プライベートバンクとは、数億円単位の資産を持つ富裕層向けにサービスを提供する特殊な金融機関です。富裕層だからこそ利用できる、一般的な金融機関にはない金融商品・コンサルティングサービスなどを提供しています。
一言にプライベートバンクといっても、現状の資産残高や各社の強みなどによって、自分に合うサービスは変わってきます。自分に合うプライベートバンクを選ぶには、選び方のコツを押さえることが大切です。
当記事ではプライベートバンクの選び方として6つのポイントと、日系・外資系のプライベートバンクの違いを解説します。
プライベートバンクとは?
プライベートバンクとは、一般的な金融機関と異なるさまざまな資産形成に関するサービスを提供する、富裕層向けの金融機関です。預かった資産の運用や保全、信託、売買などについて、専門家であるプライベートバンカーが長期的にサポートを行います。
担当者は法律や金融、税務に関する相談などにも対応できることから、運用に関することだけでなく資産形成に関する総合的なコンサルティングを受けられます。
プライベートバンクの選び方を解説する前に、「そもそも自分はプライベートバンクを利用すべきか」の判断材料として、プライベートバンクの特徴についてまとめました。
プライベートバンクを利用できる人(審査基準について)
プライベートバンクは、原則として審査に通過しなければ利用できません。数千万円~1億円以上の資産額やクリーンな身元関係、人脈などが主な審査基準になります。
詳細な審査基準は、利用するプライベートバンクによって変わります。審査内容は非公開なケースが多いので、窓口などにてご確認ください。
プライベートバンクのメリット・デメリット
プライベートバンクは、一般的な金融機関とは異なる特徴を持っています。プライベートバンクのメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
プライベートバンクのメリット
プライベートバンクの主なメリットは次のとおりです。
- 顧客数が絞られているため、担当のプライベートバンカーと長期的な信頼関係を結びやすい
- 平均利率が約3~10%と定期預金の0.001~0.003%などよりも高い傾向がある
- 取扱金融商品の数が豊富で、一般的な証券会社や銀行にはない、富裕層向けの複雑な金融商品(私募仕組債券や優先株・優先出資証券など)なども提供している
- 希望の運用方針、個人の資産状況などを考慮した、プロのプライベートバンカーによるオーダーメイドサービスを受けられる
- 顧客の資産が増えるとプライベートバンクの手数料も増えるため、顧客との利益相反が起こりにくく、顧客に寄り添ったサポートを受けやすい
- 「資産や身元関係の審査に通過したプライベートバンクの顧客」というステータスが手に入り、会員制サービスなどで優遇される可能性がある
プライベートバンクのデメリット
プライベートバンクの主なデメリットは次のとおりです。
- 手数料の割合や運用状況によっては赤字になる可能性がある
- 一定以上の資産を持っていないと利用ができない
- 口座を開設するまでにさまざまな審査や面談、その他手続きが発生する
プライベートバンクの選び方|申込み前に見るべき6つのポイント
プライベートバンクの選び方として、6つのポイントが挙げれらます。順を追ってみていきましょう。
- プライベートバンクの健全性で選ぶ
- 最低預入金額で選ぶ
- 日系・外資系の特徴の違いで選ぶ
- 手数料の違いで選ぶ
- 担当者との相性で選ぶ
- 取扱商品・サービスで選ぶ
1.プライベートバンクの健全性で選ぶ
多額の資産を預けることから、プライベートバンク自体の健全性・プライベートバンキング事業の健全性は、プライベートバンク選びの上で大切な判断材料です。さまざまな要素から健全性を判断して、プライベートバンクを選ぶことが重要になってきます。
健全性を判断する材料としては、プライベートバンクおよびプライベートバンキング事業の収益性、事業拡大・縮小の状況、投資状況、店舗の展開・閉鎖状況などが挙げられます。
2.最低預入金額で選ぶ
プライベートバンクを利用するために必要な最低預入金額は、プライベートバンクごとに異なります。1億円から申し込めるものから、5億円近くの基準を設けているケースもあります。自身の資産状況に応じたプライベートバンクを選んでください。
3.日系・外資系の特徴の違いで選ぶ
プライベートバンクは、日系と外資系のものがあります。どちらがより自身の資産状況や運用方針に合っているかを検討するのが、プライベートバンクの選び方のコツです。
どちらを選べばよいか迷ったときは、日系かつ大手金融機関のプライベートバンクをおすすめします。日本語でコミュニケーションが取れる上に、大手ならではの安定感・信頼感の中で資産運用ができるためです。
もし外国語(英語やドイツ語、フランス語、中国語など)に精通しているなら、外資系のプライベートバンクが選択肢に入ります。日本国内に拠点を持つ外資系プライベートバンクであれば、日本語にも対応しています。
地域ごとのネームバリューにも注目する必要があります。例えば「スイスでは有名で普及しているが、日本では撤退気味」といった場合は、日本拠点の店舗よりスイス店舗にて申し込みをしたほうがサービスの満足度が高くなる可能性があります。
4.手数料の違いで選ぶ
無駄なコストを抑えるためには、プライベートバンク利用の際に発生する手数料の種類や料金体系を確認しておくことが大切です。
プライベートバンクで採用されている、主な手数料は次のとおりです。
手数料 | 概要 |
---|---|
資産基準手数料 |
|
固定報酬 |
|
売買手数料 |
|
成功報酬 |
|
5.担当者との相性で選ぶ
同じ担当者と長期的なパートナーシップを結ぶプライベートバンクでは、担当となるプライベートバンカーとの相性が非常に重要です。
プライベートバンカーは、顧客の資産状況や運用方針、家族構成、年齢、負債、相続、税金関係などをヒアリング・分析し、オーダーメイドでサポートを行います。さまざまな部分を任せることになるので、お互いの信頼関係が運用成果に大きな影響を及ぼすのです。
そのため、プライベートバンク選びにおいて、プライベートバンカーとの相性をチェックすることは重要なポイントであると言えるでしょう。
プライベートバンカーとの相性が良ければ、こちらの運用方針通りの結果を出してくれたり、親身になってサポートしてくれたりなどのメリットがあります。逆に相性が悪いと、こちらが希望する運用方針通りの運用にならなかったり、希望しない金融商品を勧められたりなどのデメリットが発生するリスクがあります。
担当者を選ぶときのポイントは次のとおりです。
- プライベートバンクやプライベートバンカー個人の資産運用・資産管理の実績を比較する
- プライベートバンカーの得意分野や性格、実績、知識(政治・経済・社会など)などを確認する
6.取扱商品・サービスで選ぶ
プライベートバンクごとに、取り扱っている商品やサービスは異なります。取扱商品・サービスが自身のニーズと合うかどうかを検討することも、選び方のコツの1つです。
プライベートバンクの主な取扱商品・サービスは次のとおりです。
- 金融商品全般の売買(株式・債券・投資信託・生命保険・その他オルタナティブ製品などプライベートバンクごとに異なる)
- 金融商品・不動産の仲介業
- 相続・事業承継関係のサポート
- ヒアリング結果やニーズに応じたポートフォリオの提案
- 資産運用スキームの提供
- ライフイベント・資金調達・法律・税務関係の総合的なコンサルティング
- 最先端医療施設・高級老人ホームなどの情報提供
- オーダーメイド旅行の斡旋
どちらを選ぶ?日系・外資系プライベートバンクの主な違い
プライベートバンクを選ぶにあたり、日系・外資系それぞれの特徴を把握しておくことも重要です。ここからは、日系・外資系プライベートバンクの違いを解説します。
日系のプライベートバンク
日系のプライベートバンクの特徴は、日本人にぴったりのサービスを提供しているという点です。日本の税制や法律、金融ルールなどに沿った運用や売買などに対応しているため、日本では違法になる取引の回避や、日本税制に合う節税などが期待できます。
日系のプライベートバンクは、申込みから利用まですべて日本語で対応してくれます。外資系のプライベートバンクのように、母国語以外でのコミュニケーションを取る必要はほとんどありません。金融商品についての説明や事務手続きにおいて、翻訳コストの増加や誤読などのリスクの低減が可能です。
さらに日系かつ大手のプライベートバンクであれば、日本市場からの事業撤退や破綻などのリスクを最小限にできます。長期的なライフイベントを見据えた運用であれば、日系のプライベートバンクがおすすめです。
日系のプライベートバンクで代表的なものは、「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」「みずほプライベートウェルスマネジメント」「野村證券」「大和証券」などが挙げられます。
外資系のプライベートバンク
外資系プライベートバンクの特徴は、日本では取り扱っていない豊富な金融商品を運用できる点です。日本の金融レギュレーションでは取扱が難しい資産でも、外資系プライベートバンクを利用すれば運用できる可能性があります。
また、プライベートバンクの歴史が深いスイスを始めとする海外国は、富裕層の資産運用に関して日本より豊富なノウハウを持っていると言われています。より資産を増やす運用方針を求める場合は、外資系プライベートバンクを選ぶのがよいでしょう。
ただし、海外を拠点とするプライベートバンクを利用する場合は、現地言語でのコミュニケーションや事務手続きが必要です(日本拠点の場合は除く)。取引によっては日本では違法・租税回避行為となる節税方法や取引に該当するケースもあるので、利用には細心の注意を払う必要があるでしょう。
外資系かつ日本拠点を持つほど有名なプライベートバンクとしては、「クレディ・スイス」「UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント」「ロンバーオディエ」「ジュリアス・ベア」などが挙げられます。
プライベートバンク以外の資産運用サービスの種類
「プライベートバンクに預けられるほどの資産がない」「プライベートバンクのサービスは合いそうにない」といった人は、プライベートバンク以外の資産運用方法を検討しましょう。
マスリテール層を含めて利用できる、主な資産運用サービスは次のとおりです。
サービスの提供者 | 特徴 |
---|---|
証券会社 |
|
銀行 |
|
FP (ファイナンシャルプランナー) |
|
IFA (独立系ファイナンシャルアドバイザー) |
|
自分に合ったプライベートバンクで資産形成を!
プライベートバンクは、数千万円〜数億円の資産残高やその他の審査条件をクリアしなければ利用できない、富裕層向けの特殊な金融機関です。利用ハードルが高い反面、一般的な金融機関にはないさまざまな金融商品の運用や、専門性の高いサービスなどを受けられます。
プライベートバンクには日系と外資系があるので、それぞれの特徴やプライベートバンクごとのサービス内容の違いを比較しつつ、自分に合うところを選ぶのがコツです。
もし「プライベートバンクの利用が、資産残高的に難しい…」という場合は、金融のスペシャリストであるIFAへの相談がおすすめです。IFAであれば、富裕層・マスリテール層などに関係なく、総合的な金融関係のサービスを受けられます。
経営者や個人事業主の場合は、金融機関やIFA以外にも税理士を利用するという選択肢も考えられます。節税アドバイスや資金計画の見直しなど、運用以外の面でのさまざまな資金・経営に関するアドバイスを受けられます。
資産運用サービスの提供者と特徴を理解して、自分に合った方法で資産形成をしていきましょう。