補助金とは、「国や自治体が掲げる政策目標」と「自社事業」の内容がマッチングしたとき、国が事業者へ給付するお金のことです。
そんな補助金のうち「IT導入補助金」とは、中小企業や小規模事業者のITツール導入をサポートする給付金です。最大450万円の補助を受けられます。「ITツールを使えば事業を大きくできるのに、肝心の導入資金が足りない…」とお悩みの事業者は、申請を検討してみてください。
当記事では2021年11月時点でのIT導入補助金について、概要や金額、申請方法などを解説します。なお直近スケジュールは、5次募集の12月中締め切り・2022年1月交付予定です。
IT導入補助金とは?概要や申請対象をわかりやすく解説
IT導入補助金とは、わかりやすくいうと「ITツールを使って業務改善・テレワーク導入を進めたいとき、国がお金を補助してくれる制度」です。
補助金を申請した事業者の課題・ニーズにピッタリのITツールを選定・導入する費用を、30万~450万円の範囲で支援してくれます。
当補助金の目的は、「人材高齢化による保険の適用拡大」や「インボイス制度導入」、「テレワーク推進」など、事業者が今後対応せざる得ない制度変更を支援し、生産性の向上を図ることです。
事務局(運営主体)は「独立行政法人中小企業基盤整備機構」や「IT導入補助金事務局(一般社団法人 サービスデザイン推進協議会)」です。また、事業者と事務局の間に「IT導入支援事業者」がおり、より円滑な導入になるよう支援してくれます。
(出典:サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト)
IT導入補助金のメリットは次のとおりです。
- 売上・販路の拡大
- 業務効率化
- 管理体制の見直し・改善 など
ただしIT導入補助金を受けるには、さまざまな条件をクリアしなければなりません。補助金給付後も、事業上で一定の効果が見込めなければ、補助金の全額または一部返金になる可能性もあります。
2021年11月現在では、通常型の「A・B類型」と、低感染リスク型の「C・D類型」の2種類のIT導入補助金が設定されています。それぞれで必要な申請条件が異なります(IT導入補助金はどのくらい貰える?上限・下限や補助率の見出しにて解説)。
以下では当制度の概要や申請条件についてみていきましょう。
IT導入支援事業者について
IT導入支援事業者とは、IT導入補助金の目的を理解し、なおかつ実現するためのサポートを行う事業者のことです。サポート内容は次のとおりです。
- 補助金の交付・実績報告などの事務局へ提出する申請や手続きの取りまとめ
- 事業者にとって適切なITツールの提案や導入、アフターサポート全般
- 事業者からの問い合わせや質問の対応
- 不正受給に関する管理・監督 など
IT導入支援事業者は事務局に登録申請を行い、事務局が適格性を審査した上で登録された、ITベンダー・サービス事業者のみがIT導入支援事業者となれます。
【事業者別】補助対象になる資本金と従業員の基準
IT導入補助金を受けるには、国が定めた資本金額と従業員数以下である必要があります。区分は「中小企業」「その他の法人」「小規模事業者」の3種類です。
以下では、「サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイト」の情報を元に、それぞれの基準を表としてまとめています。
まず中小企業の基準は次のとおりです。
次に、その他法人や団体の基準は次のとおりです。
小規模事業者は資本金がないため、基準は従業員数のみになります。次のとおりです。
資本金や従業員の基準以外には、「交付時点で日本国内登録の個人・法人かつ、日本国内で事業を行っていること」と、「交付申請の直近月の最低賃金が、地域別最低賃金以上であること」が必要です。
体力のある大企業は当補助金の目的から外れるため、原則としてIT導入補助金は受け取れません。
IT導入補助金の対象になるITツール
前提としてIT導入補助金の対象になるITツールは、IT導入支援業者が事前登録し認定を受けたものに限ります。登録外のツールでは補助金を申請できません。
当補助金におけるITツールは、「ソフトウェア」「オプション」「役務」の3つに大別されます。3つの大分類はそれぞれ小分類として分けられ、以下のような全9カテゴリーになります。
※連携型ソフトウェアとハードウェアレンタルは、通常型A・BのIT導入補助金では対象外
申請時には「大分類1 ソフトウェア」に設定された業務プロセスを担うソフトウェアを、必ず含んでおかなければなりません。
具体的には「ソフトウェアの導入は絶対条件」「ソフトウェアと併せてオプションや役務の申請ができる(オプション・役務単体の申請は不可)」というイメージです。
含むべきプロセスは次のとおりです。
申請時には上記のプロセスを1~4つ以上含むソフトウェアである必要があります。A~D類型それぞれの必要プロセス数は後述します。
その他の申請条件について
IT導入補助金の申請には、資本金・従業員・ITツールなど以外にも、さまざまな条件が設定されています。
たとえば「政府が指定するツールのアカウントを作成する」や「申請手続きのルールを守ること」などです。すべてを列挙すると数が多くなってしまいますが、どれも常識範囲かつ、事業者として当然守るべきものばかりです。
また導入に関しては、IT導入支援事業者からのサポートがあります。そこまで心配する必要はないでしょう。
もし申請条件を確認したい場合は、サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局ポータルサイトの「申請・手続きフロー」のWebページやPDFをご覧ください。
【類型別】IT導入補助金はどのくらい貰える?上限・下限や補助率
IT導入補助金には、A・B・C-1・C-2・D類型の5種類の補助対象があります。補助金額の上限・下限や補助率(かかった経費のうち補助してくれる割合)、申請条件に違いがあるので注意しましょう。
原則として、補助金の金額が大きいほど、審査を通過するのが難しくなります。
たとえば150万円未満の場合は「加点(一定の条件を満たすと採択されやすくなる方式)」、150万円以上の場合は「必須(一定の条件を満たさないと採択されない方式)」になります。
以下ではA・B・C・D類型のそれぞれの概要をみていきましょう。
【通常型】IT導入補助金A・B類型
通常型のIT導入補助金はA類型とB類型の2種類です。
類型ごとに設定したプロセス要件を満たすこと、労働生産性の向上に寄与するITツールであることが導入条件になります。
A類型 | B型 | |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
上限額・下限額 | 30万~150万円未満 | 150万~450万円 |
必要プロセス数 | 1以上 | 4以上 |
【低感染リスク型】IT導入補助金C・D類型
新型コロナウイルス感染症対策・拡大防止を目的としたITツール導入を考える事業者は、C類型とD類型を利用できます。
通常型よりも補助率が引き上げられているうえ、通常型にはないパソコン・タブレットなどのハードウェアのレンタル料も補助対象になります。
C類型の「申請条件は複数のプロセス間で情報連携し、複数プロセスの非対面化や業務の効率化を可能にするもの」です。D類類型は「テレワーク環境の整備に寄与するクラウド環境に対応し、プロセスの非対面化を可能にするもの」が条件になります。
C-1類型 | C-2類型 | D類型 | |
補助率 | 2/3以内 | 2/3以内 | 2/3以内 |
上限額・下限額 | 30万~300万円未満 | 300万~450万円以下 | 30万~150万円以下 |
必要プロセス数 | 2以上 |
A~D類型のいずれも、詳細は公式の募集要項をご確認ください。
目的未達の場合の補助金返還について
IT導入補助金のB・C・D類型には申請条件の1つに、「給与支給総額の増加目標の年率1.5%以上(賃上げ目標)」があります。
もし申請時に提出した事業計画を実施後、目的数値に達しない場合は、補助金の全額返還が必要になる場合があります。たとえば450万円の補助金を受けたのち、3年経過しても賃上げ目標が達成できなかったときは450万円全額返済することがあります。
ただし、事業がうまく伸びなかった場合などには返還を求めないとする、柔軟な取り扱いも認められています。
他にも「事業所内最低賃金の増加目標」が達成できないときは、補助金の全額または一部返還措置になります。
IT導入補助金の申請時は、無理のない計画を策定しましょう。
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請方法の流れを簡単にまとめました。
IT導入補助金の申請の流れ | 概要 |
IT導入補助金制度を理解 | どのような制度であるかを理解し、制度目的に応じた補助金の利用を検討する |
事業者の選定とITツール選択 | どのIT導入支援事業者とITツールを利用するかを決める |
gBizIDプライムアカウントの取得、SECURITY ACTIONの実施 | どちらも取得が必須で、詳しくは公式サイトより確認する |
交付申請 | IT導入支援事業者と連携し事業計画や書類作成を行う |
ITツール発注・契約・支払 | 必ず事務局からの交付決定の後に実行する(補助事業の実施とも言う) |
事業実績報告 | 補助事業を実施したことを事務局へ報告 |
補助金交付手続き | 補助金の内容を確認した後、補助金の交付 |
事業実施効果報告 | ITツール導入の効果を1年ごとに報告(3年間) |
より詳しい申請方法は公式サイトよりご覧ください。
IT導入補助金で中小企業の業務改善を!
IT導入補助金は、ITツールを導入したい中小企業・小規模事業者にとって有効な資金繰り方法になります。申請手続きや条件クリアが大変ではあるものの、IT導入支援事業者からさまざまなサポートを受けられるため、相談しながら進めましょう。
もしIT導入補助金について事前相談したい場合は、補助金に強い税理士や社会保険労務士への相談をおすすめします。専門家からのアドバイスを受けておけば、IT導入支援事業者と実際に話すときに、話がスムーズに進むはずです。