金など大きな負債を背負うことになりかねませんので、合法の範囲内で検討していきましょう。

以下では、すぐに取り組める節税方法を紹介していきます。このほかの節税をする際にもこれらの考え方は役に立つでしょう。ぜひ参考にされてください。

1.旅費規程を整備して旅費を支給する

出張が多い会社では、旅費規程を整備するだけで節税することができます。旅費規程で出張代を決めておけば、実際にかかった費用以上の金額を経費にできるのです。

たとえば、あるエリアへの出張の際の交通費と宿泊費を定額で決めておけば、実際にはかからなくても旅費を支給できます。

ただし、旅費規程に定める額は常識の範囲内に収める必要があるので注意しましょう。高すぎる料金設定だと、税務調査で認められない場合があります。

2.役員報酬を計上する

法人は、個人事業主と異なり自分の役員報酬を計上できるのがメリットです。ぜひ役員を就任させて報酬を払いましょう。

ただし、報酬を払いすぎると受け取った個人の所得税が高くなりすぎる場合があります。法人の所得を圧縮でき、個人の所得税や社会保険料を圧迫しないように適切な報酬設定をしましょう。
会社の規模や業種・役職で相場をしておかないと、否認されるケースもあります。自分以外の人を社外取締役などにして報酬を払う場合も同様です。

報酬額は次の事項を守りましょう。

  • 年度中は毎月同額が支払うこと(税務署への届け出は不要)
  • 役員への賞与は、あらかじめ税務署に届出を行うこと
なお、税務署に届け出をする期限は、次のうちのうち、いずれか早い日と定められています。

  • 株主総会などの決議した日から1ヵ月以内
  • 事業年度開始日から4ヵ月以内

3.未払費用を経費にする

決算では、実際に支出した費用だけではなく、未払費用を経費にできます。未払費用を計上すれば、高い節税効果を期待できるでしょう。未払費用とは、今期に支払い義務があるものの支払い時期の関係で、実際に支払えないものです。

節税効果が高いものは次の3つです。

  • 決算賞与
  • 社会保険料
  • 社員に支払う給与

4.赤字を繰り越す

法人の決算では、今期や過去に赤字が発生している場合、その赤字分を今期や来期以降10年間黒字になった年度の所得と相殺することができます。赤字を事業の黒字と相殺できるため、納付すべき法人税額を抑えられるのです。この節税を「欠損金の繰越控除」といいます。

ただし、控除額は資本金により違うので注意しましょう。資本金1億円以下の中小企業は全額を繰り越し控除できますが、資本金1億円以上の大企業は50%が控除限度額です。

5.貸倒引当金を計上する

貸倒引当金とは、売掛金など回収が見込めない債権を費用化できる勘定科目です。貸倒引当金は損金になるので会社の所得を圧縮する効果があります。資本金等の金額が1億円以下の中小企業等で、貸倒引当金の繰入限度額を定めているのは次の2つの方法です。

  • 個別に取引先の事情に基づいて評価する債権(個別法)
  • 一括して過去の貸倒れの実績に基づいて評価する債権(一括法)
一括法では、業種ごとに決められた法定繰入率で計上できます。貸倒引当金はすべての債権で計上できるわけではありませんが、回収ができない売掛金や貸付金不良債がある場合は、節税できる可能性があるのがメリットです。

6.自宅を社宅にする

自宅を法人で借りて社宅にすれば、その家賃の全額を経費にできます。中小企業の社長が社宅に住めば、節税になるのです。また、従業員の自宅を法人で借上げて社宅としても、家賃の50%程度を経費にできます。基本的に福利厚生費と認められるためです。

なお、賃貸ではなく購入した場合も、住宅の取得費や固定資産税、減価償却費が法人の経費と認められるので、覚えておきましょう。

7.自家用車を社用車にする

法人の業務で自家用車を利用している場合には、社用車にするのも良いでしょう。法人へ売却すれば、車の取得費だけでなく、車検代などの維持費や車両保険料も経費計上できるので節税になります。

8.在庫の処分費や評価損を計上する

会社の在庫が売れ残っていたり、古くなっていたりする場合は、記録を残しておけば積極的に処理をすることで節税になります。古い建物や機械などの固定資産も同様です。

不要な在庫を処分して、売却損が発生すると経費にできます。また、廃棄すれば除却損を計上することが可能です。さらに、在庫の価値が下がっているのであれば、評価損を計上できます。

ただし、評価損を計上する場合は、書類や写真を用意して客観的に証明できるようにしておきましょう。

9.短期前払費用を活用する

短期前払費用は、会計年度をまたいで利用するサービスの対価を前払いする場合に費用として計上できます。たとえば、次のようなものを1年分前払いすれば、経費として節税できるのです。

  • 消耗品費
  • サーバー代
  • 生命保険料
  • 借入金利息
  • 家賃
もし月払いしているものがあれば、年払いにすれば節税できます。

ただし、実際の支出が伴う点と、毎年同じ払い方をしなければならないため、初年度のみ節税効果がある点には注意しましょう。

10.保険・共済に加入する

社長や社員の退職金や福利厚生対策として、生命保険に加入すれば、支払った保険料の一部を損金として算入できます。

ただし、保険によって経費に計上できる金額は異なるので確認しておきましょう。
No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)|国税庁

このほか、経営セーフティー共済への加入も節税効果があります。取引先の倒産による経営難や連鎖倒産を防ぐ制度で、掛金を損金にすることが可能です。

時期別節税対策

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節税対策は、決算期ギリギリに行っても十分な効果を発揮できません。決算期を基準として時期別に行うべきものがあります。平素の月次決算から利益を予想して活用できる節税策がないかを検討しておくと、役に立つでしょう。

1.月次決算で利益の予想を立てる

月次決算で益金と損金を集計し決算期の所得の予想ができれば、どのような節税対策を講じられるか検討しやすくなります。毎月の積み重ねがあれば、確定している月分の利益を集計して、残りの月分の利益もある程度予想できるでしょう。このとき、売掛金があれば今期中にどのくらい回収できそうか、買掛金も同様に目処を立てておくと良いです。

また、月次決算ではどこまで試算を行うかによって、最終的な利益を予想する上で大切になります。減価償却費まで差し引いておけば、決算とかなり近いものとなるでしょう。こうして積み上げてきた月次決算を元に、期末の利益を予想しておくと、採用できる節税策も具体的になってきます。

2.決算期3ヶ月前には、節税チェックリストを洗い直す

決算期3ヶ月前にさしかかる頃には、今期に採用できる節税策の最終チェックを行いましょう。3ヶ月前からでも使える節税策がないか、自社にあった施策がもれなく採用されているか確認が必要です。

節税にはいろいろな方法があります。今回紹介した10のノウハウのほかにも、有効な節税方法があるのでリスト化しておくとよいでしょう。3ヶ月前ではできないこともありますが、リスト化しておけば来期の早いうちからも検討できます。今回説明した項目以外にも、リスト化に役立つものを挙げておくので、必要に応じて検討してください。

  • 取引先との飲食費や交際費を経費にする
  • 社員旅行を実施する
  • 健康診断を実施する
  • 30万円未満の消耗品の購入費用を損金計上する
  • 資格取得費を支給する
  • 中小企業投資促進税制を活用する
  • 修繕費などの経費の確認
  • 少額資産を取得する
  • 特別償却か特別控除に該当する資産を取得する
  • 中古資産を取得する
  • 不動産投資を行う
  • 子会社を設立する

3.決算後に役員報酬を決定する

節税の中で、もっとも効果の高いのは役員報酬の増額です。決算が終了した後は、適切な役員報酬額について検討しましょう。金額的に一番効果がある節税なので、報酬金額と法人の利益に対する影響について、しっかりシミュレーションしておくことが必要です。
役員報酬が高すぎると、受け取った個人の所得税や社会保険料が大きくなりすぎてしまうので、負担が大きくならないように中止しましょう。

4.決算後に支払う納税予定額を整理する

法人税をはじめとして、法人に関する申告と納税は、決算日から2ヶ月以内のものがほとんどです。3月決算の法人が多いので、特別な申し出をしなければ5月末までには納税申告しなければならないことが多くなります。

また、期末に限らず、年間を通じてなにかしらの税金(法人税・消費税・源泉所得税の予定納税を含む)や社会保険料を納めることが多いです。

税務調査で指摘されやすい節税

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法人として行うことのできる節税方法は、個人と比べて大変多岐にわたることが特徴です。節税を指南する書籍やサイトでも、たくさんの方法が紹介されていますが、税務調査を受けた際には否認され課税されるものもあるので注意しましょう。脱税的で悪質な場合は、本税の追徴のほかに重加算税が課されることもあります。

一方、全額を損金にすることはできないが按分により一定割合で認められる経費は立派な節税です。

ここでは、脱税をクロ・節税をシロとして説明するとともに、按分など計上可能なグレーな節税についても触れていきます。

クロとシロの節税

節税策には、税務調査を受けても大丈夫なシロの節税と、調査で指摘されて否認されるクロの節税があります。事業を行う上で必要な経費は当然経費に計上できますが、1人での飲食代など経費にできないものがあります。どんな内容でも経費として申告できますが、税務調査の際にその必要性や妥当性を国税調査官に説明できなければなりません。

次のような脱税は厳に慎みましょう。

  • 売上を隠す
  • 経費を水増しする
  • 架空の経費や人件費を計上する

グレーな節税とは

グレーな節税とは、按分割合など説明を加えて妥当性が認められれば経費にできるものです。たとえば、自宅を事業用として使っていれば、面積按分や使用時間按分で経費に計上できます。

ほかにも、飲食代や旅費などをプライベート用と事業用と区分して整理して説明できれば、事業用の損金として十分認められるでしょう。

お金のかかる節税とかからない節税

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節税策というと、期末に不要なものを大量に買ってキャッシュを減らすことばかりを思い浮かべるかもしれませんが、お金のかからない節税もあります。節税目的で手持ち資金を減らしてしまっては、何のための節税かわかりません。残すべき資金は残しておいて、事業が継続成長できるようにしましょう。

ここでは、お金のかかる節税とお金のかからない節税について説明します。

お金のかかる節税

お金のかかる節税は、不要なものやサービスのために支出をすることが多いです。社員の福利厚生費など必要なものもありますが、あまり必要のないものを購入するだけでは意味がありません。キャッシュが不足し、将来にはつながらない節税方法といえるでしょう。

お金のかからない節税

お金のかからない節税とは、実際に支払っているものを経費化したり、税金の繰り延べをしたりしてキャッシュを確保する方法です。
たとえば、お金のかからない節税には、次のようなものがあります。

  • 役員報酬を最適な金額にする
  • 旅費規程を作成する
  • 在庫の評価を見直す
  • 特別償却や税額控除を適用する
これらの基本的なことを行うだけでも、節税効果は大きいでしょう。

まとめ

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法人の節税対策は多数存在します。しかし、お金を使う節税策ばかりでなく、お金を使わない方法も大切です。お金を使わない節税は、資金繰りを圧迫することなく、資金を設備投資や人件費などにも充てられます。くれぐれも、大きな節税をするために不要な出費をしないように気をつけましょう。

節税対策は、税理士などの専門家のアドバイスを受けるのも良いです。税金対策として利益や資金を減らしすぎると経営を圧迫することになります。また、脱税的な節税を行うと税務調査で指摘を受け、重加算税を課せられる危険性もあるので十分な注意が必要です。正しいノウハウに基づいて節税を行うようにしましょう。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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