補助金・助成金

事業再構築補助金とは?採択結果や申請条件をわかりやすく解説

事業再構築補助金とは?採択結果や申請条件をわかりやすく解説

政府が実施する補助金制度のうち、IT導入補助金やものづくり補助金とならんで有名なのが「事業再構築補助金」です。本補助金は、事業内容や製造方法などに大規模な変更を加えることでコロナ禍を乗り越えようとする事業主に支援を行います。通常枠で最大8,000万円の大型補助です。

当記事では事業再構築補助金の概要や補助金額、申請条件などについて解説します。

なお本補助金は、2022年以降も継続で公募される予定です。第5回公募は2022年1月中となっています。第6回公募からは補助金額や利用枠の見直しがされる予定です。当記事では2021年12月時点での情報を掲載しています。

事業再構築補助金とは?対象企業・経費や採択結界を解説

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルス感染拡大によって売上が落ち込む中小企業が「思い切った事業再構築」を意欲的に行うとき、その事業主に対して支給する補助金です。思い切った事業再構築とは、新しい分野への進出や業種の変更などが挙げられます。

本補助金は比較的新しい制度で、2021年3月26日より第1回の公募が行われました。当時も中小企業の補助上限6000万円、補助率2/3の大型制度として注目されています。

事業再構築補助金を受けられる企業

事業再構築補助金を受けられる企業は、国が定義する「中小企業」または「中堅企業」
に該当する事業者です。

中小企業の範囲は、資本金または従業員数のどちらかが一定基準以下であることです。業種ごとの基準をみていきます。

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※大企業の子会社などのみなし大企業は対象外
※中小企業等経営強化法規定の中小企業者や特定の団体は対象

一方、中堅企業は中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金が10億円未満または従業員数2,000人以下の会社が当てはまります。また確定申告済みの直近過去3年分の各年、または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業は中堅企業扱いになります。

補助の対象となる経費

申請した経費の金額によって、事業再構築補助金の支給金額は変わります。申請できる経費は、事業計画を実施するうえで支出した次のものです。

補助経費名 概要
建物費 建物の建設・改修・撤去・原状回復などにかかる経費
機械装置・システム構築費 機械やソフトウェアの購入・リース・製作などにかかる経費
技術導入費 知的財産権等の導入にかかる経費
専門家経費 士業やコンサルタントなどの専門家へ支払う経費
運搬費 運搬・宅配・郵送料などに関する経費
クラウドサービス費 クラウドサービスに支払う月額・年額など
外注費 商品・製品・サービスなどを提供するために必要な加工・設計・検査などを外注する際にかかる経費
知的財産権等関連経費 弁理士への依頼料や翻訳料など自社製品の知的財産権等を取得するために必要な経費
広告宣伝・販売促進費 商品・サービスに関する広告作成・掲載・出典・セミナー開催などにかかる経費
研修費 従業員の教育訓練や講座受講にかかる経費
海外旅費(卒業・グローバルV字回復枠のみ) 海外事業の拡大・強化などを目的にした海外渡航・宿泊ンにかかる経費

一方、以下の経費は本補助金の対象外です。

  • 補助対象企業の従業員にかかる人件費や旅費
  • 不動産・株式・公道を走行する車両の購入費
  • パソコン・スマートフォン・家具などの汎用品の購入
  • フランチャイズ加盟料
  • 販売する商品の原材料費
  • 消耗品費・水道光熱費・通信費

よりくわしい内容を知りたい場合は、「事業再構築補助金の公募要領」をご覧ください。

事業再構築補助金の採択率や採択事例

過去3回公募された事業再構築補助金の採択率は次のとおりです(採択率は採択率÷有効申請数にて算出)。

採択率 申請総数 有効申請数 採択数
第1回 41.6% 2,231 19,239 8,016
第2回 51.1% 20,800 18,333 9,336
第3回 48.7% 20,307 18,519 9,021

1~3回を平均すると、過半数の企業が採択されている結果となっています。第3回公募での採択金額は、100万~1,500万円が全体の47%、1,501万~3,000万円が20%でした。

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(出典:事業再構築補助金事務局

採択された事業の事例は次のとおりです。

  • デザイン会社によるコワーキング機能付き施設による宿泊業の開業
  • 印刷会社から画像提供システム構築を使った広報支援事業への転換
  • 設備の運搬・建設工事会社による運用管理・保守・技術者養成サービスの新展開
  • 飲食店から高年齢者配食事業への新展開 など

本業のノウハウを活かしたビジネスの拡大や、既存事業とは異なる新事業スタートなど、大胆な事業計画を実行しているとわかります。

事業再構築補助金の必須申請条件|事業再構築指針について

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事業再構築補助金にはいくつかの種類がありますが、どの枠でも必ず満たすべき必須申請条件が設けられています。具体的には次のとおりです。

  • 売上高または付加価値価額が減少していること
  • 事業再構築指針に基づく事業再構築に取り組んでいること
  • 認定経営革新支援等機関と計画を立てること

卒業枠やグローバルV字回復枠などを利用したいときは、必須要件に加えて他の条件を満たす必要があります。くわしくは「事業再構築指針の手引き」をご欄ください。

以下では必須要件の詳細を解説します。

1.売上高または付加価値額が減少していること

本補助金はコロナ禍以前の売上高より、コロナ禍後の売上高が減少している事業者を対象としています。具体的な要件は次のとおりです。

  1. 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前(2019年または、2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している
  2. 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月間の合計売上高が、コロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少している

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(出典:経済産業省
第6回公募以降は、売上高の要件が緩和される予定です。上記2の要件が撤廃され、上記1の要件のみになります。

売上高では支給要件を満たせないときは、代わりに「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)」を用いて申請できます。

  • 2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して15%以上減少している
  • 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計付加価値額が、コロナ以前の同3か月の合計付加価値額と比較して7.5%以上減少している

2.事業再構築に取り組んでいること

本補助金の支給要件に1つに、経済産業省の「事業再構築指針」にて定義されている事業再構築に取り組むことが挙げられます。具体的には次のとおりです。

  • 新分野展開
  • 事業転換
  • 業種転換
  • 業態転換
  • 事業再編

上記のうち新分野展開・事業転換・業種転換として認められるには、「製品等の新規性要件」または「市場の新規性要件」を満たす必要があります。

<製品等の新規性要件>

  • 過去に1度も製造・提供などをした実績がないもの
  • 主要設備を変更するもの(既存の設備で製造等できる場合は認められない)
  • 定量的(数値や数量で表せるもの)に性能や効能が異なるもの

<市場の新規性要件>

    新しく提供する商品・製品・サービス(以下、製品等)などが、既存製品等に単純に置き換わらず、販売前より売上が大きく減少しない・相乗効果により増大することを事業計画で示せること

以下では、それぞれの概要を紹介します。

新分野展開

新分野展開とは、これまで主としていた業種(もっとも売上高が高い大分類の産業)や事業(もっとも売上高が高い中分類・小分類・細分類の産業)を変更せず、新しい製品製造やサービスの提供などを行い、新たな市場に進出することです。

「アイスクリーム製造工場が、新しくケーキの製造をスタートする」といったケースが当てはまります。

新分野展開として認められる要件は次のとおりです。

  • 3~5年間の事業計画終了後に新しい商品等などの売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定する
  • 製品等の新規性要件を満たす
  • 市場の新規性要件を満たす

業種と事業の違いは、日本標準産業分類を基準として決まっています。大分類が業種、中分類以下が事業というイメージです。

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(出典|経済産業省

事業転換

事業展開とは、これまで主としていた「業種」を変更せず、主としていた「事業」を変更することです。「洋食レストランが、焼肉専門店を新しく開業する」といったケースが当てはまります。

事業展開として認められる要件は次のとおりです。

  • 3~5年間の事業計画期間終了後に新しい製品等の属する事業が、売上高構成比のもっとも高い事業となる計画を策定する
  • 製品等の新規性要件を満たす
  • 市場の新規性要件を満たす

業種転換

業態転換とは、新しい製品等を提供・製造などするにあたり、これまで主としていた業種を変更することです。「レンタカー事業を営む企業が、レンタカー事業と組み合わせた宿泊プランを提供する」といったケースが当てはまります。

業種展開として認められる要件は次のとおりです。

  • 3~5年間の事業計画期間終了後に新しい製品等の属する業種が、売上高構成比のもっとも高い事業となる計画を策定する
  • 製品等の新規性要件を満たす
  • 市場の新規性要件を満たす

業態転換

業態転換とは、提供する製品等は既存のままで、製造方法や設備などを新しく変更することです。「リアル店舗でパソコン教室を開いていたが、オンラインサービスでの教室を開始した」といったケースが当てはまります。

業態転換として認められる要件は次のとおりです。

  • 製造方法等の新規性要件(過去に同じ方法・設備を用いていない・主要設備を変更する・定量的に性能や効能が異なるの3条件)を満たす
  • 設備撤去等要件(既存設備の撤去や既存店舗の縮小などを行う)
  • 製品等の新規性要件を満たす

事業再編

事業再編とは、会社法上の組織再編行為などを行い、新しい事業形態で「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」のいずれかを行うことです。

組織再編要件とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡などが当てはまります。

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(出典:経済産業省

3.認定経営革新等支援機関と計画を立てること

認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援に関して一定以上のレベルにあると国の認定を受けた機関です。本補助金を受けるには、認定経営革新支援機関と相談しながら、一緒に計画を策定する必要があります。

策定する事業計画は、「補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、または従業員1人当たり付加価値額の年率平均3.0%以上の増加の達成」を見込むものです。

もし補助金額が3,000万円以上となる予定の場合は、さらに金融機関も加えて策定(金融機関が認定機関を兼ねる場合は除く)を行います。

事業再構築補助金の種類と補助金額の上限

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事業再構築補助金には以下の種類があります。

  • 通常枠
  • 卒業枠
  • グローバルV字回復枠
  • 大規模賃金引上枠
  • 緊急事態宣言特別枠
  • 最低賃金枠
  • 2022年以降に新設予定の枠

利用のほとんどを占めるのは、通常枠と緊急事態宣言特別枠です。

各枠の補助金額は、以下の計算式で算出します。

提出した事業計画で実際に支出した経費 × 補助率 = 補助金額

以下より、各枠の概要や補助率・上限金額をみていきましょう。

通常枠の補助金額

本補助金の通常枠は、最大8,000万円までの補助金を受け取れます。必須要件を満たせば応募可能です。第6公募からは、通常枠の支給額が見直される予定です。

<第5公募までの補助率・金額>

事業規模 補助金額 補助率
20人以下 100~4,000万円 中小企業:2/3
(6,000万円超は1/2)中堅企業:1/2
(4,000万円超は1/3)
21人~50人 100~6,000万円
51人~100人 100~8,000万円
101人

<第6公募以降の補助率・金額>

事業規模 補助金額 補助率
20人以下 100~2,000万円 中小企業:2/3
(6,000万円超は1/2)中堅企業:1/2
(4,000万円超は1/3)
21人~50人 100~4,000万円
51人~100人 100~6,000万円
101人 100~8,000万円

卒業枠の補助金額

卒業枠とは、事業計画期間内に一定の方法で資本金または従業員を増加させ、中小企業から中堅企業に成長させる事業者を対象にした特別枠です。一定の方法とは、「組織再編」「新規設備投資」「グローバル展開」のいずれかを指します。

ただし利用できるのは400社までです。第3回公募では採択実績20件・採択率54.1%でした。

事業規模 補助金額 補助率
規定なし 6,000万円超~1億円 2/3

なお、卒業枠は第6回の公募から廃止される予定です。

グローバルV字回復枠の補助金額

グローバルV字回復枠とは、必須要件に加えて以下の条件を満たす事業者を支援する枠です。

  • 売上高が15%以上減少
  • グローバル展開要件(※)を満たす事業によって付加価値額年率5.0%以上の増加が目標
  • 中堅企業(中小企業は対象外)

※海外直接投資・海外市場開拓・インバウンド市場開拓・海外事業者との共同事業

100社までが採択上限です。第3回公募では採択実績がありませんでした。資本金1億円以上の事業者が対象なので、利用する事業者自体が少ないことが原因と考えられます。

事業規模 補助金額 助率
規定なし 8,000万円超~1億円 1/2

なお、グローバルV字回復枠は第6回の公募から廃止される予定です。

大規模賃金引上枠の補助金額

大規模賃金引上枠とは、従業員を101人以上雇用する中小企業・中堅企業のうち、賃上げ増員などを行った事業者が利用できる枠です。事業年度から3~5年の事業計画期間終了までに、必須条件に加えて以下の2つの条件を達成する必要があります。

事業内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げる
従業員数を年率平均1.5%以上(初年度は1.0%以上)増員させる

不採択になったときは、通常枠での再審査が行われます。

150社までが採択上限です。第3回公募での採択実績12件・採択率66.7%でした。

事業規模 補助金額 補助率
従業員101人以上 8,000万円超~1億円 中小企業:2/3
(6,000万円超は1/2)中堅企業:1/2
(4,000万円超は1/3)

緊急事態宣言特別枠の補助金額

緊急事態宣言特別枠とは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の影響で、事業に深刻なダメージを受けた事業者が利用できる枠です。

対象となる事業者は次のとおりです。

  • 通常枠の申請要件を満たすこと
  • 2021年1~9月のいずれかの月売上が対前年または前々年の同月比で30%以上減少していること(売上でなく付加価値額の45%以上の減少も対象)

本枠は他の枠より優先的に審査されます。また特別枠で不採択になっても、加点されたうえで通常枠の再審査が行われます。

第3回公募の採択実績2,901件・採択率73.8%でした。

事業規模 補助金額 補助率
5人以下 100~500万円
  • 中小企業:3/4
  • 中堅企業:2/3
6人~20人 100~1,000万円
21人以上 100~1,500万円

本枠は、第6回公募以降に廃止予定です。

最低賃金枠の補助金額

最低賃金枠とは、最低賃金引き上げ政策を行うための原資確保が難しい事業者を対象とする枠です。

対象となる事業主は次のとおりです。

  • 通常枠の申請要件を満たすこと
  • 2020年10月~2021年6月の間で3ヵ月以上最低賃金+30円以内で雇用する従業員が全従業員数の10%であること
  • 2020年4月以降のいずれかの月の売上が対前年または前々年の同月比で30%減少していること(売上でなく付加価値額の45%以上の減少も対象)

第3回公募の採択実績375件・採択率87.6%でした。

事業規模 補助金額 補助率
5人以下 100~500万円
  • 中小企業:3/4
  • 中堅企業:2/3
6人~20人 100~1,000万円
21人以上 100~1,500万円

2022年以降で新設予定の枠

令和3年度補正予算案の概要によると、第6回公募より本補助金の新しい枠が設置される予定です。

  • 回復・再生応援枠:2021年10月以降でまだ経営が厳しい、または事業再生に取り組む予定の事業者が対象
  • グリーン成長枠:グリーン分野での事業再構築にて成長を目指す事業者が対象

事業再構築補助金を申請する流れと必要書類

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事業再構築補助金を申請する流れをおおまかにまとめました。なお本補助金は電子申請のみの受付です。

申請の流れ 概要
必要書類準備
  • 認定経営革新等支援機関への相談
  • 社労士や税理士への相談
  • 決算書や労務関係の書類整理
電子申請を行う
採択結果の通知・公表 採択されれば通知あり
事業計画の実行 提出した事業計画に従って事業を運営
実施状況の審査・ 計画の実施状況を確認・補助金支給

申請時に必要な主な書類については、事業再構築補助金の公式サイトの資料よりご確認ください。

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(出典:事業再構築補助金

事業再構築補助金でコロナ後の事業に備えよう!

新しい分野への進出や業種の変更といった、事業を大きく改革する事業者向けの大型補助金制度が事業再構築補助金です。ポストコロナ・ウィズコロナに向けて経営戦略を大胆に改革したい経営者にとって、非常に心強い申請条件と補助金額といえるのではないでしょうか。

しかし本補助金は申請書類を不備なく揃え、かつ事務局の審査にて採択されなければ支給されません。採択されるためには、詳細な事業計画書の作成や、経営実態の正確な把握・改善が必要です。

もし確実に事業再構築補助金の支給を受けたい場合は、事業計画書の作成や経営分野に強い税理士へ相談し、補助金に関するサポートを受けることをおすすめします。事業再構築補助金に関して実績ある税理士に依頼して協力を仰げれば、採択される確率をより上げられるはずです。

企業の教科書
高桑 哲生
記事の監修者 高桑 哲生
税理士法人 きわみ事務所 所属税理士

税理士法人きわみ事務所の所属税理士。
「偉ぶらない税理士」をモットーに、お客さんに喜んでもらえるサービスを提供。
税務処理だけでは終わらない、プラスアルファの価値を提供できる税理士を目指す。

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