補助金・助成金

補助金と助成金の違い|目的・種類・申請方法別に解説!

補助金と助成金の違い|目的・種類・申請方法別に解説!

補助金と助成金はどちらも国や自治体からの支給という点が大きな共通点です。しかし、細かい点においては大きな違いがあります。補助金は事業を通じて公益を達成し、助成金は雇用と労働環境を整備するもので、まったく性格が異なるのです。この性格の違いによって、補助金と助成金の種類や申請方法にも違いが生じます。

この記事では、補助金と助成金の違いを明らかにするため、目的、種類、申請方法に分けて解説します。

補助金と助成金の主な共通点

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補助金と助成金には共通点と相違点があります。まずは大きなポイントを見ていきましょう。
補助金と助成金の3つの共通点
補助金と助成金には大きな3つの共通点があります。「国や自治体からの支給」「返済義務なし」「支払いに時間がかかる」の3点です。それぞれについて説明します。

国や自治体からの支給

補助金は主に経済産業省や地方自治体の管轄で支給されます。一方助成金は主に厚生労働省となっています。どちらも公的な制度であることが一番の共通点です。

返済義務なし

補助金や助成金は借入ではありませんので、原則として返済義務はありません。原則として、というのは競争型の事業の多くでは、補助金の効果で利益が得られた場合に、利益の一部を還元しなければいけないものもあるためです。したがって、必ず個別の確認が必要です。

また補助金を不正受給すれば返済義務が生じます。故意に不正受給するつもりがなくても、要件を満たしていなければ不正認定されてしまいます。厚生労働省や中小企業庁のホームページなどでしっかりと確認することが重要です。

支払われるまで時間がかかる

補助金や助成金は金融機関からの借入と異なり、企業の都合にあわせて支給される種類のものではありません。「今月の資金繰りが苦しいから申請しよう」と思っても間に合うことはまずありません。事業立ち上げ前に支給されるものでもなく、実際に事業を開始したあとに報告書などを作成して提出、審査が行われてから支給となります。

前払いで資金調達したい場合は、クラウドファンディングやベンチャーキャピタルを利用するほうがいいでしょう。両者は事業を開始するために企画内容をまとめて融資を募る方法です。投資家はリターンを期待して投資します。

補助金と助成金の主な相違点

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補助金と助成金には共通点もある一方、本質的な違いもあります。違いをしっかりと把握したうえで、自身が得られる恩恵を最大限に享受していきましょう。

補助金と助成金の違い:特徴

補助金の特徴:事業を通じて公益を達成

補助金は主に経済産業省や地方自治体の管轄です。
補助金は「事業を通じて公益を達成する」ことに重点が置かれているので、金額の規模が大きく、数百万円から数十億円までかけるものもあります。補助金は事業計画を公募し、審査を通過する必要があるため、難易度はかなり高いです。提案型で競争させて、より良い事業に支給されることになります。

補助金は募集期間が数週間から1カ月程度と短いため、下調べが重要です。

助成金の特徴:雇用・労働環境の整備

助成金は主に厚生労働省の管轄です。助成金は「雇用・労働環境を整える」ことに重点が置かれています。一般的な助成として新規雇用、雇用維持、人材育成があり、労働環境整備で対象となるのは、就業規則の改定や介護・育児休業制度の導入などです。

金額は雇用維持や能力開発のために支給されるため、数十万円から百万円くらいまでです。要件を満たしていれば、どんな会社でも支給対象となります。申請も基本的には随時行えて、長期間にわたって受け付けられます。

補助金と助成金の違い:目的

補助金の目的:新規事業・事業再構築など

補助金は主に国が新規事業や事業再構築、創業促進などの国策を促進するための手段のひとつとして実施しています。
国や自治体が税金を投入して、政策目的達成のために企業や個人事業主を支援する制度です。そのため国や自治体の予算が決定してから交付されますので多くは4月から5月に公募されます。補正予算が組まれれば、12月に補助金の二次公募がなされる場合がありますので、よく調べる必要があるでしょう。

予算がある関係上、募集が多い人気の補助金は期限前に応募締め切りになることもありますので、注意が必要です。

助成金の目的:雇用維持や人材育成など

助成金は厚生労働省の管轄で、雇用維持や雇用増加、人材育成のために実施しています。雇用や労働環境を助成金の支給によって整備することも目的のひとつです。
基本的には通年の申請が可能ですが、人気の助成金は発表から2カ月程度で受付終了になってしまうこともありますので、社会保険労務士のサポートを得て早めに対応することが大切です。

補助金と助成金の違い:種類

補助金と助成金にはどのようなものがあるのか見ていきます。いずれも会社経営を金銭面で支援してくれるものです。具体的な例や支援をしている団体も紹介していますので参考にしてください。

補助金の種類

主に国が新規事業や事業再構築、創業などを促進するための手段のひとつとして実施している補助金。新型コロナの蔓延によって事業の再構築が迫られたり、テレワークを導入したりする企業も多いでしょう。

関連する補助金と、国や地方自治体、民間で補助金事業を展開している組織を紹介します。

事業再構築補助金

経済産業省が事業再構築補助金の募集を行なっています。新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するものです。
補助額は事業再構築に必要な投資額×補助率で決められます。
さまざまな要件がありますが、中小企業の通常枠の補助率2/3で、補助額は100万円~6000万円です。

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引用:経済産業省 事業再構築補助金

IT導入補助金2021

IT導入補助金2021は、中小企業や自営業を対象としたITツール導入に活用できる補助金です。通常枠(A・B類型)と低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)に分かれています。
通常枠では、業務の効率化や売上アップをサポート。自社の置かれた環境を分析して、強みや弱みを認識します。経営課題や需要に合ったITツールを導入することで、経営力の向上や強化を図れます。

かかった費用の1/2が補助されます。企業規模が一定以下のさまざまな業種や業態に対応。自社の課題に即したITツールを導入できます。

また低感染リスク型ビジネス枠は、ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへ転換する中⼩企業・小規模事業者等に対しての支給です。労働生産性の向上とともに感染リスクに繋がる業務上での対人接触の機会を低減するために、業務形態の非対面化に取り組む必要があります。通常枠よりも補助率を引き上げて優先的に支援されるものです。

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引用:独立行政法人 中小企業基盤整備機構 IT導入補助金2021

中小企業庁のホームページをチェック!

中小企業庁では創業・ベンチャー支援や起業家教育支援、経営革新支援、再生支援、海外展開支援などの情報をホームページに掲載しています。経営革新支援では2021年4月30日に1132機関、6月28日は1094機関を認定。経営革新支援は経営革新に取り組む中小企業を、資金調達、税制、販路開拓等で支援するものです。
中小企業庁ホームページ:https://www.chusho.meti.go.jp/

また「ミラサポplus」は中小企業や小規模事業者向けの補助金や給付金などの申請や事業のサポートを目的としたサイトです。中小企業支援施策を「知ってもらう」「使ってもらう」ことを目指して運営されています。

中小企業庁 ミラサポplus:https://mirasapo-plus.go.jp/

公益財団法人東京都中小企業振興公社のホームページをチェック!

東京都中小企業振興公社は「助成金事業」として性格的には補助金にあたる支援を行なっています。
たとえば「令和3年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業」は、都内の中小企業などが「イノベーションマップ」に基づき、自社のコア技術を基盤として行なう革新的な技術・製品開発を支援する助成事業です。幅広い軽費を対象とし、最大8000万円が支援されます。

公益財団法人東京都中小企業振興公社 助成金事業:https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/josei/ichiran/index.html

その他の補助金もチェック!

ほかにも国、地方自治体、民間などで補助金によって支援をしています。下記を参照してください。

経済産業省 関東経済産業局
経済産業省 資源エネルギー庁
全国中小企業団体中央会
国立研究開発法人新エネルギー産業技術総合開発機構
日本商工会議所
東京都産業労働局
大阪府商工労働部
ネットあいち 愛知県
公益財団法人 市村清新技術財団
公益財団法人 三菱UFJ技術育成財団

助成金の種類

雇用維持や雇用増加、人材育成の支援をするための助成金の取り組みは以下の通りです。
参照:厚生労働省 事業主の方のための雇用関係助成金

①雇用維持関係

・雇用調整助成金
休業、教育訓練、出向を通じて従業員の雇用を維持します。

②再就職支援関係

・労働移動支援助成金(再就職支援コース)
離職した労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託するなどします。
・ 労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
離職した労働者を早期に雇い入れるためのものです。

③転職・再就職拡大支援関係

・中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)
・中途採用等支援助成金(UIJターンコース)
東京圏から移住者を雇い入れた場合の助成金です。
・中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
中高年齢者等(40歳以上)の方が中高年齢者等を雇い入れた場合。

④雇入れ関係

・ 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れた場合。
この他に就職が困難な状況にある方を雇用したときに支給される11の助成金があります。

⑤雇用環境の整備関係等

障害者や介護労働者のために支援員を配置したり、福祉施設などを設置・整備したりしたときの助成金です。

⑥仕事と家庭の両立支援関係等

男性の育児休業等取得推進や労働者の円滑な育児休業取得・職場復帰に取り組んでいたり、事業所内に保育施設を設置したりするなどの場合に支給されます。

⑦人材開発関係

・ 人材開発支援助成金(特定訓練コース)
OJTとOff-JTを組み合わせた訓練、若年者への訓練などを実施したときの助成金です。ほかに、職務に関連した知識や祇王を習得させる訓練を実施する「一般訓練コース」をはじめとする6つの人材開発支援助成金があります。

⑧その他

「業務改善助成金」や「働き方改革推進支援助成金」など、さまざまな労働条件を整備するための助成金があります。詳細は労働条件等関係助成金のご案内を参照してください。

補助金と助成金の違い:申請方法

補助金と助成金の特徴の違いから申請の流れも異なります。具体的な違いを見ていきます。

補助金申請の流れ

補助金の主な予算は税金で、気をつけたい一番のポイントは先に支払った費用に対して補助される、ということです。自社の成長のためのもので、経営が苦しいときのサポートの資金とは性格が異なります。
公募→申請→審査→採択決定→事業実施→支給申請→給付
という流れで進みます。

既に事業化されている事業は対象外です。新たな事業をはじめる前に申請をする必要があります。申請書類を提出したのち、書類審査があり合否が決まります。採択通知が届いたら、申請通りに事業を実施。支給申請をして、要件に合致していれば補助金が支給されます。

最近は不正受給に対して厳しく検査が行われ、不備が指摘される場合がありますので注意が必要です。補助金申請についてはコンサルティング会社や中小企業診断士、税理士がサポートしてくれます。申請に不安がある場合は専門家に相談することをおすすめします

助成金の申請の流れ

雇用に関する助成金の財源は、基本的に企業が支払っている保険料です。そのため申請できるのは、雇用保険の適用事業所であることが前提となります。また、過去3年間にわたって不正受給をしていない、2年間以上労働保険を滞納していない、過去1年以内に労働関連法規に違反していない、という3点が申請の条件です。
実施計画の申請→計画実施→支給申請→受給
という流れになります。

助成金はその種類によって、いくつかの要件に沿った実施計画の作成が求められます。複雑な書式のものもあり、わからない場合は主に社会保険労務士や行政書士がサポートしてくれます。書類の不備がないように専門家の力を借りるのもいいでしょう。

補助金と助成金の違いを把握して企業経営に役立てる

補助金と助成金の違い|目的・種類・申請方法別に解説!の画像5補助金と助成金は似ていますが、目的も種類、申請方法もまったく異なります。補助金は大きく成長したり、新規事業を立ち上げたりするときに支給されるものです。一方、助成金は雇用の維持など企業が苦しいときに支援してくれるものと、雇用環境の改善や人材育成など企業体制の改善に役立つものがあります。どちらも企業経営にとって役立ちますが、複雑な手続きが必要です。税理士や社会保険労務士、行政書士などの専門家のサポートを得ることをおすすめします。

きわみ事務所は、税理士だけではなく、社会保険労務士や弁護士など会社経営に必要なプロの専門家集団がグループとして連携。一度に相談できるので、忙しいときにも困りごとをスピード解決することが可能です。

助成金や補助金に困ったら、税理士法人きわみ事務所へお気軽にご相談ください。

企業の教科書
竹内 欣士
記事の監修者 竹内 欣士
弁護士、社会保険労務士

知に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかく、人の世は住みにくい(夏目漱石「草枕」)。
日々、知識を活かす智恵こそが大切だと痛感しています。知を重んじつつ頼らない。情を大切にしつつ流されない。意地を胸に秘めつつ通さない。そのバランスを図りながら、依頼者に寄り添う「身近な相談相手」を目指してまいります。

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