顧問税理士を変更すると税務調査が入ると言われることもあり、相性の合わなさを感じながらも二の足を踏んでいる経営者もいるかもしれません。
しかし、これは都市伝説。税理士の判断で複数の科目を1つに統合したことなどが理由で数字の出方が変わることはありますが、不正会計ではないので問題ありません。
顧問税理士の変更は7つのステップで完了します。合わない税理士と惰性で関係を続けてもメリットはありません。前向きに検討してみませんか?
経営者が税理士の顧問変更を考える8つの理由
一度決めた顧問税理士を変更するのは、よほどのことがない限りありません。それでも経営者が税理士の顧問契約を解消しようと検討を始めるのは、以下のような8つの理由が挙げられます。
- コミュニケーションがうまくとれない
- 業界に詳しくない
- 節税効果が低い
- 決算内容の説明がない
- 報酬が高い
- 質問への回答がなかなかこない
- 資金繰りなどへのアドバイスがない
- クラウドサービスなどに対応していない
順番に見ていきましょう。
コミュニケーションがうまくとれない
税理士は「先生」と呼ばれ、敬われることが多い職業。そのため、残念ながら上から目線の話し方になったり、話を聞かずに一方的に言いたいことだけを伝えてきたりする人もいます。
伝えたいことや聞きたいことがあるにもかかわらず話ができないのはストレス。迅速な対応が必要な事柄を放置してトラブルにつながる可能性もあります。
業界に詳しくない
税理士の中にも得意な業界とそうでない業界があるものです。これまで経験した業界の知識は多く持っていても、そうでない業界の知識はまったくないこともあります。
自社の業界に詳しくない税理士が顧問だと、見当違いのアドバイスや指示を受けることがあり、適切な事業運営や節税が叶わなくなることもあるでしょう。
とくに建設業をはじめとして、業界ごとに会計指針が設けられていることもあり、業界知識が正しい会計処理に直結する場合も多くあります。
節税効果が低い
業界への知識が豊富かどうかと同じく、節税に強い税理士もいれば、合併に強い税理士など、得意分野もそれぞれです。節税効果を高めたいと顧問契約をしたにもかかわらず、税理士が節税を得意としていない場合、節税効果はあまり期待できません。
「思っていたよりも節税効果が低い」と、安くはない顧問料を支払うほどの効果を感じられず、契約を悩む経営者も多いでしょう。
決算内容の説明がない
税理士は決算の手続きを担ってくれる大切なパートナーです。しかし、決算書類を完成させることだけに重きを置いている税理士の場合、詳細な説明をしてくれません。
自社の状況はどうなのか、来期はどのような選択をすべきなのかなど、経営者の悩みをサポートしてもらえないこともあるようです。
報酬が高い
顧問料として報酬の支払いが必要な顧問税理士。しかし、報酬に見合った効果が時間できないことで、報酬が高いと感じる経営者もいます。
また、相場よりも高額な報酬を請求している税理士もいるため、より安く、サービスのいい税理士や税理士法人を見つけると顧問変更を考えるでしょう。
質問の回答がなかなかこない
税理士の中には多忙すぎて、なかなか連絡がとれない人もいます。すぐに返答がほしい質問でも、税理士からの折り返しを待たねばならず、作業が前に進まないことも。
実績がある人であっても、親身になって対応できる税理士を希望する場合には合わないため、顧問契約の解除を検討するでしょう。
資金繰りなどへのアドバイスがない
経営のパートナーとして顧問契約をしている場合、経営に関するアドバイスももらいたいもの。しかし、会計書類の作成には応じても、具体的なアドバイスをもらえないことがあります。
経営者は日々多くの決断をしているため、専門家の意見が参考にしたいからこそ顧問契約をしているはず。具体的なアドバイスがもらえなくては意味がありません。
クラウドサービスなどに対応していない
税理士は高齢の人も多く、いまだにファックスや電話でのやりとりがメインとなっている税理士事務所もあります。しかし、インターネットの普及した現代ではやや時代遅れ。
必要書類はPDFにしてメールで送受信したり、質問などのやりとりもメッセージツールが使えたら便利です。作業の効率化にもつながるため、ITに強い税理士への変更を検討することがあります。
顧問税理士の変更方法は7ステップで完了
実際に顧問税理士を変更することを社内で決定したら、次の7ステップで進めていきます。
- 現在の税理士との契約内容を確認する
- 自社で保管していない資料を税理士から取り寄せる
- 新しい顧問税理士候補との面談・打ち合わせ
- 顧問税理士の候補から提案・見積もりの提示を受ける
- 新しい顧問税理士との契約
- 今の顧問税理士への通達・顧問契約の終了
- 新しい顧問税理士の顧問業務がスタート
進め方を1つずつ見ていきましょう。
1.現在の税理士との契約内容を確認する
まずは、今の税理士との契約書を確認しましょう。
契約書には「契約を解除する際は〜か月前までに解約を申し出る」といった条件が記載されていることが多いからです。
また、報酬についても確認が必要です。たとえば、以下のような条件が考えられます。
- 10日までの解約では日割り計算で報酬を決定する
- 15日までに解約の場合は当月分の報酬を全額支払い
- 20日以降の解約は翌月分の報酬も全額支払うこと
契約によって報酬の金額が変わることもあるので、必ず契約内容を確認しておきましょう。
2.自社で保管していない資料を税理士から取り寄せる
税理士に日々の仕訳なども任せていた場合、決算書や試算表、仕訳帳などの会計書類を自社で保管していないこともあります。自社で保管していない書類に関しては必ず取り寄せておきましょう。
その際、急に書類がほしいと頼むと税理士変更の可能性を悟られてしまいます。
確認したいことがある
取引先に確認したいと言われた
このような理由をつけて頼むと伝えやすいはずです。
3.新しい顧問税理士候補との面談・打ち合わせ
現在の税理士から書類を取り寄せながら、新しい顧問税理士を探していきます。いくつかの税理士を比較するため、数名とコンタクトをとり、実際に顔を合わせて面談をするのがおすすめです。
打ち合わせでは、以下のような条件を提示し、相手が受けられるのか判断を仰ぎましょう。
- 依頼する業務内容
- やってほしいことの要望
- 大まかな変更スケジュール
面談では相手の人柄を知ることのできるチャンス。自社に合っているのか、コミュニケーションはとりやすいかなど、できるだけ細かくチェックしておきましょう。
4.顧問税理士の候補から提案・見積もりの提示を受ける
企業側からの条件を提示したあとは、顧問税理士候補からの提案・見積もりの提示を受けます。どこまでサポートをしてもらえるのか、報酬はいくらなのかなど、受け入れられる提案なのかをしっかりと確認してください。
また、費用が安いから、サポートが手厚いからといった理由だけで顧問税理士を決定するのは避けましょう。自社との相性の良さが一番重要なポイント。合わない税理士を選ぶと、また変更する可能性が高まります。
5.新しい顧問税理士との契約
お互いの条件が問題なければ、新たな顧問税理士との契約をおこないましょう。
その際、いつ頃にどのような仕事を頼むのかを伝えておきます。実際の作業は少し先になるかもしれませんが、税理士に今後の見通しを立ててもらうためです。
6.今の顧問税理士への通達・顧問契約の終了
新しい顧問税理士が決まったら、現在の顧問税理士への解約の通達をおこないます。1つ目のステップで確認したように、解約の場合にはいつまでに伝えるかを契約で定めていることが多いです。必ず、期限内に伝えるようにしましょう。
また、今年度の決算と申告業務までは頼むのかといった最後の条件のすり合わせも忘れずにおこないます。税理士も仕事なので、契約解除がわかったからといって、手を抜いて作業することはないでしょう。
7.新しい顧問税理士の顧問業務がスタート
これまでの税理士との契約が解除になったら、新たな顧問税理士による顧問業務の開始です。
顧問税理士を変更する時の3つのポイント
顧問税理士を変更する際に覚えておきたいポイントを3つお伝えします。
- 変更のタイミングは新年度がおすすめ
- 税理士への顧問変更の伝え方は前向きな理由で
- 税理士だけが保管している資料は必ず取り寄せる
変更のタイミングは新年度がおすすめ
顧問税理士を変更するタイミングは、新年度が始まる時期がベスト。期の途中から見てもらうよりも、全期を通して同じ税理士に見てもらったほうがスムーズなためです。
新年度が始まる時期に顧問税理士を変更するには、いつから動き始めればいいのかを逆算して進めていきましょう。
税理士への顧問変更の伝え方は前向きな理由で
現在の税理士へ契約を解除することを伝える際に、不満を相手に伝えるのはNG。「会社の成長のため」や「事業拡大に強い人にする」といったように、前向きな理由を伝えるのがおすすめです。
顧問税理士を断る場合の常套文句としてよく使われているのは「知り合いが税理士になった」。これを言うと相手も暗黙の了解で察してくれるはずです。
税理士だけが保管している資料は必ず取り寄せる
経理や税務に関する資料で、顧問税理士だけが保管しているケースがあります。自社で書類を保管しているかどうかは事前に確認し、なければ必ず手元に取り寄せておきましょう。
顧問税理士に丸投げしていた場合、総勘定元帳や減価償却資産明細書、各種届出書などがないことがあります。自社の保管状況を必ず確認しましょう。
新しい顧問税理士を探すときに最低限やっておくこと
顧問を変更する場合、新しい税理士を探すことになります。その際に最低限やっておきたいのは次の3つです。
- どうして顧問変更したいのか理由を明確にする
- 自社の顧問税理士として譲れないことは何か挙げる
- 候補税理士とは必ず直接会って面談する
より具体的な探し方のコツは「税理士選びで失敗しない6つのポイントとは?契約前に選び方を確認!」で解説しています。合わせてこちらもチェックしてください。
どうして顧問変更したいのか理由を明確にする
まずは、どうして顧問税理士を変更したいのか、理由を明確にしましょう。この作業をしないままに税理士を選んでも、同じように合わない税理士を選んでしまう可能性があるためです。
- 業界に詳しい人がいい
- コミュニケーションを密にとれる人を希望
- ITに強い人が効率化の面で助かる
- 節税のアドバイスをくれる人がいい
- 最低限のサポートでいいから顧問料を抑えたい
現在の税理士に持っている不満はどのようなことなのかを挙げてみましょう。
自社の顧問税理士として譲れないことは何か挙げる
現在の税理士に持っている不満のなかで、自社の顧問税理士として選ぶ際に譲れないことを探してみてください。税理士に求める条件は各社それぞれ。
- すぐに連絡のつく人がいい
- 節税の知識よりも業界に強い人がいい
- 最低限のサポートで十分
どうしても譲れないことを満たしている税理士が、自社に合う可能性の高い税理士といえるでしょう。
候補税理士とは必ず直接会って面談する
数人の候補を挙げたら、必ず直接会って面談をしてください。サイトなどでの税理士紹介はとてもよく感じられますが、実際に会ってみないと人柄まではわからないからです。
サイトや紹介業者の説明を鵜呑みにせず、必ずご自分の目で確かめましょう。
顧問税理士の変更で注意すべきこと
最後に、顧問税理士を変更する際に気をつけたいことを2つお伝えします。
税理士のいない空白期間は少ないほうが吉
現在の税理士との契約を解除してから、新しい税理士探しをするのは避けたほうが無難。税理士のいない空白期間は、できるだけ少ないほうがいいからです。
万が一、顧問税理士が決まっていないタイミングで税務調査が入ってしまうと、対応に困ったり、大きな不安を感じたりするでしょう。
現在の税理士と解約すると同時に新しい税理士との契約を開始したほうがベターです。
決算ギリギリでの顧問変更は避ける
決算時期ギリギリでの顧問変更は避けましょう。新しい税理士が内容などを確認する時間がないからです。税理士からも断られやすくなる傾向にあります。
せっかくいい税理士を見つけても断られてしまったら残念です。だいたい1年から半年くらいかかると思って準備すると安心です。
顧問税理士の変更は計画的に進めましょう
顧問税理士の変更は滅多にないこと。しかし、どうしても相性が合わなかったり、これまでの担当者が退職したりと、変更を余儀なくされることもあります。
自社との関係を長く続けられる税理士を選ぶのが大切です。条件面などにこだわりすぎず、相性を重視して選びましょう。
顧問税理士がいない時期に税務調査が入って慌てることがないように、顧問税理士のいない空白期間はできるだけ短くなるように調整することをおすすめします。