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法人格とは?法人格の種類と特徴・メリットも徹底解説!

法人格とは?法人格の種類と特徴・メリットも徹底解説!

法人格というワードはよく耳にするのですが、意味となると正確に説明できる人は少ないのではないでしょうか。

法人格の意味など知らなくても会社経営に問題ないと思ってしまいがちですが、これは間違っています。法人格の意味、種類などを理解することは会社経営者にとっては必須スキル。なぜなら日本は、法人格を取得することで税制、補助金制度でも優遇措置があるからです。このことから法人格を知り尽くしメリットを享受しなければなりません。

この記事を読むことで、

  • 法人格の意味
  • 法人格の特徴、種類
  • 法人格を取得することでのメリット・デメリット

がわかります。

これから個人事業主から法人化していこうと検討している方、是非ご一読ください。

 

法人格とは?

法人格の意味を分かりやすくするために、英語表記にしてみましょう。 英語では法人格は、「Legal personality」となり、Legal=法律(上)の、法的、personality=人格、という日本語訳になります。

直訳してみると、「法的な人」ということです。この法人格に含まれるものは、法人と自然人となり、両者が有する法的な地位ということです。

わかりにくい!と思われた方も多いかもしれないので、もう少し掘り下げてみます。

要するに、法人と自然人に権利と義務を与えることで、「社会的に法律で守られた地位もあたえよう」ということです。

たとえば、法人が、お金儲けをして利益を得ます。それを資金として、また新しい事業を始めて、既存の事業へ資金投下することで事業を成長させることが「権利」です。

その得た利益の中から、事業を行うために必要な経費を引いた額に課税されて、税金を払う「義務」が出てくる、このようなことが権利と義務の一例ということです。

【法人格のコラム】自然人とは?

自然人=生きている人間です。会社員も経営者も、主婦も学生もすべて人間、自然人に含まれます。

お金を儲けて、利益を受け取る行為は、法人と自然人しかできません。現代社会で発達著しい「AI」を例にとってみましょう。

AIは記憶する能力に優れていますから、法律の条文などの暗記は得意です、そのため、弁護士、司法書士と言った法律知識が必要な職業はAIにとってかわられると言われています。

しかし、人間は弁護士になり、クライアントを見つけて法的な交渉、アドバイスをすることで報酬を得ることができますが、AIは記憶した条文から法的なアドバイスなどはできたとしても、報酬を受け取ることはできません。報酬を受け取るのは、弁護士AIを作り、法律の条文を記憶させた人間ということになります。これが自然人にしか与えられない「権利」なのです。

法人格の正体とは

法人とは、法人格を有する人や財産の集団です。いわゆる会社組織もそれに含まれます。法人名義の銀行口座も作ることができるのは、法人として権利があるからです。

法人は寿命なく、永遠に生き続けるものなのです。ですから、法人は相続する必要がありません。法人格のメリットの項目でも説明していきますが、法人が「死なない人」であるということを覚えておいて下さい。

法人格の特徴

法人格の特徴について説明していきます。特徴を理解することで、なぜ法人格を取得した方が良いかもわかってきます。

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名義人になれるかどうか

法人格は、権利と義務を持ち、法的な地位を与えられていると説明してきました。不動産売買を例として、もし自宅を売却したいと考えます。その自宅の名義は、個人であり売主も個人です。

一方買主が法人である場合、売買契約が成立すれば、法人は自社名義でその不動産を登記することができます。個人である人間(自然人)も名義人ですし、買い取った法人も名義人になれる、法人格があるということとなります。

ただ、これを個人が買い取ったとします、その個人が「個人事業主」を営んでいて、その事業に屋号があったとしても、個人とみなされて屋号で不動産登記することはできないのです。会社名義で資産を所有できるということは、会社経営にとっても大きな特徴となります。

法人格取得のメリット

法人格取得で得られるメリットは次の通りです。

  • 権利義務関係は未来永劫続く
  • 法人は税制優遇されている
  • 対外的な信用度が高くなる
  • 代表者は個人責任を負うことがない

法人格のメリット①権利義務関係は未来永劫続く

これは冒頭「法人格とは?」の項目でお話したことですが、法人は、寿命のない人です。団体においての権利義務関係は、代表者が高齢になって経営を続けられなくなっても、後継者にそのまま承継されていきます。事業自体は未来永劫続くというわけです。

事業自体は、相続する必要はありませんから相続税もかからないことになります。ただ、株式会社で株主が保有している株式を相続する場合ならば、相続税はかかります。

法人格を取得することで、会社という組織をそのまま事業承継でき、その手法は、身内に承継するだけでなく、社外の第三者へ売却することだってできるのです。経営者は交代しますが、事業、社名は未来永劫へと続いていきます。

法人格のメリット②法人は税制優遇されている

日本は、雇用を生み出すことができる法人に対して税制上優遇しています。

このメリットを活かさない手はないですよね。

個人はこれからもますます課税強化となっていくでしょう。事業内容に継続性があるのなら、個人事業ではなく法人化しておくべき、ということになります。税率に対しても、法人税の場合は一定の率での課税ですし、また経費化できる範囲も広がります。法人化することで、大きく儲けても、経費を計上することで税金を抑えることが可能なのです。

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法人格のメリット③対外的な信用度が高くなる

新規取引先を開拓していると、下記のような条件を設定してくる企業が多く存在します。

  • 取引先は法人に限る
  • 支払い条件において「銀行口座の名義人は法人に限る」

これは法人格を取得しておかないと取引先にすらなれないということです。

金融機関からの融資を受ける場合にも、法人格を取得して、株式会社で事業計画をきっちり立ててあれば、融資枠も広がり、個人で融資を受けるよりも通りやすくなる可能性は高いです。

やはり社会一般的な見方として、法人化しておくほうが信用度は断然高くなるでしょう。

法人格のメリット④代表者は個人責任を負うことがない

株式会社、合同会社は、先ほどもご説明した通り、有限責任となり社長個人が責任をとることが原則ありません。これは株主も同じです。ですから自由に投資することができて、社長も思った通りの経営を行うことができます。

責任を取るべきは、法人である株式会社や合同会社であって、社長や出資者ではないという責任関係が明確なところが、法人格のメリットなのです。

法人格の種類

法人格は、下記の通り、大きく2種類に分けられます。

  • 非営利法人
  • 営利法人

この2つに分けられます。

この2種類の法人格について、それぞれご説明していきましょう。

法人格の種類①非営利団体とは

構成されている人員で利益分配をもとめずに、団体の目的を達成させるためにその利益を活用します。一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、学校法人、宗教法人、医療法人などが非営利法人と言われています。

【社団法人と財団法人を解説】

社団法人と財団法人の違いは、社団法人は、人の集まりであり、財団法人は財産の集まりであるということです。それを証明するのが、2つの団体の要件です。

社団法人は、正味財産の概念がなく、社員が0になったら解散となります。財団法人は、社員というものは存在せず、正味財産は最低額300万円と設定して、この最低額を下回れば解散となります。

この中で、社団法人は他の非営利法人とくらべて、比較的立ち上げやすい団体です。同業者で作る団体、大学OBで作るなど集まる人数が増えてくるならば、一般社団法人にしておいたほうが、会費など入金管理も透明化できるようになります。1年に1回、総会を行い、会計報告ができるからです。

ここでいう「社員」というのは、会員のことです。そしてその会員の中から役員である理事長、理事、監事などを選出します。この会員が0人なると解散ということです。

法人格の種類②営利法人とは

  • 株式会社
  • 持分会社(3種類ある) 合同会社、合名会社、合資会社

営利法人を大きくわければ2種類となり、この二つの違いは、会社の持ち主と経営者を分離するか、しないかにあります。

【株式会社】

まず、営利法人として一番に挙げるとすれば、「株式会社」ということになります。よく聞くし、なじみ深いのではないでしょうか。

株式会社の特徴は、会社を所有する人と経営する人が違うということです。

え?会社って、社長の持ちモノじゃないの?と思った方もいらっしゃるでしょうが、それは全く違います。

会社は誰のもの?

株式会社の場合は、会社は株主のものです。株主は、株式を購入するということで出資してくれています。代表取締役社長は、経営陣のトップということです。経営陣は、株主からの様々な意見を受け取り、会社経営を行っていくのです。そして会社経営で利益を得ると、株主へ配当していきます。

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株主は有限責任

株主は、出資している額の範囲でしか責任はありません。もし、会社が倒産して、負債が残ったとしても、株式を購入して出資した額は戻ってはきませんが、負債を返済する必要はありません。

株式会社にも規模はさまざまです。中小企業の場合だと、株主は身内で固められていて、または一人だけということもあり、筆頭株主が社長を務めることが多くなります。

ただ、「有限責任というけど、中小企業が倒産すると社長が負債をかぶって、一文無し、または自己破産したと聞いたことがある」という方もいらっしゃるでしょう。

なぜそのような事態になるのか。それは会社設立時に問題があります。株主が社長一人とした場合、発行株式数を100株、1株100円にしたとします。株式総数100株、総額10,000円です。

だったら10,000円だけの責任しかない、といいたところですが、これでは、取引先、または主要金融機関が納得しません。今では、1円の資本金で株式会社設立もできますが、対外的な信用度がとても低いです。

金融機関から事業資金を融資してもらうのに審査があります。金融機関は、何を見ているかというと、その企業の経営面での体力です。10,000円しか資力がない会社に数百万円、数千万円の資金は貸せません。

そうなってくると、経営トップである社長の個人資産にチェックが入るのです。社長の個人資産に抵当権をつけて融資をします。これを「個人保証」といいます。会社の借入金にたいして、社長が保証人になっているということです。会社が倒産して負債が残ったままだと、社長が個人資産を処分して返済にあてないといけなくなります。

こうならないためには、なるべく複数の人間に株式を購入してもらって、株主を増やして、責任を分散する必要があることがお分かりいただけるのではないでしょうか。

要するに、会社を設立するにあたり、スポンサー探しをするのです。そして会社は社長だけのものではなく、株主みんなのもので、その株主に文句を言われないように健全な経営を続けていく努力することが、真の経営者の務めということになります。

【持分会社】

先述しています通り、持ち分会社には、下記のように3種類あります。

  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社

持ち分会社の大きな特徴として、会社を所有する人と、経営する人をひとくくりにしているという点です。出資した人のみで経営することになりますので、外部から多くの出資者を募るのが少し困難ではあります。ただ、親族だけで経営するならばこの持ち分会社のほうが合っていることになります。

経営権、議決権など出資の額に関係なく同じです。またこの持ち分会社3種類とも設立費用が比較的安く住むのも大きな特徴です。それでは、3種類の持ち分会社についてそれぞれ説明していきましょう。

合同会社とは

合同会社の大きなメリットは、株式会社と同じで、出資者全員が「有限責任」というところです。資本金を用意して出資者を集める必要はあるのですが、合同会社を設立する初期費用は、株式会社の約3分の1程度ですむことから、まずは、合同会社を設立するというビジネスプランを選択する経営者が多いです。

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合名会社は無限責任

全ての出資者が無限責任となります。ですから経営悪化で負債を抱えた場合には、出資者で返済しなくてはなりません。個人事業主と似ていて法人化のメリットがほとんどないことから合名会社の設立件数は少ない傾向です。

合資会社とは

これは、出資者において、有限責任と無限責任とにわかれることになります。

ですから設立には、最低2人で構成する必要ができてきます。

合同会社を設立する人が多い!

持ち分会社のなかでは合同会社を設立する人が断然多く、それだけ合同会社にはメリットが多いということです。

ここで、営利法人の特徴を比較するために一覧表にまとめてみました。

この一覧を見ると、設立するなら株式会社か合同会社かということになってきますが、もっと細かく株式会社と合同会社のちがいについて説明します。

株式会社と合同会社の大きく違う点は2つ!

ここでは、株式会社と合同会社の違いを紹介します。

①役員選任の仕方が違う

株式会社では、取締役などの役員を株主総会で諮(はか)って選任を決議する必要があります。また役員登記も必要です。株主総会議事録で記録しておき、登記する時にも議事録が必要で、登録免許税も10,000円かかります。

一方、合同会社のほうは、取締役という概念がないので、登記の必要もありません。合同会社において、設立時に定款に条項として織り込んでおけば、自由に役員体制について決めることができます。肩書も、代表取締役社長と定めておくこともできるのですが、会社設立登記をするときは、定款で設定した肩書ではなく、登記簿では「代表社員」という肩書で表記されます。

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②利益配分が違う

株式会社では、株式保有数から出資額に応じて配当金がきまりますが、合同会社では、出資額はなく、どのくらい経営に貢献して利益を上げたかとういことを考慮して配当が決まります。

出資額が多くても、配当金も比例するわけではありませんから、経営陣の間でもめることもあります。このような事態を回避するには、定款で利益配分についてきっちり決めておかなければいけません。

定款作成をスムーズに行うために

会社設立には定款が必要です。特に合同会社は設立費用が安く、手続きも簡単なのですが、定款作成を間違えるとさまざまなトラブルを抱えることになります。後でもめないためにも、定款作成は専門家に依頼した方が安心です。

合同会社の設立を依頼するとなると、司法書士、行政書士かと思われがちです。ただ、合同会社の定款には、先ほども説明したように利益配分など経理的な要素がたくさん出てきます。そして決算書の公告はないのですが、金融機関との付き合いには、この決算書、事業計画書は必要です。設立を検討したときから決算書類作成、財務管理のプロである税理士にアドバイスを受けることをお勧めします。設立から経営まですべてサポートしてもらえます。

法人格の取得方法と消滅とは

ここでは、法人格の取得方法と、その取得方法では、どんな法人があるのかなど、そして法人格の消滅についてもご説明します。

法人格取得方法には6種類ある

  • 特許主義
  • 強制主義
  • 許可主義・認可主義
  • 認証主義
  • 準則主義
  • 当然主義

これら6種類について、一覧表にしてみました。

種類 取得方法 法人例
特許主義 成立するためには特別な法律制度を要する 銀行等
強制主義 国が強制的に設立させる団体 弁護士会等
許可主義・認可主義 一定の要件を備えた社団・財団で主務官庁の許可をうけることで設立(※) 医療法人等
認証主義 法律要件を満たしていて主務官庁の確認を受けることで設立 宗教法人等
準則主義 一定の要件を満たすことで容認される、商業登記が要件とされることが多い 株式会社
当然主義 法律上当然法人となる団体 地方公共団体等

(※)許可主義で補足すると、当該許可は主務官庁の裁量で自由に許認可されます。医療法人のほかには、旧民法で許可されていた公益社団法人があります。

法人格の消滅

これから法人格を取得してみようかというときに、消滅のお話をするのもいかがなものかと思うかも知れませんが、スタートアップを検討するときは、終わり方も知っておいて損ではありません。

意外に複雑!法人格の消滅

株主総会を開催して、解散について決議してから関係各署へ解散届を提出し、登記すれば完了では?と思う方もいるでしょう。しかし、これだけでは法人格はまだ消滅していません。

法人格とは?法人格の種類と特徴・メリットも徹底解説!の画像6

法人格を消滅させなければいけないとはどんな時でしょうか。

  • 後継者がいない→廃業
  • 負債がかさんで返済の目途がたたない→破産・倒産

といったことが考えられます。

後継者がいないために廃業するならば、先ほど申し上げたように株主総会を開催して、廃業について決議、その後、申請して廃業登記をすれば法人格は消滅します。

問題は、負債が残って倒産する場合です。

法人が債務者になった場合、まず裁判所へ破産手続きを申請して、破産手続きが開始されると、「解散」ということになります。ここですぐに法人格は消滅しません。破産した法人が所有していた資産は破産財団となります。(名前を変えて別の法人格になる)これは破産手続きが進み財産を全て清算するまで、法人として存続することになります。

資産には、固定資産である「不動産」や「車両」などが考えられます。これらを清算しないことには、固定資産税などがかかってくるということです。(その他維持費なども)

法人化というのは、始めるときも、その継続中も、そして終了する時もかなりの知識が必要となってきます。要するに払わなくてもよい費用や税金を支払うことになってしまうということです。知らない間に損をしないように、税務の専門家である税理士にスタートアップ時からアドバイザーとして依頼することが不可欠です。

税理士は、日々の経理業務の指導だけでなく、このような会社設立や経営のサポート、アドバイスまでしてくれるのです。また税理士にスタートアップ時から顧問契約をしておけば安心です。起業したときから、その事業を成長させてイグジット(事業売却)においても知恵をかしてくれるのが税理士の役割なのです。

法人格を取得しているか、確認するには?

法人格を取得しているかどうかは、法務局で法人登記をチェックすることでわかります。医療法人、宗教法人、社団、財団法人など、どの法人でも登記事項証明書を申請することで確認できるのです。この申請は、数百円の手数料でだれでもできます。

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認可地縁団体(町内会など)は、法人登記をしていませんので、市役所など証明書を発行してもらって法人格をチェックしてみてください。

法人格の取得を検討するなら税理士に相談を!

法人格の特徴や取得のメリットについての予習は不可欠ですが、事業を始めようと思ったら、その業界での関与実績がある税理士へ相談してみてください。

関係各署への届出、経理面、事業計画の立て方についてもサポートしてもらえます。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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