税金・税務

【法人税】令和3年の税制改正!各省庁の要望からみる改正の見通し

【法人税】令和3年の税制改正!各省庁の要望からみる改正の見通し

毎年12月に主要な税金の改正点が税制改正大綱として発表されます。実はこの税制改正は秋ごろに出される各省庁の要望をもとに検討されているのはご存知でしょうか。

本記事ではすでに発表された各省庁の税制改正の要望をもとに、法人に関係ある論点を中心に、どのような改正が見込まれるのか、解説していきます。設備投資を促進する制度も期待されますので、自社の事業展開のなかで利用できるものがないかぜひチェックしてみてください。

【令和3年の税制改正】研究開発税制の対象拡充

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すでに導入されている研究開発税制について、経済産業省より制度を拡充する要望が出されました。

研究開発税制とは企業が研究開発を行っている場合、法人税額から、試験研究費の額に一定割合を乗じた金額を控除できる制度です。

主な要望内容については以下のようなものがあります。

  • 控除上限の引き上げ
  • 今まで対象外だったクラウドサービスや製品開発のために用いられるツール等、自社利用ソフトウェアに係る試験研究費についても対象に含める
  • 自社を実験場とした研究開発行為に係る規定の明確化
  • オープンイノベーション型の制度の見直し
  • 令和4年度末までの適用期限の延長

特に経済産業省としては、現行の研究開発税制では、次のような課題を抱えていると考えているようです。

  • 一定の控除上限があるため、企業が研究開発投資を増加させることに対するインセンティブが限定的
  • リアルデータ・AI を活用したビジネスモデルの転換に不可欠なクラウド系ソフトウェアの研究促進

今まで領域が限定されていた研究開発の対象や控除上限を広げることで、税額控除が受けられる範囲が広がることが期待されます。特にクラウドサービスを提供している企業にとって追い風となる可能性がありますので、今後も注視が必要です。

出典:試験研究を行った場合の法人税額等の特別控除の拡充及び延長

【令和3年の税制改正】コロナに伴うビジネスモデルの転換・デジタルトランスフォーメーションの推進

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新型コロナウイルスの影響でビジネスモデルの転換を行う企業が増えてきました。また社会全体としてもデジタルトランスフォーメーション(DX)の要請が強く、このようなビジネスモデルの転換やDXを推進する施策が経済産業省より要望として出されました。

例えば新しい生活様式を新たなビジネスチャンスとすべく、EC 販売の拡大など、非対面型ビジネスモデル転換への取組を支援することが挙げられます。

またDXについては大企業と中小企業間の取引のデジタル化やIoT、AI等の活用による物流の最適化・効率化など、サプライチェーンにおけるデジタル化の促進。ほかにも AI、ロボットの導入を推進する点や衛星データの利用拡大を図る点が要請されています。

これらの要請につき、具体的にはこれらのビジネスモデルの転換やDXに伴う設備投資について、特別償却や税額控除などの税制優遇措置が導入される可能性が考えられます。

出典:新型コロナウイルス感染症の影響等による産業構造の転換を踏まえた我が国企業の産業競争力の強化に資する税制措置の検討

 

(追記 2020年12月25日)

12月10日に税制改正大綱が発表されました。

今回の改正の中でも目玉となる、デジタル化を後押しする施策についてこちらにまとめてあります。

【令和3年の税制改正】申告書の押印不要

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新型コロナウイルス感染症を契機に、経済産業省より原則として行政手続きの書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直すべく、要望が出されました。

特に税務手続きに関して、今まで電子申告での申告手続きは押印不要でしたが、紙での申告は会社の代表者の押印が求められていました。この押印を見直し、手続きの緩和を見直すとともに、税や社会保険での電子化が促進されることが展望されます。

出典:電子帳簿保存制度等を含む申告・納税手続に関する制度及び運用に係る所要の整備

 

(追記 2020年12月29日)

申告書の押印不要制度について、詳細な記事を読みたい方はこちら

【令和3年の税制改正】ハンコ不要となる書類・引き続きハンコが必要な書類は?

【令和3年の税制改正】印紙税のあり方の見直し

経済産業省より印紙税に伴う事務負担や税負担を公平・簡素にするよう要望が出されました。

収入印紙は一定の領収書や契約書などに張り付ける切手状の紙です。飲食店や小売店では5万円以上の領収書等に、一般企業などでは契約書の内容に応じて決められた金額の印紙を張り付けることが義務付けられています。

この印紙の貼り付けが事務負担として非常に重たい点が、民間で長らく問題視されていました。例えば飲食店や小売店のレジ担当が印紙を理解しておらず、貼り付け忘れることが多くあり、税務調査で貼り付け忘れを指摘されるケースが後を絶ちませんでした。

税務調査の担当官も印紙の貼り付け忘れを「指摘しやすいポイント」として必ず指摘する部分といえます。

このような背景のなか、電子決済・電子決算などが増大しており、印紙を張り付けるという行為が取引実態にそぐわないとして、経済産業省の要望が出されました。

「印紙を貼り付ける」行為に代わる、より簡素な手続きになることが期待されます。

出典:印紙税のあり方の検討

【令和3年の税制改正】サテライトオフィス整備に係る軽減税率

新しい生活様式の一環としてテレワークが普及するなか、テレワークを安心して行うことができるセキュリティの高いサテライトオフィスの整備が求められています。

そのような中、総務省から一定のセキュリティ水準を確保したサテライトオフィスの整備を行う企業が、サテライトオフィスの整備に際して取得した設備に関し、法人税の軽減措置を行う旨の要望が出されました。

具体的にはサテライトオフィスに関する設備投資であるLAN設備、サーバ、セキュリティカメラ設備、複合機などの取得価額に対し、30%の特別償却や5%の税額控除が要望されています。

出典:サテライトオフィス整備に係る軽減措置の創設

令和3年の税制改正は続報をチェック!

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各省庁の改正要望を確認すると、コロナウイルス関連に伴うデジタルトランスフォーメーションや事業転換に関係する税制が多く見受けられます。

企業のなかには、今までのビジネスモデルの変更を余儀なくされているところも少なくありません。事業転換などの際にはうまく節税オプションを活用しながら、キャッシュフローをコントロールしていきましょう。

税制改正について続報がわかりましたら、引き続き「企業の教科書」でもご案内していきます。

※本稿でご案内している内容は各省庁の税制改正要望であり、必ずしも正式な改正案として採用されるわけではありません。

出典:財務省 令和3年度税制改正要望

 

(追記 2020年12月25日)

12月10日に税制改正大綱が発表されました。

今回の改正の中でも目玉となる、デジタル化を後押しする施策についてこちらにまとめてあります。

 

企業の教科書
記事の監修者 宮崎 慎也
税理士法人 きわみ事務所 代表税理士

税理士法人きわみ事務所の代表税理士。
会社の立ち上げ・経営に強い「ビジネスドクター」として、業種問わず税理士事業を展開。ITベンチャーをV字回復させた実績があり、現場を踏まえた的確なアドバイスが強み。会社経営の問題を洞察したうえで、未来を拓くための手法を提案することをモットーにしている。

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